編集部だより

◆資本主義の特質の一つは、経済至上主義ないしは経済価値唯一論である。人類史における近代を概念規定することは、難しいことではあるが、先の意味では経済を政治、宗教、文化などから相対的に分離させることも大きな一つの指標であろう。◆資本主義の成熟と安定とは、ある意味では、経済至上主義の価値観をもった「経済主義的人間」を労働者にも拡大することといえよう。◆前近代の身分制度や暴力支配と異なり、あたかも資本主義の支配が現象的にはスマートに見えるのも、非常時での暴力支配を除いた経済強制と法治によるものである。だが、この経済強制も、「経済主義的人間」を多数派とし、ブルジョア的経済ルールなるものを被搾取階級に受容させることによってこそ成り立つものである。◆今、このようなブルジョア的支配構造に最も対立しているのは、イスラム教徒、とくにその原理主義派かもしれない。そこでは、依然として経済至上主義は峻拒されているからである。◆経済至上主義の歴史的根本的限界については、戦後の日本人はいやと言うほど体験してきた。高度成長の諸結果を見れば明らかなように、精神的貧困や自然破壊は急速に増大した。◆前近代のような経済と、政治や諸精神活動との即時的結合ないしは融合も、近代以降のそれらの相対的分離による資本の専制も、ともに超克すべきものである。◆そのためには、正義や「公共善」に裏打ちされた自由と平等が不可欠であろう。(竹中)