「野宿生活者対策予算確保」請願署名二万九千を越える
  臨時国会で対策予算を

 六月より、NPO釜ヶ崎支援機構、NPO新宿ホームレス支援機構、NPO北九州支援機構の三者による、全国会議員に対する「請願」紹介依頼の形での、精力的な働きかけと「野宿生活者対策予算確保請願署名」活動は、九月末現在で、署名二万九千に達した。「対策予算確保請願」の根拠は次のようなものである。
 「自立支援に関する特別措置法」が公布され二年経過した、国の「基本方針」が策定され(〇三年七月)、更に、大阪府、市をはじめとするいくつかの自治体で、今春、「実施計画」が策定された。しかし、〇三年に実施された「ホームレスの実態に関する全国調査」で全都道府県において野宿者が確認されているにもかかわらず、「実施計画」の策定は全国的広がりを見せていない事。法は、十年間の時限立法であり、このままでは、法の目的を達することなく、効力を失うことになりかねない。定められた時限内に法の目的を達成する為に、また地方自治体の対策を起こさせるために、現行の限られた事業への補助金制度ではなく、基金を設け、交付金による事業実施に切りかえるべきであるとの考えにより、「一年間二百億円を見込み、その五年分の一千億円を『ホームレス自立支援基金』として予算措置をされたい」とする請願主旨のものである。
 二百億円の内容は、一、既存施策の継続保障予算として六十億円(本年度厚生労働省対策予算三十億円の倍額)、二、既存施設新規取り組み地域向け予算二十億円(財政問題で対策を先送りにしてきている地域での取り組み促進のため)、三、密集地域向け予算百二十億円(現行の東京の「地域生活移行支援事業」に就労事業を足し、大阪の「就労機会提供事業」を実効性のある規模まで拡大するため)とするものである。
 釜ヶ崎では、これら、国の「支援基金」を中心とする対策予算確保に対する「議員・会派工作と共に、大阪府・市に対し七月二十九日に、これら国への請願を府・市としても推し進めること、府・市独自予算の確保の要求とその他具体的な対策要求を提出し、国・府・市の対する来年度予算確保を中心軸とする構えを出して追及中である。
 これらの運動に対する国・府・市の対応は、まず厚生労働省の来年度のホームレス対策予算概算要求は、本年度約三十億円のところ三十四億円を要求するにとどまり、新たなものは就労支援事業(四ヶ所)を実施するというものだけであった。
 さらに、「三位一体の改革」として、地方自治体・公共団体の「地方自治確立」に向けた「地方分権改革」が一方で検討され、「平成十七・八年度における三兆円規模の税源移譲に見合う国庫補助負担金廃止」も提示され、前述の厚労省予算の三十四億円のうち七〜八が廃止され、税源を移譲された各地方自治体・公共団体が必要を判断して予算編成をすることになる訳である。補助金が出るからと予算措置をはじめてとる地方自治体が、自らの判断でホームレス対策に予算編成を行う保証は何もない訳である。
 大阪市の場合はどうなるのか。現在の大阪市内の税収は約四兆円を越え、現在は国が三兆円を取る。これが税源移譲により、国一兆円、府六千億円、市二兆四千億円となり、現在の予算(本年度一般会計予算一兆七千億円)より大幅な予算が組めると計算している。しかしそのことが、市の野宿生活者予算・対策の拡大につながる保障は何もないのである。従来どおり、国は、金は地方に渡したのだから地方の責務だと言い、市は、これ以上の対策は国の責任だと言い、対策予算を削減する口実を増やす形になりかねない状態である。
 元来、この間、就労保障の大きな基礎になっていた「緊急地方雇用創出交付金制度」については早くから延長はないと前の坂口厚労省大臣が国会答弁していた。後継策として「コンテスト方式により選抜された市町村への、雇用創出効果の高い事業への取り組み支援」六十五億円が概算要求の中にあるが、一事業二億円まで二年間という制限つきであり、この間の釜ヶ崎の就労事業の穴埋めには程遠いものである。
 既に「特別清掃事業」登録労働者の中に、「来年度から『特掃』はなくなるのか」と不安が広がっている。現在の登録者で、月三回ほどのわずかな「働く機会」が失われるという不安である。
 釜ヶ崎反失連は、NPO三者による署名活動、議員活動を強化して陣形を作りつつある。しかし、来年度からも「特掃」事業が続く保障は、現在何も為されていない。今秋の対政府、対国会への追及行動は、待ったなしに要求されている。釜ヶ崎での反失業闘争は、正念場の秋を迎えている。(関西Si通信員)