労働者共産党第二期第三回中央委員会総会   

未来を拓く労働者階級の政治布陣を

時代が動き出した。支配階級はこれまで通りの仕方で支配できず、人民大衆もこれまで通りの仕方では生活できないという時代に投げ出されている。政府によるイラクへの自衛隊派兵は、なし崩しに多国籍軍参加へと拡大され、「憲法改悪」が正面切って準備されている。支配階級が二大政党体制を立ち上げ、先行して危機の時代の政治布陣を実現しようとしている。いま労働者階級の側が、新たな時代に対応した左翼の政治布陣の構築を問われているのである。

T 新しい民衆運動に立脚して

新時代の左翼の布陣は、新しい社会を求めて叢生しつつある民衆運動に立脚しなければならない。
今日、産業の発達が成熟段階に到達し、産業の発達が資本の自己増殖運動という形態をとって社会の中心目的であり続けた一時代が終ろうとしており、人間の自由な発展をその基盤である地球環境の豊かさの保全とともに中心目的とするもう一つの社会を求める民衆運動が勃興し始めている。
 今日の民衆運動、すなわち労働者階級と人民の運動は、次のような現代的特徴をもっている。
 一つは、もう一つの(オルタナティブな)社会を求めて、資本主義・帝国主義の支配体制それ自体に異議を申し立てる傾向が高まっていることである。資本主義的グローバリズムは、侵略戦争、失業、貧富の格差、地域社会破壊、環境破壊などを拡大し、これに対する反グローバリズムなどを掲げた世界人民の抵抗は、個々の改良的要求に止まらず、根本的なシステム的解決を求めざるを得なくなっている。ソ連崩壊などによる共産主義運動の影響力の低下によって、この民衆動向はすぐに共産主義的選択肢につながるものではないが、冷戦終結後の世界階級闘争の積極的要素となっているものである。
 また一つは、国家独占資本主義の民営化路線への転換とともに、それと緊張関係をもちながら、社会を民衆自身が再構築していこうとする活動が高まっていることである。仕事の創出、職業訓練、介護、教育、育児、環境保全など、総じて地域社会づくりの事業が、NPO、協同組合事業などの形態をもって発展している。これに対し、支配階級は、統治システムの機能を補完するために、こうした新しい民衆運動の下請化、支配体制への包摂を積極的に推進し始めている。左翼にとっては、この現代的社会運動の領域を階級闘争の主戦場の一つとして認識し、労働運動の階級的再生と党建設に関係づけることが必要である。
また一つは、日本においては、長年の企業別労働組合の限界がひろく露呈し、企業の枠を超えた個人加入の労働組合運動がひろく求められるていることである。
多国籍企業が推進する世界的規模での失業労働者の大量的形成と労働者使い捨てシステムの一般化によって、わが国でも「完全失業者」と潜在的失業者があわせて800万人、多くが半失業を強制される非正規雇用労働者が1500万人へと増大し、帝国主義国日本の社会も、富裕層と貧困層への分裂が深刻な問題となってきている。こうした中で労働運動においては、企業内の運動、正規雇用労働者を中心とした運動から脱皮し、非正規雇用労働者の団結と闘争を組織できる質と形態の獲得がますます大きなの課題となってきている。また公的就労やワークシェアを要求し、雇用創出事業を起こしてたたかう失業・半失業労働者の運動の発展が問われている。一方、国籍・民族・宗教・「身分」・性・「障害」・年齢などを理由とした差別を乗り越える民衆運動が発展している。
左翼は、これらの民衆運動の発展に共同して助力することの中で、新時代の政治布陣をたたかいとっていかねばならない。

