日本プロ野球選手会ストライキの教訓
  雇用確保と産業再生は闘ってこそ

 このかんの、近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併問題に端を発したプロ野球再編と選手会のストライキの動きは、大きな教訓を残した。
 合併劇は、読売巨人・渡辺元オーナーをはじめとした一部の横暴な経営者たちによって、赤字球団整理、一リーグ制移行という方向で強引に舵取りがなされた。球団数減少や一リーグ制移行は、プロ野球の縮小再編に向う危険をもっていた。
 これに対し、労働組合日本プロ野球選手会の古田会長は、「合併を一年凍結し、じっくり話し合って欲しい。この件でオーナーと直接話し合いたい」と提案した。この提案に対して、渡辺元オーナーの発した言葉が「たかが選手の分際で」というものであった。事態は、このあたりから大きく動きだした。
 プロ野球は選手、職員、審判員など球界で働く人々や多くのファンによって支えられ、成り立っている。オーナーたちは経営権を振りかざして、あまりにもプロ野球を私物化している。これはどの業界でも、争議に入った企業経営者にまったく共通してみられる現象だ。
 選手会が中心になって、雇用の確保と産業の再生を目指すたたかいが始まった。ファンに合併反対の署名集めをし、広範なファンがそれに応え、選手会をバックアップした。
 選手会は九月に入って、合併が一年間凍結されない場合、九月の毎週土・日曜日の全試合でストライキをすることを決定して交渉に入った。オーナー側は「全力をあげてストを回避する」としつつも、九月十七日段階では近鉄とオリックスの合併はすすめる、〇五年度はセリーグ六球団・パリーグ五球団の二リーグ制で行なうなど、選手会やファンの感情を逆なでする強硬な姿勢を崩さなかった。
 選手会は九月十八日、十九日の土・日曜日の全試合で、日本のプロ野球史上初のストライキを敢行した。
 ここに至ってオーナー側は選手会との本格的な交渉に臨み、近鉄とオリックスの合併は既定のこととしながらも、〇五年度に新規参入球団の受け入れに努力し、セ六球団・パ六球団の二リーグ制を維持するために「最大限の努力をする」ことを表明した。最終的には、選手会や多くのファンの要求が基本的に実現される見通しを得て決着した。
 多くの労働争議では、労働者側にたくさんの正義がある。この際にも労働者が労働組合に結束し、戦闘体制をとることが最大の要点だ。今回、選手が選手会に結束し、ひさしぶりに耳目に上るストライキの体制をとった。また整然とストライキに突入した。ファンがそれを後押しした。横暴な一部のオーナーたちは、この前になりをひそめた。
 労働組合日本プロ野球選手会は、自らの雇用を守り、自分たちが働く産業の発展の可能性をきりひらく道を、多くのファンの支援の中で、自らの力でたたかいとった。
 たくさんの労働者が、この成り行きを見つめていた。たたかうことによってしか自分たちの道がきりひらかれないという現実を、この出来事を通してどれだけ多くの労働者が自覚しただろうか。これからは、わたしたちの番だ。(S)