参院選前に混迷深める議会諸政党
 大再編に備え左翼の結集を
   有事法制7法案・年金制度改悪を阻止しよう

 有事法制七法案と年金制度改革法案を主要な争点としてきた通常国会は六月十六日で会期末となり、それ以降は、いわゆる政局的には七月十一日投票の参議院選挙一色となる。「対テロ戦」を取り込んだ戦争遂行法体系の完成を許さず、また皆年金に逆行する年金改悪を粉砕すること、そして参議院選挙の過程を通じて、小泉連立政権打倒の広範な共同を支持するとともに、日本の左翼勢力の協力と団結を大きく前進させていく努力が問われている。
 情勢は楽観できない。自民・民主の二大ブルジョア分派による「年金未納政局」など、このかんの国会での茶番劇は、労働者人民の政治への怒りを閉塞させるものにしかなっておらず、昨年の「マニフェスト」ブームは打って変わって既成政党不信が再び強まっている。既成政党不信は当然のことであるが、今のままでは参院選挙は全国的には低投票率となって、自公与党に有利になることが懸念されるのである。イラク情勢をはじめとする内外情勢は、選挙以前に小泉連立政権を打倒し、自衛隊イラク撤退を決定する政権交代をとっくに実現していてもおかしくない所にきているのだが、簡単にそうはならないところがブルジョア議会政治である。
 日本の労働者人民の非常に多くが、このかんの日本の進路、おかしくなったアメリカにくっついて日本もおかしな危険な方向へ行っているという不安を持っている。しかし、民主党はもちろん、自衛隊撤退を強調している日本共産党や社民党も、そうした大衆の不安に応えて自党への支持を大きくしていくということができていない。
 民主党は、昨年の総選挙での勢いが消滅してしまい、来たる参院選での危機感から、現在の終盤国会では「年金法案断固阻止、そのためには有事七法案の廃案も辞さず」として対決色を強めている。しかし、昨年「政権交代」を前面に掲げて一定の支持を集めた民主党がその後低調となった原因は、かれら自身の自民党と変わらない政治行動にある。昨年末には「自衛隊派遣反対!」と一時的に叫んでみたものの、すぐに連合指導部とともに何もやらなくなってしまった。日本人「人質」問題などで全国民的に関心が高まっている時期に、イラク問題でのオルタナティブを提示し、最大野党として小泉政権を追い詰めるということをやれなかった。やったことは、見当違いの「テロに屈するな」論に唱和しつつ、国連の枠組みでの自衛隊派兵なら積極的に賛成、という有害な論理を振りまいただけである。
 そして有事七法案・ACSA改定案等では、「緊急事態対処」を武力攻撃事態法と国民保護法制案に折り込ませる「修正」を自・公と行ない、「対テロ」でも戦争動員を発動できるように法案をより悪くすらしている。有事法制やイラク問題で、外交的独自性を出し得ていないのは民主党にとって致命的な失敗である。小泉再訪朝の外交的「成果」に打撃をうけた民主党は、再訪朝を極右的な立場から非難するという醜態をさらしている。
 こうして民主党は、小泉政権とは別のブルジョア的選択肢を鮮明に打ち出すことができない、ただの無能な大ブルジョア政党であるに過ぎない現状にある。
 日本共産党は、自衛隊イラク即時撤退と国庫負担による最低保障五万円年金の実現とを、参院選での二大政策として掲げている。この政策自体は妥当なものであるが、日共の場合、最も問われているのは統一戦線政策の実際である。昨年総選挙での惨敗と二大ブルジョア政党化の動きは、左翼勢力と民主勢力の大きな連携による国会内外での「第三極」の必要性を提起したが、その後の日共の動きはこれに応えるものとはなっていない。自党の議席を増やして民主連合政府を作るという議会主義路線が基本にあるかぎり、党派を超えた労働者人民の壮大な闘争態勢を作るという意味での統一戦線政策は出てこないからである。
 社民党にも同様の問題がある。社民党には文字通り党派の命運が懸かった参院選となっているが、「第三極」的選挙を拒否し、内向きの生き残り選挙を選択した。社民党は総選挙で「護憲」一本やりで惨敗したことから、今回は九条護憲に加えて「平和的生存権」の強調、「いまこそ社会民主主義」との新宣言案などで対処しようとしているが、支持を広げるような新鮮味はない。
 われわれ左翼諸派はどうするのか。本来なら、左翼勢力の協力を基礎に共同を広げ自公・民主に対峙する選挙戦を闘うべきであるが、左翼結集の現段階はそれ以前の段階にある。共同戦線に臨む主体的力量がまずは問われている段階である。左翼諸派の中にも、社民党が社民党として生き残ることを「第三極」形成の必要条件とする見方があるが、それは時代遅れであろう。左翼勢力・民主勢力の大きな政治的共同戦線は、社民党や民主党の一部、日共系をも含めた今後の大再編を視野に入れて展望する必要がある。
 この展望を持ちつつ、来たる参院選においてわれわれは、選挙区では沖縄・糸数さん、兵庫・原さんなどを支持し、比例代表では共同戦線の発展に有利な候補を党派に関わらず当選させるための投票を呼びかける。
 そうした大きな共同戦線の基礎としなければならないものが、革命的な左翼勢力の結集である。われわれは、党派の統合には路線的一致が不可欠であるが、党派の共闘には労働者人民の闘いを支えていく大きな方向での一致が重要であると考える。それは、労働運動においては、企業の枠を超えた個人加入の労働組合を日本労働運動の主流に押し上げていく方向、人民運動においては、従来の要求型だけでない社会的連帯を組織していく社会運動を発展させていく方向、この二つでの一致である。
 結局、前進していく政治勢力は、時代の変化が要求する新しい労働者人民の運動に適応できる政治勢力である。政治勢力の大再編に備え、左翼の結集を前進させよう。