編集部だより

◆イラクでの日本人人質事件で、政府、保守的政治家(公明党もふくむ)、右翼、一部大手マスコミなどは、「自己責任」の名によって、人質・家族たちを袋だたきにした。だが、「自己責任」なるものは、結論的にいえば“政府のいうことを聞かないと、イジメル”といことである。まさに戦時中の「非国民思想」と全く同じである。◆これと対照的なのが、欧米などのメディアの態度である。人質たちは評価されることはあっても、決してけなされることはない、ということである。「日本の常識は、世界の非常識」の一つの典型である。◆だが今回の問題は、根深い問題である。近代憲法の理念からすると、主権者は政府や国家ではなく、有権者たる民のはずである。だが、「国民主権」は、さまざまな契機によって、たえず国家主権に疎外され、しばしばこの理念は逆転する。◆しかも、日本の場合は、その歴史的伝統から「お上思想」が根強く、近代憲法理念は建前という状況が、戦後憲法下で続いてきている。したがって、今回の事件はまさに彼らの地金がでたということである。◆こうした人間たちが、いま声高に「憲法改正」をとなえている。だが、今回の事件ではしなくも暴露されたように、彼らの言う基本的人権とか、主権在民とかはたんなるお題目でしかない。日本の伝統を組み込んだ憲法に変えたいという彼らの本音は、まさに国家の名による人権、主権在民制の制約であり、戦争のできる国づくりである。(竹中)