U 左翼の広範な共同を
   
ソ連崩壊の衝撃とネットワーク社会の波は、もろもろの政党・政派を存立の危機に陥れ、20世紀に通用した在り方からの転換を迫り、再編・共同への条件を創り出している。そして世界支配秩序の確保と多国籍企業の権益拡張を目的として米帝が発動するグローバルな「反テロ」戦争と米帝に追随する日帝の侵略戦争国家への国家再編、これに支えられた資本の労働者人民に対する新自由主義的一大攻勢が、対抗する左翼を共同へと駆り立てている。
 共同は、政治レベルではまだほとんど顕在化していないが、大衆運動においてはその拡大が進行してきた。
共同戦線形成の推進環となってきたのが世界的に連携して高揚するイラク反戦、有事法制反対の運動である。米帝に追随して侵略戦争の道にのめり込んでいくのか否かという歴史的岐路に逢着し、支配階級の間でも動揺と逡巡が顕在化して来ている情勢を前にして、左翼は、小異を残して大同につく姿勢を強く求められたのである。東京をはじめ各地で、日本共産党、社民党、新社会党、新左翼が共同する方向へ、また民主党議員も部分的に参加する形態が、動き出した。日共をはじめとした諸党派のセクト主義的指導はいまだ障害として立ち現れるが、民衆との関係で通用しなくなりつつある。新左翼諸派も対立と不信の根拠が根本から克服された訳ではないが、総体的に存立の危機に陥ることで客観的にだが共同せざるを得なくなってきている。
イラク反戦の世界的な共同行動、世界社会フォーラム、韓国の労働運動との連帯の深まりなど、国際的な民衆運動の新たな波に接することも、わが国の左翼の質の転換と共同を促進する大きな要因となってきた。
しかしながら、左翼の共同の労働運動的な基盤の構築は、まだ大きく立ち遅れているといわねばならない。いくつかの課題で枠組みを超えた共闘など前進的要素が顕在化しつつあるが、増大する非正規雇用労働者、失業労働者の運動の共同的組織化を介した労働運動の再構築が緊要の課題として問われている。
われわれは、こうした大衆運動における共同を推進しつつ、同時に、左翼の政治的共同布陣を編み上げていかねばならない。それはそれで独自の課題であり、政治の流れを転換させる上で不可欠の要素となるものである。われわれは、「社会民主主義主要打撃論」等により左翼勢力の結集をはからず、ナチスに大敗北を喫した戦前のコミンテルン―ドイツ共産党と労働運動の失敗を繰り返してはならない。
左翼の政治的共同布陣の形成は、革命的左翼だけでなく、共産党、社民党、民主党の一部などを含む大再編として展望すべきだろう。しかしそれは、旧来の政党・政派の机上の足し算で出来ることではない。それぞれの質の転換がなければ、少なくとも質の転換を推進するそれなりの勢力が政治的共同布陣の牽引力・調停者とならなければ、かかる大再編はできるものではない。前進し発展する政治勢力は、時代の変化が要求する新しい労働者人民の運動に適応できる政治勢力だということである。
日本共産党の場合、自党の議席を増やして民主連合政府をつくるという議会主義路線が基本にある限り、新しい労働者人民の運動に立脚した闘争体制という意味での統一戦線政策は出てこない。イラク反戦や有事法制反対でみせてきた大衆運動上でのこの間の共同志向は、基本路線を変えたものではなく、議会内党勢の大幅な後退に対する弥縫策の域をでるものではない。
社民党の場合、労働組合幹部の連合体的性格、戦後政治の受益者といった体質を残存させ、「護憲」一本やりできたが、昨年の総選挙ならびに今夏の参議院選の結果を見ても、明らかなように、党の存立そのものが問われる事態に立ち至っている。
戦後政治を左から支えてきた日本共産党や社民党は、旧来のままの質では、自民党と民主党の二大ブルジョア政党体制の向こうを張って第三極的に浮上することはありえない。戦後政治左派の党派を超えた「第三極」的巻き返しの動向も同じである。
こうした事態の中で、日本共産党や社民党の内部に、新しい労働者人民の運動に適応し共同していこうとする流れが広がろうとしている。革命的左翼諸派の間でも、マルクス・レーニン主義の現代的発展のうちに位置づけるにせよ、マルクス主義を相対化する仕方であるにせよ、民衆運動の現代的在り方と結合する質の獲得をめざす意識性が高まってきている。こうして、時代を切り拓く左翼の政治的共同布陣の形成へ、潮流の違いを超えたネットワークが発達しはじめているのである。
 左翼の共同布陣を政治的に浮上させるには、次の三つの課題を解決しなければならない。   
 一つは、労働運動の再構築を基軸にした民衆運動の現代的発展に共同して寄与する道に踏み込むこと。二つは、それを基盤に、多様な市民運動や戦後政治左派の立場を多かれ少なかれ固守する勢力などをふくめて全ての左翼を結集すること。三つは、支配階級の内部に顕在化する米帝追従一辺倒の軍事大国化路線と北東アジア共同体の必要を相対的に強調する路線の矛盾、あからさまな新自由主義経済路線とそれがもたらす社会の崩壊・民衆の生活破綻への対処の必要を相対的に強調する路線の矛盾の深刻性をつかみ、前者を孤立させて民衆運動の高揚に道を開くことである。
大胆に共同し、左翼の政治的共同布陣を政治的に浮上させよう

V 共産主義諸党派の再編・統合をめざして
   
資本主義社会に代わるもう一つの社会の実現、それは、私的所有制度のくびきと分業への隷属構造をグローバルな規模で解体し、人々が生存のための経済活動に緊縛されている状態をもなくし、各人の自由な発展が全ての人々の自由な発展の条件であるような社会をその基盤である地球環境の豊かさの保全と共に実現することである。その過渡において、搾取階級の国家体制を打倒せねばならず、わが国おいては、日帝打倒・米帝一掃・プロレタリア階級独裁樹立の政治革命を避けて通ることができない。したがってわれわれは、左翼の政治的共同布陣の形成とともに、同時に、共産主義潮流のネットワークの建設と諸組織の団結・統合の実現を、独自に追求していかねばならない。
われわれは、1999年の結党以来、共産主義者の団結・統合を目指してきた。だがその間、幅広い政治に支えられた新しい民衆運動が前進し、政治的大反動に対抗して広範な左翼の共同への模索が進展しはじめたことによって、共産主義者の団結・統合の事業は、大きな共同の模索の中で位置づけなおし推進する必要に迫られてきている。
われわれは、一方でこれまでのように、われわれの基準をもって対象を選択し、二者間でつめて実現する統合の方法を追求するだろう。しかし情勢の大きな変化によって、それだけでは対応できなくなっているということである。大きな共同の多様なネットワークが形作られる中で、その一つの流れとして共産主義者のネットワークが形作られて行かずにいないし、その過程での路線論争を通して団結・統合を実現していくことにも、われわれは習熟していかねばならない。この過程では、現実問題として、多様なレベルが想定されるところの統一戦線組織について、一つの選択肢として検討する必要が出てくるだろう。
 情勢は、これまでの左翼の在り方を一新する質で、労働者階級の政治布陣の速やかな立ち上げを求めている。新時代を拓く団結と共同を前進させていかねばならない。
                                    (以上)