沖縄からの通信
 海上基地ボーリング調査工事の阻止続く
  漁港座り込みに全島が連動

 県当局は四月七日、専門委多数の反対意見をひた隠しにしたまま、防衛施設局に対し、名護海上基地のボーリング調査に許可を与えた。「デージナッタ、デージナッタ」、辺野古のオバーオジーたちを始め人々に緊張感が高まった。
 四月十九日、辺野古の人々がまだ眠りからさめやらぬ暗がりの中、施設局側は作業を開始しようとした。ヘリ基地反対協などの人々が駆け込んできて、一旦中止させた。九時頃、警察を加えて再び開始しようとしたが、すさまじい勢いで押し返され、施設局現場責任者は「今日は、もうやりません」と約束した。
 しかし、人々が埠頭から闘争小屋の方に移り、ちりぢりになりだしたその瞬間の午前十一時、三たび襲ってきた。「約束したじゃないか! 恥を知れ!」と、猛烈な勢いでまた押し返した。その日、夜の七時に漁港入り口が閉まるまで、人々は作業ヤードの前を離れなかった。
 翌二十日からは連日、朝六時の漁港開門から夜七時の閉門まで、作業ヤード前で座り込みが続けられる。
 辺野古のオバーオジー、「命を守る会」の体をはっての行動はまたたくまに全島に伝わり、最大の重要問題となった。環境団体、学者、弁護士、国会議員、学生、ただの人らが辺野古に来て座るようになった。
 四月二十二日には、辺野古海岸で「ボーリング調査反対! 県への同意撤回と防衛施設局への即時中止を求める集会」が、基地の県内移設に反対する県民会議の主催でもたれた。那覇での予定だった県民大会を急遽、現地集会に変更して行なわれたもので、約四百人が参加した。
 二十八日には、平和センター、自治労がローテーションで辺野古派遣を開始している。
 防衛施設局は、キャンプ・シュワーブ米軍基地内の森の中のコンクリート二階建の中から漁港を一望しつつ、「作戦命令」を出しているようだ。命を守る会は、これを「日米軍事同盟」と呼んでいる。
 座り込みを支持する世論を気にして、施設局は海岸から離れた作業用道路で下車し、ソフトムードで現われるようになった。他方、作業ヤード前を何とかしようと悪知恵を働かせ、岸本名護市長を動かしてきた。反対協の中村事務局長宅へ電話口頭での、「漁港退去勧告」を伝えてきたのである。
 恥を知れ! 岸本! 名護市民から集会の自由も奪おうというのか! 岸本は活性化資金に目がくらみ、施設局以上の名護破壊者になってしまった。岸本は一億の機密費を一人占めしている、などのウワサも流れている。名護市議会も二六日、「防衛施設局の説明会など必要ない」と意見書否決を行ない、自殺を遂げた。
 稲嶺知事はどうしているのか。早い時期から、辺野古埋め立て用の石材を埋蔵している本部大堂カルスト台地周辺の山々を買い占めている。防衛施設局の代替基地建設に関わる環境影響評価「方法書」にいう「購入石材」とは、そのカルスト台地を破壊したものを意味するらしい。かつて日本軍国主義は、西原飛行場建設のために首里の大石垣を破壊したが、稲嶺は現在、世界遺産周辺の自然破壊をしでかそうとしている。
 ラムズフェルドでさえ、「普天間は異常だ」「辺野古は見直してもよい」と発言した。米国防省は、今から着工しても十六年かかる海上基地案よりも、もっと手っ取り早い普天間基地機能移設を求める態度に事実上変わっている。今や県内移設なしに、普天間基地即時返還をかちとることは可能だ。
 しかし日本政府はSACO合意にしがみつき、施設局、県、名護市、業者らは一兆ともいわれる利権がおじゃんにならぬよう、一刻も早く手を付けたいとあせっている。
 一握りの利権集団に対峙し、沖縄を愛してやまない人々一人ひとりによって、作業ヤード前のこの地点が守られている。五月二日現在、十四日目になる。この地点から毎日のように沖縄の良心が発信し続けられている。
 
 四月三十日、社会大衆党と日本共産党は、来たる参院選沖縄選挙区で候補一本化の合意に至った。日共はいったん分裂選挙を表明していたが、糸数慶子氏を全野党で当選させることに合意したのである。
 四月九日には、「参院選勝利のために大同団結を求める有志の会」の新崎盛暉氏や山内徳信氏らが、野党五党の事務所を訪ね、糸数さん(社大党副委員長)を共同で推すよう要請していた。
 この背景には、ここ四〜五年、勝つべき選挙を日共の分裂選挙のため敗け続けてきて、組織労働者を中心に強い憤まんが蓄積されていたことがある。だから、単に「有志の会」の著名七氏が政治的立場上、糸数さんの擁立工作をしたというものではない。
 糸数以前、選挙以前の問題である。沖縄人を新たな犠牲にさらす日本政府に対して、沖縄人全体としてどう対応するのか明らかにせよ!という問題である。党派を超えた民衆の怒りが、全野党の共闘を求めたのである。
 四月二十日には、七氏を呼びかけ人として、明日を切り拓くために――来たる参院選をどうたたかうか4・20集会」が那覇で開かれた。
 その呼びかけ文は、「小泉政権の危険極まりない政治的スタンスと政策展開に反対する沖縄の全野党が、小異を残して大同につく立場から、少数派としての沖縄の立場に徹し、沖縄民衆と共に沖縄の未来を切り開く方向で団結されることを切望します」と述べ、沖縄人の主体性確立を問いかけている。
 4・20集会では、各発言に熱がこもっていた。このかんの分裂と敗北で、日本政府を喜ばせ、民衆を落胆させてきた。何よりも市民運動が打撃をくらった。分裂は許されない犯罪行為、糸数へ一本化せよ、等々が共通点だった。
 日共の発言基調は、民主党や改憲派を意識した全国的論調に立っている。沖縄人独自の課題に触れることがない。
 山内徳信県民会議共同代表が総括評を行なった。意見には共通項があった、この共通項に立てば勝つことができる。毛沢東と蒋介石は大同団結して日本軍国主義を打ち負かした。我々もそうすることができる、と。この最後のくだりは、日共にとっては猛烈な皮肉であった。
 すでに、辺野古現地のたたかいと参院選とは連動している。「大同団結」は、さらに広範な連動を生んでいくだろう。
 それは、来たる5・16普天間基地包囲行動に連動し、美ら海を守りぬこうとするオバーオジーと連動し、名護市民と連動し、すべての沖縄の民衆、すべての魂と連動していくだろう。  (記五月二日・沖縄T)