11・4国会行動
 緊急地域雇用創出基金事業の継続を!
  雇用対策予算を勝ち取ろう!


十一月四日、釜ヶ崎反失業連絡会、新宿連絡会、NPO北九州ホームレス支援機構などの呼びかけで百十名の野宿労働者が、今年度で打ち切りとされている緊急地域雇用創出特別交付金(基金事業)の継続、および、雇用対策予算枠の確保を求めて国会請願行動を行い、五万二千三百十七名の署名による請願文を提出した。
基金事業は、全国で八十三万人の雇用を創出し、失業者の生活を支えてきている。景気が回復しているといわれるが、景気回復でも大失業状態を解消しえないのが今日の資本主義の在り様なのだ。むしろ非正規雇用という膨大な半失業層は雇用人口の30%を越えて千五百万人と増大し、失業者は潜在的失業者を加えて八百万人、失業者の基底に滞留する野宿生活者二万五千人はなんら減少していない。そうした中で基金事業は、平均月収三万円といわれる野宿を余儀なくされている労働者にとっては、文字通り命綱となっているのである。失業者のおかれている情況は深刻であり、だからこそ焼け石に水的な基金事業であっても、32都道府県、536市町村、全国都道府県議長会などが制度の存続を政府に要請しているのである。基金事業の継続を闘いとっていかねばならない。
 支援法(「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」)に基づく雇用対策予算枠の確保要求(年二百億円)は、この法律の目的を達する上で不可欠だという見地から提起されている。現在の厚生労働省による野宿生活者関連の概算要求は、現状の限られた事業に対する補助金でしかなく、また野宿生活者の存在しない都道府県はないという調査結果にもかかわらず「実施計画」の策定が全国的広がりを見せていないという中で、三十数億円という一人あたま年間十万円を若干越えるレベルにとどまっている。これでは、野宿を余儀なくされている労働者、野宿線上を行き来している労働者の中心的要求である就労を保障するレベルには全く程遠いと言わねばならない。山林や河川敷の整備、遊休農地の活用、町の清掃、環境リサイクルなど社会的に必要とされ、労働者が生き甲斐を持てる就労を大規模に保障することは全く可能なことなのである。
 午前十一時からの衆議院第二議員会館前での座り込み集会では、釜ヶ崎から反失業連絡会・釜日労の大戸さん、野宿者ネットの穴沢さん、キリスト教協友会の秋山さんが、福岡から参加したNPO北九州ホームレス支援機構の奥田さんが、そして新宿から新宿ホームレス支援機構の安江さん、新宿連絡会の笠井さんが、最後にNPO釜ヶ崎の山田さんが発言し、基金事業の継続と雇用対策予算枠の確保を訴えた。この集会には、民主党から松岡徹参議院議員、辻恵参議院議員、石毛^子衆議院議員、中川治衆議院議員、稲見哲男衆議院議員、共産党から吉井英勝衆議院議員、社民党からは福島瑞穂参議院議員の秘書が参加し、要求実現へのともに闘うことを誓った。
 この国会請願行動が展開されている同じ時刻に、厚生労働省前では、全労連、建交労、東京地評、働きたいみんなのネットが、同じように緊急地域雇用創出特別交付金の継続を求め百名で座り込みを行っていた。釜ヶ崎からも西成労働福祉センター労組が参加して独自のビラをまき、特別交付金を主な財源とする高齢者特別清掃事業の労働者にとっての切実さを訴えていた。基金事業の継続を求めるうねりを全力で高めていかねばならない。
 野宿を余儀なくされている労働者の運動は、大きな曲がり角、路線的飛躍が問われる局面を迎えているように思われる。
 第一に、緊急対策として仕事と屋根を一歩一歩勝ち取り、NPOを組織してきたてレベルを最後的に越えて、問題の抜本解決の構想を示し、大規模な予算措置を講じさせる段階に入っているということである。それは、運動の側の、事業組織の在り方を含めた、社会的責任を果たす構えの強化を問うものである。
 それとともに、「企業の社会的責任」を標榜する資本の支援さえも微々たるレベルであれ始まろうとしている流れの中で、運動の事業的側面の増大とともに運動の闘争的側面が弱まる傾向を克服することが、緊要の課題として自覚されねばならない。
 第二に、運動が、支援法をテコに相応の予算措置をたたかいとれない場合、わずかな予算措置を口実に、石原・東京都建設局に代表される「排除条例」の動きが前面化してくる、その分岐点の攻防に入っているということである。この否定的現実は、運動内部において、排除に対する告発をもっぱらとし、野宿からの脱出を求める多くの野宿者の要求を組織することもなく・仕事創出事業を立ち上げることにも消極的で、野宿労働者の大衆的支持と無縁であった、既に克服された傾向に、一時的であれ存在意義を提供するものとなっている。
 この曲がり角の試練に打ち勝ち、基金事業の継続と大規模な予算措置を闘い取ろう!(東京M通信員)

10・17シンポ
  「ホームレスと雇用 ソーシャル・インクルージョンを実現するために」
  仕事創りだす闘いを

 十月十七日一時より、東京・全電通会館で、「ホームレスと雇用 ソーシャル・インクルージョンを実現するために」と題するシンポジウムが開催され、約二百人が参加した。集会は、「新宿ホームレス支援機構」と「ふるさとの会」のメンバーの呼びかけによるものである。
 このシンポジウムは、「福祉的就労を含めた新しい雇用概念により、ホームレス者の社会参加を促進する雇用開発の方法や、この実現の課題を考える」目的で行なわれた。
 総合司会である自治労東京都本部書記次長の伊藤久雄氏による開会宣言で始まった。シンポジウムは、主催者の紹介と開会挨拶の後、前東京都副知事・明大教授の青山やすし氏の基調講演が行なわれた。
 青山氏は、山谷福祉センター所長時代の経験と二〇〇〇年度の審議会での経験を踏まえ、雇用の問題が第一である」、「福祉・住宅の問題は核ではない。これはセイフティーネットの問題である」論じた。
 その後、休憩を挟んで日本NPOセンター副代表理事・法大教授の山岡義典氏をコーディネーターに、東京女学館大助教授の麦倉哲氏を副コーディネーターに、パネル討論が行なわれた。
 「多様な就労機会をどう創出するか」という問題提起が、それぞれの「現場での取り組みの経験から」NPO北九州ホームレス支援機構の森松長生氏、NPO釜ヶ崎支援機構の山田実氏、NPO新宿ホームレス支援機構の笠井和明氏、NPOふるさとの家の水田恵氏から行なわれた。また「企業の社会貢献の立場から」日本経団連1%クラブの長沢恵美子氏からなされた。休憩後、質疑・討論が行なわれた。
 現在、ホームレス自立支援法をめぐる局面は、いよいよ全国の自治体が、「自立に関する実施計画」を策定する段階に入っている。
 問われているのは、「ホームレスが百人いれば百通りの事情があり、それに対応するケア・マネージャーの創出」が必要ということではなく、社会的就労領域を開拓し、仕事そのものを獲得し創り出す事である。
 そのためにも、現場での労働者の団結と闘いの発展が求められている。
 これから冬へと向けて、野宿労働者、寄せ場日雇労働者への更なる支援と連帯を!(東京S通信員)