日韓自由貿易協定(FTA)交渉に反対する11月日韓共同行動
  韓国から遠征闘争団が大挙して

 日韓自由貿易協定(FTA)の締結を目指した第六回交渉が、十一月一日〜三日の間、東京でおこなわれるのに対して、韓国から民主労総などで構成される遠征闘争団が大挙来日し、日本の労働者市民と共同で、外務省・経団連などへ抗議・要請行動を展開した。そうした中で十一月二日夜の六時から、「日韓FTA交渉に反対する11月日韓共同行動」実行委員会の主催する集会が、東京・渋谷宮下後援で開催された。集会は、中央に約八〇名の韓日FTA阻止!韓国民衆闘争団(民主労働・KoPA遠征闘争団?)が陣取り、その周囲を約四百名の日本の労働者・市民が囲む形で始まった。
 最初に外務省要請行動を展開してきた仲間より「密室の交渉を許すわけにはいかない。日韓両国政府は私たちの声を聞け、という要求を提出してきた」と報告があった後、日本側挨拶に入った。
 藤崎全労協議長が、「新自由主義グローバリゼーション反対!日韓FTA反対!」と声明を読み上げる。
 外務省、経団連などに対する前日からの一連の要請行動を韓国の労働者と共に展開してきた全統一労組の仲間が、「日本政府は、われわれを外務省に近づかせなかった。そこから労働者の声を聞こうとしない態度を感じ取った訳です。たくさんの労組・市民団体が、韓国の代表がたくさん来ていることに応えようとして参加した。日本、韓国の労働者の一致した闘いで、勝利できるのだということを感じあえたと思います。」と発言。
 要請・抗議行動の過程で、全日建連帯労組の仲間が不当に逮捕されたことが報告され、抗議声明が読み上げられる。「仲間を即時釈放しろ!日本警察の弾圧を許さないぞ!仲間を取りも出すぞ!」
 次いで韓国側発言に移った。
 民衆遠征闘争団の団長が発言。
 「異国の地でどのように闘いを進めるのか心配でした。しかし昨日、今日のたたかいで心配は消えました。私たちは、世界の民衆を虐げている新自由主義グローバリゼーションと闘うためにやってきました。仲間が逮捕されました。怒りを抑えることが出来ません。労働者・民衆の世界を切り拓いていきましょう。」
 歌手のユ・クミシンさんが労働歌を歌う。労働解放歌、非正規撤廃連帯歌、労働者のための明日の歌。
 民主労働党・労働委員長が、「民主労働党は、日韓FTA反対を出発点とした新自由主義グローバリゼーションに、韓国、日本だけでなく全世界の労働者と連帯して反対していきます」と発言。
 最後にFTA・WTO反対国民行動の仲間が「日本の多くの人たちが一緒に闘ってくれて感謝しています。FTAは労働者・民衆にとって敵です。もう韓国から数名、日本から数名という闘いではありません。必ず日韓FTAを潰すことが出来ると思います。街頭闘争だけでなく、ゼネストもやって潰していかねばなりません」と語って締めくくった。
 日本の野宿者支援団体からの発言があった後、韓国の遠征闘争団を先頭に渋谷繁華街のデモに移り、「日韓FTA反対!」と沿道の人々にアピールしていった。(東京T通信員)

