「人質事件」で明瞭となった自衛隊派兵の犯罪性
  小泉打倒へ総団結を
      米侵略軍はファルージャから完全撤退せよ!

 四月に入って以降、イラク人民の抵抗闘争が全土的蜂起の様相に発展し、これに対し米占領軍がファルージャ包囲と無差別虐殺を強行するなど、米英・日など侵略連合軍のイラク占領は危機に瀕している。このなかで「日本人人質事件」も発生し、その解決を通じて小泉政権の極度に反動的姿と自衛隊イラク派兵の無益さが一層明らかになった。しかし、小泉連立政権打倒と自衛隊撤退の展望が拓かれたわけではない。イラク人民の抵抗闘争の発展と連動した日本の政治情勢の中で、七月参院選などを踏まえた労働者人民の広範な団結と左翼勢力の共同の前進が一層問われている。
 第一に、今緊急には、自衛隊即時撤退の要求と共に、米軍による中部ファルージャでの無差別虐殺を直ちに止めさせ、ファルージャと南部ナジャフをいぜん包囲する米軍の完全撤退を日本と世界で求めることが必要だ。小泉政権による、戦時国際法を無視したブッシュの戦争犯罪への黙認を決して許すな。
 米軍が四月初旬にファルージャ攻撃を開始して以来、地元評議会の四月二七日発表によるとすでに八百人以上の市民が無差別殺害され、千八百人以上が負傷している。ジュネーブ条約違反のクラスター爆弾が使用されている。米軍は三月末の「民間人」殺害を攻撃の口実としているが、彼らは米軍と行動を共にする要員であって日本人人質事件での民間人とは全く異なっている。スンニ派住民の抵抗拠点ファルージャを壊滅せんとすることが、侵略者の目的である。米侵略軍はファルージャと、シーア派住民の抵抗拠点ナジャフから無条件に即時完全撤退せよ。
 第二に、「人質事件」とその解決をめぐる教訓を明確にし、現在も続く小泉政権と反動勢力とのこの問題での攻防に勝利しなければならない。
 ファルージャ攻防の最中に、日本人の二件五名を含む外国人人質事件が多発した。それらは、住民の抵抗勢力がファルージャを始め自分達の街を米軍のスパイから防衛するために行なった一時的拘束であるか、あるいは、声明を発表して米軍による虐殺の実態を世界に訴え、各国占領軍の撤退を求めるための手段であった。人質解放を仲介したイスラム聖職者委員会が「占領軍と無関係な民間人」を解放するよう働きかけたことは、イラク反米抵抗勢力の戦時国際法にも合致した理性的な解決能力を示した。
 日本人人質は、「かれらはイラク民衆の友だちです」と訴えた市民運動の国際的ネットワークの声が現地に届くことによって解放された。実行グループによる自衛隊撤退要求の政治的メッセージに仰天した小泉政権は当初から、米側の身元調査指示を受け、派兵反対派の謀略ではないかと疑うのみならず、実行グループを「テロリスト」と決め付け、「自衛隊は復興支援のため」との居直りを世界に発表することによって、人命よりも派兵継続を優先させ、解放交渉を妨害した。
 また小泉政権は、いわゆる「自己責任」論の発信元になって、国策に批判的な在外邦人について国は保護する義務がないとか、市民運動家やジャーナリストの海外活動を制限せよ、などの極めてファッショ的で時代錯誤の言動を煽っている。撤退すべきは、国際化時代を担う市民運動家ではなく、誤まった国策の下にある派兵自衛隊である。ブッシュ政権追随の自衛隊派兵こそが、市民の国際交流による平和実現を妨害していることを一層明らかにしていこう。
 第三に、苦境に陥ったブッシュ政権が国連利用によって侵略を継続しようとしていることを許さず、「国連主導」の名目での自衛隊イラク派兵の継続策と闘うことが必要だ。
 イラク人民の抵抗闘争が全土的に発展し、スペインの完全撤退に続いてイラクからの撤退を決定あるいは検討する諸政府が続出して「有志連合」が崩壊しつつある。これに対し米ブッシュ政権は四月中旬、国連「主導」の暫定政権樹立策へ転換して、七月以降も占領支配継続を何とか確保し続けようとしている。
 しかし、米英占領軍の駐留を前提とした国連の主権移譲案、新たな安保理決議案などは、侵略の化粧直しにすぎない。そうではなく、真のイラク国民の主権確立とそれを保障する国際的枠組づくりは、占領軍の全面撤退から始められなければならないのである。人質事件で政治的打撃を負った小泉もまた、「国連主導」案に飛びついている。「国連主導」の名の下、派兵自衛隊を七月以降も居座らせ、新たな多国籍軍決議などの下に横滑りさせようとしているのである。国連主導の自衛隊派兵を積極的に支持する民主党は勿論、国連中心主義を掲げる日本共産党も、その基本姿勢が厳しく問われることとなるだろう。
 こうした当面の課題のなかで、小泉政権打倒の闘争態勢にはいぜん厳しいものがある。ブルジョア二大政党である自民・民主に対抗できる、「第三極」の必要性は誰も否定しないところである。しかし七月参院選に対応しての、自衛隊派兵反対・憲法改悪阻止を一致点とする政治的共同戦線の形成の試みは全国的規模ではうまくいっていない。
 一方、沖縄では、いったん日共が分裂選挙を表明していたが、労働者・市民の強い突き上げによって野党勢力の大同団結が達成された。沖縄人民の日本政府に対する闘いを考えれば当然のことであるが、これは沖縄人民の大きな政治的成果である。
 したがって課題の本質は選挙対応だけではない。労働者人民の利益と闘いの前に、党派的枠組みに閉じこもっていては破滅が待っている。労働者人民の地域的・全国的な革命的統一戦線の形成をめざし、それを促進する左翼勢力の結集が必要だ。左翼はその上に立って、当面の政治的共同戦線を広範に押し進めていくのでなければならない。