沖縄からの通信
  糸数勝利へ「日本政府」対「沖縄人」の闘いを
    沖縄人の主体性確立しよう

 沖縄人にとって何かと思い悩む6・23が、またやってきた。魂 の塔への道も行く人帰る人で混雑している。
 県主催の「慰霊の日」追悼式は、反戦平和を求めてきた歴代の式典に比べ、著しく後退を遂げている。軽薄極まりないブッシュの「テロとの戦争」をオウムのように復唱する小泉。日本の軍隊をイラク侵略・占領を「支援」すべく派兵した小泉を式典に迎えいれることは、従来なら慣例上許されなかっただろう。これまでは拒絶されてきた軍服姿の米軍司令官も、今回稲嶺は受け入れている。彼は、沖縄戦を教訓とし、二度と戦争には協力しないという6・23の原点を消し去って、米軍にも日本政府にもへりくだっている。
 高校生代表の『戦争をしないと決めた国』という詩の朗読は、せめてもの救いであった。
 沖縄人の政治態度の土台をなす、反戦・慰霊の式典を土足でよごす小泉にどう対応するかは重大な問題である。辺野古では座り込みが続いている。これと連動すべく糸数慶子が一対一で参院選を戦っている。金武では米軍の都市型ゲリラ戦訓練施設に反対する、住民の粘り強い連続的な阻止行動が闘われている。低所得、高い失業率、自由・環境が奪われたフェンスと爆音、等々あらゆる抑圧の根元が小泉な日本政府、日本のネオコンたちだからである。
 あつかましい小泉、日本政府の列席に沖縄人の抗議を表明すべく、深いところまで突き進もうとしたのは、沖縄日雇労組の人々ぐらいであった。今回、市民運動は、6・23を沖縄人大衆の気持ちを受けて小泉の意図を打ち砕くべく、緊急の対応がやれたとは思えない。
 辺野古の座り込みは六月末現在で73日目。国際さんご礁学会が開かれているここ三四日、外国人の人々が訪れてくる。サンゴと多様な種が棲んでいる、うらやましくもジュゴンさえもが棲んでいる、これほど豊かな海を埋め立てるなんてばかげているとかれらは言う。
 ボーリング調査、埋め立てを阻止するための座り込みを支援する輪は日に日に広がっている。防衛施設局は何らかの意図をうしろに隠し、誠実でない会話をしに毎日やって来る。いわく「テロとの戦争をするために」やるんだと言う。戦争の部品と成り果て、どんなすばらしい自然も文化も理解する心情をもたない恥知らずども。
 市民運動の側は参院選挙戦で、辺野古の基地問題を第一の争点にせよ、この問題を県民一人一人に問え、一票を投じることによって日本政府にビンタをはろうじゃないか、日本政府対沖縄人のたたかいという争点にしてほしい、と迫っている。
 「ローマは一日にしてならず」と言うが、選挙を何十年にもわたって型どおりにやってきた人々は、急に変わるものではない。糸数陣営も、全国の平均県的な主張を連呼している。だが、名護のお年寄りたちは言う。「選挙をする人たちはお決まりの人たち、市民運動はまた別の人たち、だがこれからは、別々には進まないよ、市民運動と選挙は一つのものでなければ‥‥、愚か者が天下をとることを手助けするだけさ」と。
 参議院選の勝敗にかかわらず、沖縄人が主体性を確立しようとする傾向は、防ぎようがなく進展するだろう。勝利した場合は、否、勝利しなければならないが、その場合には、加速度がつくだろう。
 なぜなら、市民運動のやむにやまれぬ必要性から、候補者一本化への願いが強くなっていったのだから。選挙を選挙としてやる人々は、勝つために一本化したと思い込んでいる。そうでもあるだが、根本的にはそうではない。根本的な問題は、日本政府とたたかうため、沖縄人が一丸となって団結してたたかうためである。沖縄人の自由を抑圧する根元=軍事基地・戦争を最大の争点にするためである。
 日本政府の日米安保政策は、日本の統治すなわち特権階級の一握りの人たちの「生存発展」の第一条件である。しかし、米軍基地の七五%は沖縄に集中させ、沖縄人をそのための犠牲にする。わが沖縄社会は、日本政府の「生存発展」の犠牲を受け続けることが基本構造をなしている。誰かが「安保条約を破棄しよう」と言うけれども、根幹にはふれようとしない。沖縄人の主体性を確立するということは、生々しくその根幹に触れるということだ。沖縄人の生活全体が、日本政府の「生存発展」という制約を受けている。だから、沖縄人が少しでも自由になろうと動けば、日米安保体制と衝突する。
 都市型対ゲリラ訓練施設の問題をとってみても、金武の人々は何も「安保体制反対」などと言って、その建設に反対しているのではない。枕を高くして寝られないから反対するのだ。金武の人々は、代々自民党を議員に選んでいる保守王国の人々である。でも、具体的実体的に、安保体制に反対するようなことを行う。自由な生活を望んで‥‥。政党政派の人々が観念的なスローガンを捨てて、人々の行動を支持すれば沖縄人は一つに団結できる。
 沖縄人は、今、ブッシュのイラク侵略、日本の派兵、沖縄駐留米軍のファルージャでのイラク市民大量虐殺等々、日々の報道を受け、わが身にも戦争がやってくるぞという危機感をもっている。金武の人々の都市型対ゲリラ訓練への反対は、その最もよい証明であろうかと思う。辺野古のオバーの言葉、「決して軽々しく考えてはいけない、ふたたび戦争を受ける大問題」と言う言葉も危機感のあらわれであろう。選対の人々は、人々の危機感を理解していない。それを理解したら、選挙戦はガラリと変わるだろう。そして、人々との一体感が形成されるだろう。
 だが、選挙戦の各集会は率直に言って低調だ。投票率の低下がささやかれている。ヘリ基地反対協は辺野古の座り込みを市民に伝え、基地建設阻止を最大の争点にすべく、側面から糸数氏を支援すべく宣伝カーを二台用意した。市民連絡会も宣伝カーをつくるべく努力しているようである。市民運動側の宣伝カー作成は、今後の沖縄人の最重要課題への党派を越えた政治的結集にとって重要な意義をもってくるだろう。
 七月二十一日頃は、座り込み一〇〇日になる見込みであり、対日本政府交渉のための東京派遣が予定されている。 (T)