今次総選挙結果から何をつかむか
   新しい時代模索する民衆に立脚し

 創出された二大政党体制の本質

 今回の総選挙において、自民党は、追加公認・保守新党合流分を含めて二百四十四議席を獲得して選挙前勢力から三議席減らし、公明党は三議席増やして三十四議席、自民・公明の与党ブロック全体で二百七十八議席の安定多数を維持した。民主党は、百七十七議席を獲得して選挙前勢力から四〇議席増やした(民主党会派は無所属議員を含め一八〇議席)。社民党は六議席(選挙前十八議席)、日本共産党は九議席(同二〇議席)と凋落した。
比例代表の得票率で見ると、自民党は三十五%(前回二十八%)、公明党は十四・八%(前回十三%)、民主党は三十七%(前回の民主・自由合計三十六・二%)、社民党は五・一%(前回九・四%)、共産党は七・八%(前回十一・二%)であった。
 投票率は、五九・八六%と戦後二番目の低さを記録した。
 我々は、この総選挙の結果から次の点をつかまねばならない。
 第一は、自民党と民主党の二大政党体制が創り出されたことである。
米ソ冷戦期の相対的安定を前提としたケインズ主義・利益誘導型政治は、有効性を失って没落した。自民党は、対米追随一辺倒の軍事貢献・あからさまな新自由主義の勢力がその主導権を獲得し、これと衰退過程にある利益誘導型政治勢力とが連合する政党に再編され、政権政党の座を確保した。民主党は、相対的な対米自主性の拡大・社会崩壊の進行に対する住民参加型フォローを組み込んだ新自由主義路線を模索し、政権交代の受け皿政党として、支配階級により意識的に押し出された。かかる二大政党体制は、支配階級にとっては、米帝を主柱とする国際反革命同盟体制下で世界市場再分割競争が激烈化していく時代、旧来のブルジョア社会のシステムが崩壊していく時代に対処するための政治選択の幅の確保を意味する。だがこの二大政党体制はまた、社会的諸矛盾を抱え込み、将来的に支配機能の不全を導く可能性を孕んでいる。
 第二は、米ソ冷戦期の相対的安定を前提としたケインズ主義・利益誘導型政治の改良主義的反対派であり続けている社民党と共産党が、急速に民衆から見限られ凋落したことである。
 人々は、戦後政治が破綻したことを認識し、国際的諸関係の危機の時代、社会の危機の時代の戦略的展望を求め始めている。小泉自民党の朝鮮民主主義人民共和国を見据えた対米追随一辺倒・派兵国家路線、多国籍企業の利益を推進する新自由主義の「改革」「市場万能主義」路線は、それはそれで支配階級からする一つの戦略的「展望」の正面切った押し出しであった。民主党も、支配階級からするもう一つの戦略的「展望」の提示を模索し押し出そうとした。これに対して、社民党と共産党は、戦後平和主義、戦後民主主義の防衛、「ルールある資本主義」を弱々しく対置するスタンスでしかなく、いずれの階級・階層の立場からにせよ、危機の時代に対応する戦略的展望を提示するという態度を欠いていた。そこにさらに「二大政党制実現」「政権選択選挙」の一大キャンペーンが追い討ちをかけ、社民党・共産党の票が大量に民主党に流れたのであった。
 戦後体制(現行憲法)を左から支えてきた社・共の凋落は、社会の右傾化を端的に表すものである。同時にそれは、左翼の側に、危機の時代の共同の戦略的展望の獲得と戦列の再編とを、焦眉の課題として迫るものである。
 第三は、戦後二番目の低投票率に結果したことである。
 それは、小泉政権の「構造改革」「市場万能主義」に対して膨れあがった幻想がはじけ、だが民主党の危機打開の処方箋も基調において自民党と同じであり、しかも社民党、共産党の路線が無展望であることによる。リストラ・倒産・失業、年金など社会保障制度の崩壊が進行する中で、政治的な打開の道を見失った人々が、生活の自己防衛に向かわざるを得なくなっているということであろう。
 支配階級は、今回の総選挙を媒介に、二十一世紀的な意味での戦争と革命の時代に備えた布陣へ、大きな節目を画した。ボールは、労働者階級の側に投げられたのである。われわれは、新時代の左翼の布陣を構築することでこれに応じなければならない。

  左翼に何が求められているのか

 新時代の左翼の布陣は、一つには、新しい社会を求めて叢生しつつある民衆運動に立脚したものとなるだろう。
 今日民衆の運動は、資本主義とブルジョア国家を批判しそれらと闘うだけでなく、それらにかわるシステムを実生活の必要から出発して模索し創造していく側面をもって発展している。しかもそれは、グローバルかつ地域的なネットワークを強めつつ発展している。 新時代の左翼の布陣は、労働者階級・人民のこの新たな自己解放運動のうねりを推進できる質を持って組織されねばならない。革命理論の現代的発展を推し進め、運動発展の桎梏であり続けている教条主義・セクト主義などの克服に努めることは、そのための重要な作業の一つである。

