朝鮮核問題六者協議
 米ブッシュ政権の増長で進展せず
  一極支配の核統制露骨に

 朝鮮半島核問題をめぐる第二回目の六者(朝鮮半島北・南、米国、中国、日本、ロシア)政府間の協議が、二月二五〜二八日に北京にて行なわれた。
 結果は、米国による「あらゆる核開発の完全で検証可能な後戻りのできない廃棄」という一方的な主張と、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による朝米間でのいわゆる同時行動原則の主張が対立したままに終わり、六者の共同文書は作成されず、具体的合意は達成されないまま終了した。(なお、北朝鮮が言う同時行動原則とは、北が「核兵器開発の放棄および核活動の凍結」、米国が「テロ支援国規定の撤回と重油供給」を相互に行なうことから始め、最終的に朝米の国交正常化へ到るという提案である。)
 しかし、議長国・中国の王毅外務次官が最終日、「六者は、核兵器のない朝鮮半島を実現すること、平和的に核問題を解決することに向けた関与を表明した。」「六者は協議を継続し、今年六月末までに第三回協議を開催すること、その作業部会設置に合意した」という議長声明を発表した。この議長声明には何ら法的拘束力はないが、当面の間は、米ブッシュ政権が北朝鮮を先制攻撃する事態は制止される情勢が続く見とおしとなった。
 とはいえ、「高濃縮ウラン」と「あらゆる核開発」という二つの論争点をめぐって協議が決裂し、朝鮮半島での戦争の危機が一気に高まる危険性もある。
 ブッシュ政権は、北がウラン濃縮施設(遠心分離器)を持ちウラン核兵器開発を続けていると決め付けており、この問題を対イラク攻撃の口実となった「大量破壊兵器」問題と同様に扱っている。この論理では、北がウラン濃縮の施設や計画を持っていないということを証明できない限り、米国は武装解除の攻撃を行なうことができるということになる。一方、北はウラン濃縮を認めたことはなく一貫して否定しているが、ブッシュ政権から核先制攻撃の対象とされている状況においては、北が、黒鉛原子炉からのプルトニウムの再処理を放棄しても、本音ではウラン濃縮のほうは保持したいと考えることはありうることである。
 北が核兵器開発を進めることは、九二年南北非核合意や〇二年日朝ピョンヤン宣言に違反することであり決して望ましいことではない。しかしそれでも、北には、侵略の脅威に対して自衛権を行使する権利があることは否定できない。日本人民にとっては、北に「核抑止力」の発想を捨てよと言うよりも、米国が北に対する核使用を含む脅威策を捨てることを要求することが先決である。
 もう一つの困難は、ブッシュ政権が新たに「平和利用を含めた核開発の放棄」をも不当にも要求しだしたことである。米側は「北において平和的な核計画というものがありえるかという問題がある」とし、気にくわない国には原子力発電などもやらせないという無茶苦茶を言い出している。このブッシュ政権の新政策は、核拡散防止条約とIAEA査察という現行体制(非核兵器国の核武装化を阻止するとともに、核の平和利用を保障する体制)は当てにならないとして、米一極支配の恣意的な核統制の方向を打ち出したものであり極めて不当なものである。
 こうしてみると、ブッシュ政権が続くかぎり、六者協議が建設的合意に到ることは極めて難しいと考えられる。六者協議の本質は、本来朝鮮半島の北・南が対米関係を決するべきことに対し、周辺大国が介入する枠組みである。それは、「二国間安保から多国間安保へ」(社民党)などとして美化すべきものではない。しかし、そこで建設的合意が行なわれるならば朝鮮半島での戦争を抑止することはできるだろう。対北政策を転換しすべての困難を作り出したブッシュ政権が打倒され、米朝の間でこそ、九四年米朝ジュネーブ合意の再構築に相当する合意が達成されることが必要だ。(W)