年金制度改革法案に断固反対する
   全ての社会構成員に保障を

 昨年末に厚生労働省から出されていた、年金改革案のほぼその内容に沿った年金法案が、四月二十八日に厚生労働委員会で、自民、公明によって単独強行採決された。五月連休明けにも衆院本会議に上程されるものと思う。
 厚生労働省の年金改革案の骨子は、@基礎年金の国庫負担を現行3分の1から段階的に2分の1まで引き上げる。A厚生年金の保険料を、現行年収の一三・六八%から、段階的に一八・三五%(政府案一八・三〇%に改定)まで引き上げて固定(二〇一七年)し、この範囲内で年金給付を賄う。給付水準は、現役世代の手取り年収の五〇%を下限とする。B 財政均衡期間を一〇〇年程度とし、二一〇〇年までに積立金を給付の一年分までに取り崩す。C離婚時の厚生年金の分割。という以上の四点である。
 リストラや賃金引き下げ、健康保険料の引き上げと診療費の自己負担分の引き上げなど、労働条件の悪化、公共料金の増大に追い打ちをかける形で年金改悪が、進められようとしている。政府・与党側は、ブルジョアマスコミを利用しつつ、年金破綻の原因が少子高齢化であるが如く世論を誘導しているが、次の二点からも全くのまやかしといえる。
 政府は、年金制度改定ですでに九四年には、年金改革法案の@については二〇〇四年までに実施するとしていたが先延ばしにしていること、さらには百数十兆円と言われる年金積立金のでたらめな運用により、運用利益を捻出できずに赤字となっていること。しかもこれらのことは、公表はおろか、実態もあいまいとなっている。
 更にもう一点目の少子高齢化に伴う二〇一〇年以降の従属人口(勤労者に対する)の増加傾向は、今回が初めてではなく一九五〇年代半ばまでは続いていた傾向なのである。たしかに当時は、非就労若年層が従属人口の多数を占めていた。しかしながら、高齢者層に比べるならば若年層は、教育費というより多くの扶養負担があることを忘れてはならないだろう。(『世界』三月号掲載・神野直彦氏論文参照)
 年金問題での論議が噴出し、不公平感が蔓延し、更に拍車をかけているのが大臣をはじめとした与野党国会議員の国民年金料未払い問題だろう。その根底には年収一千万円以上の高所得者の十数パーセントが、国民年金未払いという問題がある。
 そればかりではなく、国民年金、厚生年金、公務員共済年金それぞれの間の格差も大きく、大企業と中小企業との格差は企業収益率の決定的違いが、企業年金としてはっきりと現れる。現に国民年金受給者の受給額は、大企業出身の受給者の十分の一というのが当たり前となっており、それ以外にも定住外国人をはじめ未加入者が多数存在しているのだ。その点では、就労者層三十歳代の不満は、マスコミの誘導という側面が強く、社会的格差を助長させる作用を働かせるのではないか。
 以上のことからもわれわれは、憲法一四条、二五条からも平等の社会福祉、社会保障を受ける権利を有するものであり、これは憲法条文における「国民」規定の問題性を克服し実現しなければならない。
 より一歩進んだものとして、労働者共産党は九九年六月共同声明において、「われわれは、定住外国人を含む全ての社会構成員に、公的負担による皆年金制度を実現する。高齢者・「障害者」の労働権を保障しつつ、社会的連帯による福祉政策を推進する」と提起し、現行の年金制度への革命的対案となっている。個々の点では更に研究を必要としているが、現時点ではこの資本制社会においても実現可能なものとして新たなオルタナティブといえるだろう。今後の研究課題としては、社会全体と地域、労働と賃金、資本家に都合のよい定年制などの問題に、この「年金」を巡る問題も深くかかわるだろう。この点については、改めて稿を起こさねばならないだろう。
 では政府・与党案に対して、対案を提起している野党はどうだろうか。民主党は、年金制度の一本化案を提起しているが、消費税率を八%に上げるという大問題も含め、現行の年金制度における不平等、不公平をどの点で是正するかの根本的解決案は無く、首相小泉の一本化案に巻き込まれてしまうのではないだろうか。いや民主党は、自民党と変わりのないブルジョア政党としての本質をここでも明らかにしている。
 日本共産党は、基礎年金五万円案を提起し、国民年金受給者のなかでも低所得者に上乗せさせることを提案し、不平等の是正を一定程度訴えているが、ここでも年金制度の資本主義を支えるものとしての側面での批判は行われておらず、改良主義としての面目を保っている。
 年金制度改悪法案の成立に反対し、安心して働き、生活できる社会の実現に、全民衆の団結を実現しよう。 (A)