10・1日韓草の根交流を広げる講演会
  韓国労働運動と共に新しい東アジアへ

 十月一日、東京・後楽園会館で、「胎動する韓国社会と労働運動の『いま』、日韓草の根交流を広げる講演会」が、韓国民主労総元副委員長・公共部門労組代表者会議委員長の劉徳相(ユドクサン)さんをお招きして開催された。日本側からは、東京全労協議長の押田五郎さん、ATTAC・JAPANの秋本陽子さん、昭和女子大教授(労働社会学)の木下武男さんが、発言された。会場は、百四十名の参加者で満員となった。
 最初に集会実行委員会代表の樋口篤三さんが、「労働者・市民の東アジア共同体への一歩になるような集会を」と挨拶を行い、講演集会が開会された。
 ついで本集会の後援団体となって集会の成功に尽力していただいた東京全労協の議長・押田五郎さんが発言。「日本の労働者は、踏ん張らねばならないぎりぎりのところに来ている。アジアと連帯なしに自分たちの生活も守れない」との認識を示し、日韓の労働者連帯の重要性を指摘した。押田さんは、団交待機中ということで拍手に送られて集会場を後にした。
 そして民主労総元副委員長の劉徳三さんの講演が約二時間にわたって行われた。
 「一九七〇年十一月十三日、二十二歳の青年、全泰壱(チョンテイル)が自らに火をつけて死んだ。その横には労働基準法が置かれていた。全泰壱の死は、非人間的な労働搾取と貧困に抗した人間宣言であり、労働者の最低限の権利をつかむための身もだえだった」と述べ、一日十六時間・休日なしという過酷な労働条件で働くことを余儀なくされていた女性労働者の決起など、女性労働者に主導された七〇年代のやむにやまれぬ抵抗の有様を語る。そして八〇年の光州民衆蜂起を血の海に沈めた全斗煥(チョンドハン)の銃剣による支配の時期に、実は女性を中心とした学生たちが大挙して労働者の中に入っていき、八七年以後の民主労組合の発展の基礎を醸成したのだと指摘。つづけて八七年の民主化抗争とそれに続く労働者大闘争を契機に、民主労組が組合数、組合員数ともに爆発的に増大したこと、この事態に驚いた盧泰愚政権、金泳三政権による激しい抑圧に抗して九五年民主労総結成が勝ち取られたこと、この過程で奮闘した労組活動家がこの四月の国政選挙で民主労働党から立候補し当選していること、民主労総は韓国社会で名実ともに対案勢力として登場していること、などを指摘。最後に、韓国の労働運動の課題を、新自由主義グローバリゼーションとの闘いであるとし、韓日労働者の連帯した闘いを呼びかけた。
 会場で配布された劉徳三さんの講演レジメには、「アジア地域の反戦平和のための国際連帯を強化しよう」という大きな項目が書かれていた。そこは時間の関係上割愛されたようであるが、ぜひ聞きたいところであった。
 講演の後、日本側の発言として、韓国の労働者民衆とともに新自由主義グローバリゼーションと対決する視点から、二人の発言が行われた。
まずATTAC・JAPANの秋本陽子さんが、「六月ソウル行動から見えてくる日本における社会運動の可能性」を切り口に、新自由主義グローバリゼーションに対抗してもう一つの世界を模索する世界社会フォーラムの運動とその意義を紹介した。次いで昭和女子大教授(労働社会学)の木下武男さんが、年収二百万円時代の到来に警鐘を鳴らし、非正規雇用労働者の運動、とりわけ既に半数以上が非正規である女性労働者の運動の重要性を指摘した。
 最後に、実行委員会の山崎耕一郎さんが閉会の挨拶を行い、成功裏に集会を終えていった。
 今日、米帝の軍事的世界支配の拡張と新自由主義をテコとした多国籍資本の経済的支配の拡張とが、社会の崩壊を地域で、諸国で、世界的規模で深刻化させつつある。そうした中で、東アジアにおいても、ブルジョアジーを含めて自主的な東アジア共同体や朝鮮民族の自主的平和統一の声が強まり、市場原理主義の犠牲を拒否しもう一つの社会を模索する労働者民衆の運動が胎動してきている。今日こうした動きの先駆を為しているのが、韓国の労働運動である。韓国の労働運動との連帯は、日本の運動にとって、新自由主義グローバリゼーションと対決して労働者の東アジアを展望する上でのキーポイントとなってきている。本集会の成功は、それ自体は小さなものではあるが、今後の実践を通して大きな意義を持つものへと展開していけるし、そうしていかねばならない。(M)