イラク情勢
  派兵協調に失敗した国連安保理新決議
    泥沼にはまる「有志連合

 十一月二日、イラク人民の米英占領軍の撤退を求める武力抵抗闘争は、バグダッド近郊で米軍大型輸送ヘリコプターを撃墜して米軍十六名をせん滅し、軍用機の撃墜という政治的・軍事的に重大な戦果を収めた。これは、無分別なテロリズムではない。違法な占領者に対する正当な抵抗権の行使であり、イラク人民の大きな勝利である。ブッシュは、これ以上、米国青年の命を不名誉な侵略者として犠牲にする犯罪行為を止め、ただちにイラクから全軍を撤退させるべきである。小泉は、自衛隊輸送機を始めとするイラク派兵計画をただちに中止すべきである。
 このように米英の不法なイラク占領が困難を増しつつある中、十月十六日、国連安全保障理事会では、イラク多国籍軍の派兵などを内容とする安保理決議1511が決議された。この決議は、イラク国民への主権移行過程とその過程での国連の役割という主要争点について、米英と他の安保理諸国に一定の妥協が成立して全会一致という形になった。しかし、多国籍軍派兵と資金拠出について、米英と仏独露中との対立は解決できず、どちらかと言うと米英の孤立が浮き彫りになる結果となった。
 決議採択にあたって仏独露は、「団結の精神で支持したが、二つの主要な問題でさらに踏み込むべきであった。我々が、軍事的関与と、現在約束している以上の財政的貢献を行なう状況はつくられていない」とする共同声明を発表した。仏独は、EUとしての二億ユーロ(二・四億ドル)以外は一切出さないとしている。そして米英は、多国籍軍を諸大国の「国際協調」の形で作ることには失敗したのである。
 こうしてイラク占領への協力は、ブッシュ政権の「有志連合」への乗めり込みでしかないという国際状況が明らかになる中、ブッシュが十月十七日に来日した。小泉政権は事前に、向こう四年間で総額五十億ドル、まず〇四年度に無償十五億ドル(一六五〇億円)という資金拠出を勝手に発表して彼を迎えた。英国ですら総額五・五億ドルの表明である。米側はこのかん、「日本はたんなるATMではない。中心的役割を」と迫っていたが、日本の突出ぶりが目立っている。
 しかし、小泉は何の目算もなく対米従属で言われるがままにカネを出している、と見るのは単純すぎる。ブッシュのイラク侵略は仏露の石油権益を侵害し、各国に再分配するという性格をもっている。安保理での争闘の背景の一つもここにある。小泉政権は、「有志連合」に積極的に組し、最大のイラク債権国として優先的に再分配にあずかろうという帝国主義的目論みを持っている。そのような目論みのためなら、国際法違反の侵略・占領も平和憲法違反もかまわないとする帝国主義的政治こそ糾弾する必要がある。
 続いて、十月二三日から「有志連合」の一つであるスペインのマドリードでイラク復興支援国会議なるものが開かれ、総額三三〇億ドルという拠出表明の合計が発表された。その内、日米両国で三分の二の二五三億ドルを占めている。これらの資金は、現在の枠組では米英の占領当局の監理下に置かれるのであり、イラク復興支援ではなく占領支援である。日本はこの枠組に一銭も出すべきではない。日本の拠出中止を勝ち取ることは、イラク占領に決定的な打撃を与えることにる。
 十月二五日、米国反戦運動の連合体であるANSWERなどの呼びかけで、イラク占領反対の世界一斉行動が展開され、ワシントンでは十万人が参加し、四月侵略開始以降の最大の反戦行動となった。しかし日本では、反戦運動の復調をいぜん勝ち取れていない。
 総選挙の結果がいかなるものであれ、その結果を分析し、日本の労働者人民は反戦運動を始めとする闘い総体の戦略・戦術を再検討・再調整する必要があるだろう。民主党が勝利すれば、イラク特別措置法に基づくイラク派兵は一旦破綻する。その意味では、社民党、日共などへの投票に次ぐ次善の策として、民主党候補への投票はありうるのである。しかし民主党は、イラク新政権の要請と国連の決議とを要件として派兵を支持しており、さらにPKF任務もやるべきだとしている点では自民党より悪いとも言えるのである。仮に民主党政権ができても、予断を許さない情勢が続くのである。
 左翼の連携と前進をすすめ、反戦運動や憲法改悪阻止闘争の広範な発展を実現していこう。(W)