日本の安保理常任理事国入りに断固反対する
  
平和憲法改悪策動と一体

 小泉首相が九月二十一日の国連総会で、国連安全保障理事会の常任理事国になることを求める演説を行なった。
 日本の常任理事国参加表明それ自体は、ここ二十年ほどの間日本の歴代首相・外相も行なってきたことである。しかし今回の小泉演説は、常任理事国入りに当たっての、日本国憲法の武力不行使という前提条件に触れていないこと、また、このかんの自衛隊海外派兵の実績を常任理事国入りの根拠として掲げている点で、これまでの国連演説とは異なりその飛躍をなすものである。
 この小泉の国連演説は、「国連システム全体の改革が必要だ。核となるのは安保理改革だ。国際の平和と安全に主要な役割を果たす意思と能力のある国が、常に安保理の意思決定過程に参加しなければならない」とし、自衛隊のイラク、東ティモールへの派兵、アフガニスタン後方支援を例示して、これら「わが国の果たしてきた役割は、安保理常任理事国になるにふさわしい確固たる基盤となると信じる」などと述べている。
 その常任理事国入りの方法としては、「途上国・先進国の双方を新たなメンバーに加え、常任・非常任双方で安保理を拡大する必要がある」とし、日本のほか常任理事国入りを望むドイツ、インド、ブラジルの代表を誘って、四カ国の相互の支持と安保理拡大をうたう共同声明を二十一日に出すなどしている。
 我々は、日本の常任理事国入りに断固反対する。そしてまた、国連の大国支配の仕組みである安保理常任理事国の制度そのものにも反対する。
 日本の常任理事国化は、日本の帝国主義的大国化の指標であり、日米関係などがどうであれ日本と世界の人民に利益にならず、結局は災いを及ぼすものである。
 日本が国連に加盟を承認されたのは日ソ正常化後の一九五六年であったが、当時の重光外相の国連加盟演説にも明らかなように、日本は平和憲法によって国連の安全保障措置に軍事的には参加できないことを認められて加盟したと言えるのである。このころ日本帝国主義はまだ復活しておらず、国際社会は日本の軍事的復活を心配するほどのことはなかった。ところがその後、独占資本を経済的基礎とする日帝が復活し、今日では国連の軍事活動ならば血も流せ、そのためには憲法を変えろという全く逆転した主張が与野党で巾をきかせ、また自衛隊が常時海外展開されるという状態にまでなっている。世界の人民と諸政府は、日本とドイツの常任理事国化・帝国主義大国化に警戒心を高めている。
 また、今日の情勢と日米関係においては、日本の常任理事国化はさらに危険な意味をもっている。一つは、それが憲法改悪策動の高まりと一体であることが明らかである。常任理事国になった以上、国連安保理の軍事制裁に責任をもてるよう、いよいよ憲法を変えなければならないと改憲派が持って行こうとしていることは明らかだ。もう一つは、アメリカ帝国主義が引き起こす戦争を常任理事国として常に支持し、孤立する米現政権の戦争政策を救う役回りとなることが明らかだ。日米関係は、イラク侵略での米英関係のように血を流し合う関係となるだろう。
 しかし、日本の常任理事国入りは、自衛隊イラク派兵や憲法改悪が反対されるほどには、ひろく反対されていないのが現状である。日本は世界の主要国の一つなのだから、平和憲法と何とか折り合いが付けられれば、あるいは対米関係でもっと自主的になれば、常任理事国になってもいいんじゃないのと思っている「進歩的」人々は少なくないのである。民主党も、常任理事国入り推進論である。
 そこで小泉は、「憲法を改正しないでも日本は常任理事国になる資格があるという考えで、あの国連総会演説をした。常任理事国入りと憲法改正の議論は切り離していいのではないか」(十月一日発言)という戦術に出ている。これは、国民の間で憲法改悪は多数派になれていないが、当面、常任理事国入りでは多数派を得るための謀略発言である。
 七月にアーミテージ国務副長官が「憲法九条が日米同盟関係の妨げになっている」、「常任理事国は国際的利益のために軍事力を展開する。それができないなら常任理事国入りは難しい」と述べ、八月にはパウエル国務長官が「常任理事国の義務を担おうというのならば、憲法九条は吟味されなければならない」とし、米政権側からの露骨な内政干渉発言が続いた。これらの発言は日本の改憲派が誘導発言させたものでもあったが、小泉政権にとっては都合の悪いものであった。いわゆる「押しつけ憲法」を「押しつけ改憲」では、憲法改悪の多数派を作ることはできないからだ。
 しかし、パウエルらの発言はある意味では、平和憲法と国連憲章の安保理諸条項との事実関係では正論である。日本の常任理事国入りは、「戦争する国」としての日本を国連が認めたことになり、憲法改悪の外堀が埋められることを意味するだろう。
 小泉の張り切りぶりとは対比的に、日本国内で常任理事国入りを求める積極的な世論があるわけではない。しかし、マスメディアや民主党支持者などにみられるあいまいな常任理事国入り容認論は広いものがある。これを切り崩していく必要があるだろう。(F)