参院選の結果と直面する政治課題
 二大政党制に抗し左翼結集を
  自衛隊イラク即時撤退、改悪年金法廃止かちとろう

 七月十一日投票の参議院選挙の結果は、年金改悪と自衛隊イラク派兵などへの批判を受けた自民党が敗北し、民主党がその批判の受け皿となって躍進することによって、日本の議会政治でのブルジョア二大政党化の進展をもたらした。一方、社民党や日本共産党は、小泉連立政権への労働者人民の批判を自党の支持拡大へ活かすことができず、再び三たび敗北しその衰退が明瞭となった。
 この参院選の結果をふまえ、第一に、自民・民主のブルジョア二大政党制に対抗できる左翼結集という課題について、また第二に、当面の自衛隊イラク撤退・年金改悪阻止・憲法闘争の諸課題について検討してみよう。
 自民党は得票率(比例区での相対得票率、以下同)を主要五党で唯一低下させて30・0%とし、小泉ブームと称された前回参院選時の38・6%から激減させた。自民党の最期の切り札と言われた小泉も結局だめだった。15・4%で現状維持の公明党に、自民党はかなりの選挙区で支援され、自公連立は創価学会指導の小ブル政党の影響が強まる末期症状となった。
 民主党は37・8%を獲得し、昨年総選挙の勝利に続き更に自民党を引き離した。日共は7・8%と停滞し、九八年参院選の14・6%からの下り坂が続いている。日共の選挙区での得票率は微減であるが当選ゼロとなり、党の退潮を印象づけた。社民党は5・3%で総選挙よりは微増したが、社会党崩壊以降では〇〇年総選挙での9・4%にすら遠く及ばない低迷を続けている。みどりの会議は運動圏では一定注目されたが、1・6%に止まった。
 民主党の得票増には、二十一世紀に入ってからにおいては、日共や社民の支持票が多く流れているとはいえない。近年ではおもに無党派、および自民支持層からの移動と考えられる。つまり政権批判の無党派票を、革新政党(戦後政治左派)がほとんど全く引きつけられなくなったということである。
 しかし日共や社民の選挙総括は、情勢を前へ拓いていく可能性が感じられないものとなっている。日共は、「二大政党」の流れに対抗して「国民中心の新しい政治の流れ」を起こしていく(七月十三日・幹部会声明)としているが、統一戦線的な新しい観点は出されていない。社民党は「踏みとどまった」(又市幹事長)と総括し、福島みずほ頼りを続けようとしている。これでは日共や社民に展望があるのか。このままでは両党は、解散総選挙を強制できなければ〇七年になる衆参同時選挙(この選挙は憲法決戦になると予想されている)においても、比例代表で票を取るためにのみ選挙区で党の独自候補を出すという選挙戦術を取り続けるだろう。
 沖縄では全野党統一候補が圧勝し、新基地阻止の攻勢が始まっている(関連資料二面)。日本政府からの差別的な軍事基地押し付けと闘う沖縄では、努力のすえ全野党での民衆的候補が可能となった。「本土」各選挙区では全野党は非現実的であるが、党派を超えたある程度の共同は可能であり、今回でもそうした政治的共同によって善戦した選挙区も少なくない。
 参院選の最大の教訓は、自民・民主の二大ブルジョア政党制という支配階級の新しい政治布陣に対抗し、その戦争と憲法改悪、失業と生活破壊の攻撃を打ち破っていくためには、日本の労働者階級人民の新しい政治布陣、議会諸野党の支持者も含めた左翼の大きな共同が必要になっていることに他ならない。そしてまた、その共同戦線の不可欠の一部として、わが党を始めとする共産主義諸党派の協力・団結・統合の発展が問われているということにある。
 参院選挙後、労働者共産党の第二期第二回中央委員会総会が開かれ、この左翼結集の課題についての決議などが採択された。このことは、現在の左翼の共同や統一戦線を求める労働者人民の政治動向の重要な一環にほかならない。
 その決議は次のように述べている。「戦後政治を左から支えてきた日共や社民は、旧来の質のままでは、自民・民主の二大ブルジョア政党体制の向こうを張って第三極的に浮上することはありえない。」「左翼の政治的共同布陣の形成は、革命的左翼だけでなく、共産党、社民党、民主党の一部などを含む大再編として展望すべき」であり、「質の転換を推進するそれなりの勢力が政治的共同布陣の牽引力・調停者とな」る必要がある。そして、「共産主義者の団結・統合の事業は、大きな共同の模索の中で位置づけなおし推進する必要」があり、党派間の組織統合だけではなく、「多様なレベルが想定されるところの統一戦線組織について、一つの選択肢として検討する」としている。
 労働者共産党のこの決議は、広い意味での左翼の再編・結集に関連しつつ、革命的左翼の団結について新しい政策を確認したものということができる。
 次に、選挙後の直面する諸課題である。
 自民・公明の与党は非改選を合わせると過半数を維持することから、小泉連立政権が維持されることとなったが、参院選後の臨時国会と秋の臨時国会とで小泉政権の弱体化は避けられない。小泉政権は国民的批判に耳を貸すことなく、七月末には北東北の陸上自衛隊に第二次のイラク派兵命令を出し、また、民主党の年金改悪廃止法案を否決しつつ、改悪年金法を十月一日に施行した後で秋の国会を開会しようとしている。政権末期の悪あがきという他はない。小泉政権を早期に打倒し、自衛隊を年内にイラクから撤退させ、年金改悪阻止などを勝ち取ることは可能である。
 イラクの「主権移譲」、占領継続は全くうまくいっていない。しかし、自衛隊撤退の闘いも「主権移譲」後、発展しているとは言いがたい。時期的な節目をとらえて攻勢に出る必要がある。多国籍軍参加の閣議決定は、参院選によって主権者から否定された。自衛隊イラク派兵の「基本計画」は今年十二月が期限であるが、その延長も閣議決定で強行することは許されない。派兵継続をすべて白紙撤回せよ。フィリピン軍は撤退し、サマワのオランダ軍も来年三月で撤退するのに、自衛隊はなぜ居座りつづけるのか。
 通常国会で強行採決した年金改悪法も、主権者から否定された。それは廃止されなければならない。すべての社会構成員の生存権を保障する年金制度を、消費税率のアップなしに、実現する方向を勝ちとらなければならない。
 憲法改悪は、二大政党化の進展で決定的情勢になってきた。しかし、イラク反戦闘争から憲法闘争へ、というわけではない。イラクからの自衛隊撤退を勝ち取ることによって、軍事力による「国際貢献」が間違った道であることを明らかにすることは、改憲派の九条改定論(自民と民主が共有するもの)への重大な打撃となる。自衛隊イラク撤退闘争と憲法改悪阻止とを一個二重の闘いとして前進させよう。