 新時代の左翼の布陣は、二つには、国会内の力関係に目を奪われることなく、当面国会の外部に重心を置いて形成されなければならない。
 それはまずもって、現代的質をもった運動基盤の発展に力を注がねばならないからである。それはまた、小選挙区制をテコに二大ブルジョア政党体制が出来上がる過程に入ることによって、また社民党、共産党が没落過程に投げ込まれることによって、労働者階級・人民が、一面で国政選挙に疎外感を深め、一面で自己の運動の勃興に精力を集中する局面が当面つづくだろうからである。
 もちろん小選挙区制下であろうと、時代の民衆運動の勃興を基盤にするならば、新時代の左翼が国会内に強力な橋頭堡を築くことは長期的には可能である。しかし現局面では、社民党が主張しているような国会内的「第三極」を追求するといったことは、来夏の参院選を考慮してもかなり困難だろう。中心環は、国会外に、国際的・地域的な民衆の一大勢力を浮上させることである。 
 新時代の左翼の布陣は、三つには、支配階級(二大政党体制)の内部矛盾を利用して進出するだろう。自民党と民主党の二大政党体制を「保守二大政党制」という形で、敵の同質性(強さ)を過大に評価するのは誤りである。
 世界史的に産業が成熟段階に入ることで、資本は一方では、狭まる搾取領域を前に市場再分割競争の途方もない激烈化と投機経済の肥大化へと突き進み、他方では、利潤目的のシステムでは組織しにくい環境・福祉などの活動領域の急速な拡大の必要に対応できないままに失業者層の巨大な膨張を引き起こし、民衆の間にもう一つの世界を求める反抗と社会革命の萌芽的な諸活動とを広範に生み出している。支配階級は、国際反革命同盟体制の維持か自国ブルジョアジーの個別利益の貫徹か、また社会秩序の崩壊にたいして社会革命へと動き出した民衆運動を包摂することで対処するのか治安弾圧の強化で対処するのか、こうした矛盾を拡大させながら没落していく過程にはまり込んでいるのである。国際反革命同盟体制の主柱たる米国の支配階級しかり、その下で右往左往するわが国の支配階級しかり、である。
 今日わが国に現れた二大政党体制は、支配階級のかかる内部矛盾の反映に他ならない。二大政党体制が孕む支配階級の内部矛盾の利用、とりわけ民主党の利用は可能であるだろう。われわれは、これまでの歴史上の革命がそうであったように、現代革命のうねりも、敵の矛盾を意識的に利用して政治的に浮上するものと自覚してかからねばならない。


   
  総選挙後の展開

 総選挙後、自・公連立を基盤に第二次小泉政権が発足した。だが第二次小泉政権は、船出したばかりなのに世論調査の支持率が急落、荒れ模様の海の真っ只中で方向を失いはじめている。最大の要因は、「イラクへの自衛隊派兵」問題である。
 小泉は、総選挙で与党勢力が絶対安定多数の議席を維持したということで「自衛隊のイラク派兵方針は信任された」と発言し、米帝・ブッシュに約束してきた派兵を強行しようとした。だがその矢先、イラク・イスラム民衆の反米武装抵抗勢力の攻撃が一段と強まり、ヘリが次々撃墜されるなど米軍の被害が増大した。しかも、攻撃は自衛隊が進駐を予定している南部の地域にまで拡大し、米英軍だけでなくその指揮下の諸国軍や脇から支える国連へと拡大した。そして、「自衛隊を派兵すれば、東京を攻撃する」と警告され
るに至っている。
 米帝は、イラクで民衆の武装抵抗の泥沼にはまってしまい、いまやそこから抜け出そうと必死にもがき出している。そうした中で日帝は、米帝に迫られて他民族抑圧の肩代わりに乗り出す決断が問われているのである。
 それは重大な決断になる。民衆を相手にした戦争に勝利は無い。侵略戦争での敗北は、体制の崩壊に結果する。七世紀の朝鮮出兵の敗北は近江朝の崩壊を、十六世紀の朝鮮出兵の敗北は豊臣政権の崩壊を、二十世紀のアジア侵略戦争の敗北は天皇専制国家の崩壊をもたらした。せめて「大量破壊兵器」とか「国連」とか「戦後復興」とか、それなりの「大義」でカモフラージュされているのであればまだしも、もろに米帝の覇権と石油利権のためというのでは、体制の運命をかけるにしては最悪・最低の形での侵略戦争への突入にななりかねない。米帝との一蓮托生に運命をゆだねアジア・中東の民衆と敵対することに何の痛みもない小泉政権はともかく、支配階級全体は、戦後初めての本格的な侵略戦争行為への突入を前にして、はげしく動揺しているところである。
 小泉政権の路線が、軍事・外交領域に限らず全線で破綻し始めている。われわれは、全世界の民衆と連帯し、米帝追随一辺倒、あからさまな新自由主義の路線に反対する全ての勢力と共同して民衆運動の勃興に道を拓き、左翼の現代的布陣を創出し、そしてその中で共産主義運動の団結・統合を図っていかねばならない。