戦時国会
 イラク派兵承認案の強行採決を弾劾する
   暴走する小泉戦争内閣打倒

 一月十九日から通常国会が始まった。この国会は、自衛隊のイラクへの出兵が開始され、日本が戦後初めて自国の軍事力を戦場に侵出させつつあるなかでの国会であり、まさに戦時国会と言うべきものである。
 本来ならこの国会で、昨年六〜七月のイラク特別措置法を提出・可決させた時期と、現在との情勢変化(昨秋以降のイラクでの占領軍への武力抵抗の活発化、大量破壊兵器除去という対イラク開戦の「大義」の崩壊など)が考慮されることによって、イラク特措法の実施を凍結し、自衛隊イラク派兵を中止する決定が行なわれて当然なのである。しかし現実は、一旦ブッシュに誓約してやり始めたことはやってしまわなければ政権がもたないということか、何があろうと進軍ラッパ以外には耳をかさないとばかりに、小泉連立政権は「殺し殺される」事態へ突き進んでいる。
 十九日の首相施政方針演説で小泉は、イラク派兵に政権生命を懸ける姿勢をむき出しにした。小泉首相の登場時は、行財政改革が目玉であったが今日、そちらの方は官僚・族議員との手打ちがなされてしまい、敢行しているのは戦場派兵と憲法改悪着手の二つという、とんでもない軍国主義者であることが明らかとなった。
 小泉は、施政演説で「国際社会がテロとの闘いを続けている中で、テロに屈してしまえば、世界にテロの脅威が広がる」などとし、完全にブッシュ政権とネオ・コン一派の「対テロ戦」の論理に自己同一化して硬直してしまっている。また日本版ネオコンとして彼は一月二七日の衆院で、「日本に危機が起きた時、国連は侵略を防いでくれることはない」と言明した。これは国連の安全保障秩序よりも米国の一極支配を選択すべきだという、戦後外交を覆す重大発言である。しかし、そういう自覚がないのではないか。彼にも、ブッシュ政権に付いていたほうが日本の帝国主義的利害を守るうえで得だという何らかの国策はあるのだろうが、ブルジョア政治家として国家戦略を提示するという姿勢は感じられない。
 一方では、一月十九日にイラク侵入を果たした陸上自衛隊先遣隊の佐藤隊長は、サマワに到着して「歴史的意義」と口にし、二七日の旭川での派兵本隊編成式では河野第二師団長が「イラク派遣は歴史の転換点」と極めて政治的発言を行なっている。小泉や石破がバクチ的に自衛隊をもてあそんでいる一方で、制服組上層が異常に張りきるという危険な様相となっている。戦死したら最高一億円やるという人命を愚弄した政治によって、戦地へ出征させられる一般自衛隊員こそ、いい迷惑である。
 小泉は当初は、安全だから派遣すると言い、情勢が変わってくると、安全ではないからこそ訓練している自衛隊を出すのだと言い出した。何というその場しのぎか。またイラク攻撃・占領の正当性の論議はすっ飛ばして、「苦しんでいる人々や国々のために、困難を乗り越えて行動するのは国家として当然」と一般論にすり替え、またもや、派兵が憲法前文の「国際社会において名誉ある地位」を実現することになるのだとペテン的言辞を繰り返している。実際は、世界中が日本のイラク派兵を非戦日本の歴史的転換として憂慮しており、日本の国際的評判はひどく傷つけられているのである。
 また小泉は、国会で「正当防衛は武力行使ではない」と繰り返し、防衛庁長官石破も「テロや物とりは戦闘行為という評価にならない。撤退にはならない」としている。これは、イラク特別措置法で「戦闘行為が行なわれるに至った場合又は予測される場合には、中止・退避する」と規定されていることについて、イラク人民などの占領軍に対する武力抵抗に反撃することは武力行使ではない、戦闘行為ではない、殺し殺される事態になっても撤退しない、と言明するものである。国家の軍隊同士の交戦でないかぎりは、法的に「戦闘行為」ではないなどという解釈をしていれば、世界中の「対テロ戦」に自衛隊を派兵することが可能となってしまう暴論である。
 また、米英占領当局から日本政府に送られた十二月十二日付け書簡は、派兵自衛隊が占領当局命令第十七号でいう「連合国要員」として不逮捕特権などを持つとしている。このことを国会で追及された小泉は二十二日、「主体的に人道復興支援を中心とした活動に従事するもので、占領行政の一翼を担うものではない」などと答弁している。
 このように小泉が、占領軍の一員であるということを認めたがらないのは、「占領」が現憲法が放棄した交戦権の一つであり、今回のイラク派兵が交戦権行使の為のものではないとする政府の前提が壊れるからである。しかし現実には、自衛隊はバグダッドでもサマワでも占領当局と四六時中調整しており、占領軍の一部であることは誰も否定できない。イラク派兵自衛隊がこれまでのPKO派兵とは異なり、戦争国際法が適用される地にいることを真剣に扱わず、ごまかしているのである。
 まったく不十分な国会審議でも、小泉政権がペテンと架空の論理で、おのれの政権維持のために軍事冒険に乗り出していることが明らかとなった。そして三十一日未明の暴力国会での派兵承認案強行採決である。こんなことで日本の命運が決せられてしまってよいのか。日本人民はいまこそ、イラク派兵中止・戦争内閣打倒のために総決起しようではないか。(A)