東京都の「日の丸・君が代」大量処分 撤回へ包囲広がる
  民主主義が懸かっている

 またしても東京都教育委員会は五月二四日、「日の丸・君が代」強制の「10・23通達」により、四月入学式などでの不起立等を理由に教職員42人を戒告・減給処分にし、さらに今回は、「君が代」斉唱時に生徒が起立しなかった学校の教員67人について、「指導不足」とする厳重注意等の処分をも強行した。
 とくに「指導不足」の厳重注意は、教員を不当処分するだけでなく、「生徒の『内心の自由』に基づく行動に影響を与えかねない」(翌日の都高教の処分撤回声明)ものとして、これまで以上に広範な怒りを呼び起こしている。卒業・入学式の主人公である生徒の主体性を頭から否定している。この類を見ない処分は都知事・石原、教育長・横山の本音、「日の丸・君が代」こそ主人公、生徒ではなく天皇制国家が主人公とする「教育」観を暴露するものである。
 これで「10・23通達」以降の処分は、戒告・減給・嘱託再雇用拒否が238人、厳重注意等を合わせると305人という事態となった。
 これに対し、五月二七日あらたに都立高校教員23人が都人事委員会に不服審査請求を行ない、これで149人の大量申し立ての闘いとなっている。
 また、「国歌斉唱義務等不存在確認訴訟」いわゆる予防訴訟のほうは同二七日、東京地裁へ第二次提訴が原告117人で行なわれ、第一次提訴228人と合わせて345人の教職員による大原告団となった。この裁判闘争と人事委員会闘争とが闘いの両輪となるだろう。
 こうした攻防のなか五月二十二日、「石原・横山都教委の暴走をとめよう!都教委包囲ネットワーク結成集会」が東京・青陵会館で開かれ、不当処分された教育労働者など約二百名が結集した。
 この集会の意義は、都教委を包囲する広範なネットワークを作っていく最初の段階の課題として、都立高校・障害児学校・公立小中学校等で分断されている今回の一連の被処分者が、また「10・23通達」以外のこのかんの被処分者が、まず一同に会して被処分者同士のネットワークを立ち上げたことである。
 集会では最初に、東京都に先行して処分攻撃を受けてきた広島県教組の組合員や、北九州ココロ裁判をすすめる会の仲間から連帯挨拶。東京で始まったこの闘いへの、全国の注目は大きいものがあるようだ。
 次に予防訴訟の尾山宏弁護団長と加藤文也弁護士が報告。尾山さんは、家永教科書裁判に長年携わったことで知られる人だが、「精神の自由の確立には、どの国でも長い闘いの歴史があります。今起きている状況はまさにファッシズムです。この闘いは、日本の民主主義が懸かった歴史的闘いです。必ず勝利しましょう!」と熱く語ってくれた。
 「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会からは、とくに昨日二十一日に強行された元板橋高校教員の自宅への警視庁による家宅捜索を糾弾する報告などが行なわれた。
 このガサ入れは、三月十一日の都立板橋高校卒業式で式が始まる前に、来賓の元教員が「日の丸・君が代」強制を批判する週刊誌記事のコピーを父母に配ったことをもって、威力業務妨害容疑とするとんでもない弾圧である。その実、式を妨害したのは彼ではなく、「君が代」斉唱時多くが起立しなかった生徒へ向かって「立て!」とわめき散らした土屋敬之都議(民主党)であった。集会には、不当捜索された本人も駆けつけ、出頭攻撃もかけられていることなどを報告した。「日の丸・君が代」強制が、刑事弾圧のレベルに来ていることに会場の怒りは高まった。
 つづいて「不当処分撤回を求める被処分者の会」、嘱託の首を切られた「被解雇者の会」(定年後の採用取消が4名、継続雇用止めが5名)から報告。また周年行事被処分者、養護学校被処分者(七生養護での性教育パッシングなど)、小中学校での反処分の闘い(根津公子さん、増田都子さん等)と教員の発言のあと、保護者、首都圏の労働者・市民の連帯発言が続いた。
 石原・横山都教委を広範に包囲する闘いは、いよいよこれからである。六月十二日には、「学校に自由の風を!市民集会」が開催される(中野ゼロ大ホール、午後六時)。「10・23通達」撤回の署名運動が展開される。八月三十日には、都教委包囲デモ行進が行なわれる。
教育労働者を始め、すべての労働者・市民の大運動にしていこう。(東京W通信員)