韓国国会
韓国民主化の帰結点、予断許さぬその改廃論議
 「国家保安法」撤廃し統一へ

 韓国民衆運動のひとつの帰結点といえる国家保安法の撤廃運動の現段階と、またこの国家保安法の犠牲者である在日韓国民主統一連合(韓統連)の名誉回復問題について報告しておきたい。
 現在会期中の韓国国会において最大の争点となっているのが、国家保安法の改廃論議である。今年四月の総選挙で、民主労働党の大躍進と与党・開かれたウリ党が過半数を制した勝利により、韓国国会において初めて国家保安法の改廃論議が行なわれることとなった。
 民主労働党ばかりでなく、与党ウリ党内部でもノ・ムヒョン大統領をはじめ多くの議員が国家保安法の犠牲者であり、もはや廃止への速度が速まるものと受けとめられていた。しかし野党ハンナラ党は、選挙戦をとおして党首に軍事独裁政権を率いたパク・チョンヒの娘パク・グネを据え、国家保安法の存続をはじめ韓国社会の民主改革にことごとく反対する対応をしている。あたかもパク・チョンヒの名誉を守るためにだけ、反動的な態度に出ていっているといわれてもおかしくない。保守反動派がなりふり構わない抵抗をせざるを得ないをほどまでにも、韓国社会の民主化が民衆運動の圧倒的力によって進展しているとも言えるのである。
 「国家保安法廃止国民連帯」は、韓国民衆運動のなかで国家保安法の廃止を専門的に担う連帯機関として、四年ほど前に設けられていたが、キム・デジュン政権下では改廃論議を法案として提出さえできない状況が国会内にあった。この国家保安法の最大の犠牲者でもあるのがキム・デジュン前大統領なのだが、当時の国会において保守反動派が多数を占めるという状況では、民衆運動に頼るしかなかったのである。そうして四月の総選挙でのある意味での民衆側の勝利によって、「国民連帯」は再び息を吹き返し民衆運動の前面に立つこととなった。
 現在開催中の国会で改廃の何らかの結論は出るものとおもわれる。ウリ党、民主労働党、民主党の間で国家保安法廃止の協議会が形成されたものの、補完法の是非などを巡って三党間の見解の相違もあるばかりではなく、与党ウリ党内部において意見の隔たりはかなりある(廃止論から一部改正論まで)といわれており、楽観できないのも事実といえる。
 では国家保安法は如何に作られたか、歴史的に簡単に触れておこう。一九四八年アメリカ帝国主義の庇護下にあったイ・スンマンは、日帝併合支配化の治安維持法をそのまま当時の朝鮮に持ち込み、分断支配の根拠法としたのである。それは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を「反国家団体」と規定し、それとの全ての関係を処罰の対象とするものとなっている。朝鮮戦争当時の南派工作員として捕らわれ、三十年以上に渡り過酷な獄中生活を強いられてきた良心囚のことは我々の記憶に新しい。戦争によって引き起こされた悲劇は、南北にそれぞれあっただろうし、現在も引き継がれているだろう。
 一九六〇年の韓国学生革命によって韓国において初めて統一問題が俎上に上った。南北分断の法的根拠とされた国家保安法は、パク・チョンヒ軍事独裁政権以降の政権においては、日帝の治安維持法同様に韓国民衆の統一民主化運動に対して罪を捏造し、多くの民主人士に極刑にいたる弾圧を科したのである。この法は韓国内の人々だけを対象とするのではなく、朝鮮半島南北のみならず在外・在日の韓国朝鮮人にも適用され、在日韓国人一〇〇名余の方々が「政治犯」・良心囚として獄中に捕らわれつづけたことを我々は忘れることはない。
 国家保安法の廃止問題こそが、いまや世界最強を誇るともいうべき韓国労働運動と民衆運動の前進過程を計るバロメーターである。今回は予断を許さない。しかしながら、韓国民衆はかならず勝利するだろう。
 国家保安法廃止の課題と一体の出来事として、このかんの韓国民衆運動の大きな成果の一つが、十月十日〜十二日に実現した韓統連の祖国訪問事業ではないだろうか。かってキム・デジュン氏も、韓統連の前身である韓民統の名誉総裁に就任する直前にKCIAに日本で拉致され殺されかけ、また光州事態では首謀者として捕らわれ、韓民統との関連から死刑判決を受けたのである。このことも関連し、韓統連に改称した後も反国家団体規定を受け続け、韓統連ならびに韓国青年同盟(韓青同)は親族訪問のための渡韓さえ出来ずにいた。
 しかし、昨年九月、ノ・ムヒョン政権は民主人士の名誉回復事業の一環として、海外民主人士の故国訪問という形で二十九名の韓統連幹部に臨時旅券を発行し、初の渡韓が実現されたのであった。
 そして本年にいたっては、韓国政府より正式旅券が出され、韓青同や学生協の青年や学生が中心となり、百四十七名の大訪問団が実現した。この中には昨年、直前に病気となり故国訪問を断念した郭東儀常任顧問もおり、実に四十四年ぶりに故国訪問を実現し、キム・デジュン氏との再会を実現したのであった。韓統連故国訪問団は、ソウル、光州での公式行事を行ない、無事に全員帰国をはたした。この事業は、民主社会のための弁護士の集い(民弁)が中心となっている「故国訪問団歓迎委員会」が受け入れを担い、また日本においては「韓統連の名誉回復と韓国への自由往来のための対策委員会」が担い続けた。
 日韓・日朝民衆の連帯した力は、南北統一事業に大いなる貢献をはたすだろうし、アジア・北東アジアの平和実現を必ず成し遂げるだろう。(Ku)


朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、
日韓条約から40年を問う10・23シンポジウム

  歴史清算を民衆連帯で

 十月二十三日、「朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、日韓条約から40年を問う     イラクにも朝鮮半島にも平和を!10・23シンポジウム」が東京・文京区民センターにおいて開催された。主催は、日韓民衆連帯全国ネットワークなどの呼びかけで作られた「朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、日韓条約から40年を問う2005年運動」。
 この「2005年運動」呼びかけ文にもある通り「来年の2005年は、朝鮮が日本の植民地支配から解放を勝ち取り、そして同時にもたらされた南北分断から六〇年を迎えます。またこの年は、一九〇五年に伊藤博文が日本軍・憲兵隊を引き連れて朝鮮王宮に乗り込み、時の政府閣僚らを軟禁・脅迫して結ばれた第二次日韓協約(乙巳保護条約)からちょうど一〇〇年、さらに一九六五年の日韓条約から四〇年を迎え」ることを踏まえ、この集会は、日朝・日韓の不正常な関係の清算を日朝・日韓民衆の連帯した力によって実現することを目指す運動の出発集会となった。
 集会は、日韓ネットの渡辺健樹さんがコーディネーターを務めるなか、以下のパネリストから各報告が行なわれた。指紋カードをなくせ!1990年協議会の中村利也さんによる「朝鮮侵略の100年を問う」(欠席により代読)、日韓ネットの北川広和さんによる「朝鮮半島の統一問題と日本」、新しい反安保行動をつくる実行委\の池田五律さんによる「米軍再配備と日本の戦争国家化」、脱WTO草の根キャンペーン実行委事務局長の大野和興さんによる「日韓自由貿易協定(FTA)と東アジアの経済統合」と出され、朝鮮半島南北と北東アジア、日本をめぐる政治的軍事的経済的関係がそれぞれの立場から論じられた。パネリストを含む質疑討論では、南北統一と日朝正常化の見通しについては見解の隔たりがあり、白熱した討論となった。
 その後、韓国のイラク派兵反対非常国民運動からの反戦平和のメッセージが紹介され、続いて、許すな!憲法改悪・市民連絡会、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、在日韓国民主統一連合、中小労組政策ネットワークからアピールが行なわれた。最後に、韓国の仲間への連帯メッセージと、十月二六日に日本政府が主催して東京湾で強行されるPSI臨検演習に対する抗議申し入れ書の確認を参加者一同で行なった。
 当日の集会参加者は百名弱と少数であったが、2005年運動の出発集会としては、日韓・日朝連帯運動での多方面の問題意識を網羅し、運動を媒介としながら論点を整理・発展できる可能性を秘めるものであった。この運動が来年に向け、首都圏だけでなく全国に広がることを望むものである。(東京Ku通信員)