名護辺野古・海上基地計画 ボーリング調査を中止せよ!
  沖縄基地撤去闘争の再強化へ

 那覇防衛施設局は十一月十七日、米軍普天間基地の代替とされる巨大海上基地を名護市・辺野古沖に建設するために、沖縄県にボーリング調査の申請(公用財産使用申請)を強行した。県が申請を許可すれば、防衛施設局は年明けにも、辺野古沖のサンゴ礁などを六十三ヵ所も掘削するボーリング作業を強行しようとしている。
 この作業は、地質などの調査であって新基地本体の工事の開始ではないが、着工への既成事実作りであり、一九九七年十二月の市民投票でヘリ基地反対を選択した名護市民の民意に敵対するものである。また、今後予定されている環境影響評価(アセスメント)の実施の前に、環境に重大な影響を与えてしまうものであり、環境アセスを形骸化してしまうことにもなる。
 名護海上新基地問題および普天間移設問題は、いぜん沖縄基地問題の焦点である。沖縄基地問題は、九五年の少女暴行事件以降の反基地の高まりの中で、「本土」の人々に「沖縄に米軍基地の七十五%を押し付けておいてよいのか」という問いを広範に突きつけ、一時は非常に広い関心事となっていた。しかし名護市民投票の勝利以降、それを無視して九九年十二月に辺野古移設の閣議決定が強行され、また岸本保守市政・稲嶺保守県政が継続し、海上基地撤回の決め手を欠いたまま時間が流れる中、しだいに「本土」の世論の関心が低下してきていることは否定できない。
 沖縄・名護への新基地押し付けが着工へ向けて動こうとしている今日、それを阻止することを始めとした沖縄基地撤去闘争の再強化を進めるべき時がきている。
 その際、9・11事件以降、米ブッシュ政権と米軍の有様が世界的規模で問われ、糾弾されているという新しい今日的情勢を踏まえることが重要になるだろう。普天間返還と県内移設が決められた九六年十二月の日米SACO合意の時代には、世界平和を脅かす不安定要因としての米軍事戦略の姿は暴露されていなかった。その姿は今日、イラク侵略と占領によって世界的に暴露されている。先制攻撃戦略の国家テロリスト・ブッシュに、住民を犠牲にしてまで日本はなぜ新基地を与えなれればならないのか、現行の日米関係から言ってもそんな必要はあるのか、こうした疑問が多くの人々に急速に高まる可能性は十分にある。
 十一月に入って米国防総省は苦境に立つイラク占領を維持するために、イラクへの海兵隊増派を決定しているが、普天間基地やキャンプ・シュワーブに駐留する沖縄海兵隊(第三海兵遠征軍)の派兵の可能性もある。沖縄海兵隊のイラク派兵は日米安保条約にも違反するが、沖縄が不法なイラク占領の直接の基地となることを意味する。米国ネオ・コン一派の「イスラム過激派との第四次世界大戦」というような倒錯した好戦論に追随し、いま沖縄海兵隊に巨大海上基地を作ってやるというほど馬鹿げた日本の選択はない。
 こうした情勢のなか、十一月十六日、東京・文京区民センターで「辺野古の海に新基地を許すな!ボーリング調査の中止を求める集い」が開かれ、三百名近い人々の参加で盛況であった。主催は沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、東京沖縄県人会青年部、名護へリポート基地に反対する会、命どぅ宝ネットワークの四団体。
 集いには、辺野古の「命を守る会」(ヘリポート建設阻止協議会)から六名が参加し、翌十七日には、「命を守る会」による防衛庁要請行動が行なわれた。
 この集いは、自然保護の立場からの基地反対が強く出るとともに、県人会青年部が前面に出る形で行なわれたことが特徴であった。
 最初に、花輪伸一さん(WWFジャパン)が自然保護の立場は人権・平和を求める立場でもあることを明らかにしつつ、ボーリング中止を強く訴えた。日本自然保護協会の吉田さんは、名護東海岸での藻場現地調査結果を報告し、ボーリング六十三ヵ所中少なくとも十八ヵ所がジュゴンの藻場であること、基地建設によって壊滅的影響があることを明らかにした。また北限のジュゴンを守る会の鈴木さんは、海洋生物保護のために対潜水艦ソナーの規制を求める動きが、米国を始め国際的に高まっていることを報告した。(この件について、来沖した国防長官ラムズフェルドは十七日の稲嶺知事との会談で触れ、「ソナーの海洋生物への影響は、米政府の科学的研究でほとんどないことが示されている」と開き直っている)。
 県人会青年部の若者たちによる三線演奏などの後、「命を守る会」の島袋さんら三人のオバーと青年部の金城さんらの対談の形で、沖縄戦後の辺野古の生活史が語られていった。
  最後に、「命を守る会」代表世話人の金城裕治さんが、「老人だがこの八年間がんばってきた。日本の平和のためにみんなで頑張ろう!」と訴えるとともに、「日本の課題をなぜ小さな島に背負わせるのか。それが日本の民主主義か!」と厳しく問いかけた。
 翌日の要請行動での、石波防衛庁長官への要請文「辺野古沖埋め立てによる普天間代替基地建設計画の白紙撤回について」においても、「仮に日米安保体制がそれほど重要であるならば、沖縄だけに過重負担を押し付けるのではなく、日本全国で均等に負担すべきだといえます。」と指摘している。
 民主党の管代表は総選挙戦中、沖縄に行って沖縄海兵隊の移転を唱えたが、日米安保体制を民主党が積極的に支持している以上、民主党としては「本土」移設を含めた具体的な打開案を出さなければ、沖縄民衆にとっては欺まん的なリップサービスとしか受け取られないのではないか。また、安保体制を認めない我々にしても、日本「本土」での沖縄基地撤去闘争のこのかんの停滞を真剣に反省する必要があるだろう。イラク反戦・反占領の運動も、必ずしも辺野古の新基地阻止の課題と連動しているわけではない。
 ブッシュ政権の戦争政策に対する世界人民の闘いという現況の中で、沖縄基地撤去闘争を再び前進させ、勝利の展望を拓こうではないか。(A)