六者協議
 米ブッシュ政権は共和国先制攻撃戦略を放棄せよ
   日韓民衆連帯を先頭に
     東アジアの平和を闘い取ろ


 八月二七日から二九日まで、北京で「六者協議」が行なわれた。
 四月の同じ北京での朝・米・中三者協議以降、朝鮮民主主義人民共和国は米国に対し「不可侵条約の締結」を求め、米国ブッシュ政権は国務省の不可侵条約への前向きな姿勢を退け、共和国の「核開発」の一方的放棄を前提とする強硬姿勢を国防総省とホワイトハウス主導で打ち出した。共和国はかねてから朝米の二者協議を主張し、米国は朝米中に韓国、日本の同盟国を加えた五者協議を主張したがそれぞれの主張は通らず、調停役の中国の発案によるロシアを加えた六者協議となった。
 三日間における協議は、終始朝米間で平行線をたどって隔たりの大きさが際立ち、北朝鮮は段階的解決方法を提案したものの、何ら具体的合意は得られなかった。次回日程も決まらなかったが、六者協議を継続するということのみが確認され、決裂は当面避けられたのであった。
 議長国の中国が努力したコミュニケの文書化は成されなかった。しかし、中国の王外務次官は最終日に、六カ国に次の「共通認識」が得られたとして口頭発表を行なった。それは、@対話を通じて朝鮮半島の核問題を平和的に解決する。A朝鮮半島の非核化と同時に、共和国の安全問題の解決を考慮する。B段階的あるいは同時並行的な方式によって、公正で合理的な解決案をさぐる。C協議や交渉の過程において情勢を悪化させる措置を取らない。D対話を維持し共通認識を拡大する。E次回協議の日時と場所を速やかに確定する、というものであった。
 このように六者協議がとりあえず開催され、その継続が一応確認されたことは、朝鮮半島での戦争の勃発を押し止める可能性を引き出した。しかし、中国が発表した「共通認識」合意は、なんら法的制約性のあるものでもなく極めて不安定なものでしかない。朝鮮半島での戦争を阻止するためには、協議参加国の労働者人民がそれぞれの政府に平和実現のための圧力をかけ続けることが不可欠である。
 ここで問題となるのは、朝鮮半島の平和を脅かしている元凶は何であるのか、について我々労働者人民が明確な観点を堅持することである。本紙においても繰返し明らかにしているように、米国でブッシュ政権が登場し、前政権が締結した九四年米朝ジュネーブ合意を破壊したことが「北朝鮮核問題」の発端であり、原因である。ブッシュ政権はさらに、昨年一月の大統領一般教書演説で「悪の枢軸」の一つとして共和国を名指しし、昨年九月の「米国の国家安全保障戦略」においてそれらに対する核を含む「先制攻撃」を戦略化した。そして現実に、「悪の枢軸」の一つとして名指ししたイラクに対し、今年三月二十日以降ブッシュ政権は全面侵略をやってのけたのである。こうしたことから共和国が、あらゆる手段で自衛権を行使しようとすることは当然の権利ではなかろうか。
 六者協議が合意を達成すべき本質は、米国の共和国敵視・攻撃政策の放棄である。その結果、「北朝鮮核問題」は解決する。そのためには、朝米の直接協議による合意が必要であり、最終的には朝鮮戦争の休戦協定が平和協定に変えられる必要がある。今回の六者協議でも、米国は当事者二国間の協議を拒否し、米国に都合よく従うべきとみなす日本と韓国を加えることにこだわり、問題解決の本質をそらそうとし続けている。ブッシュが六者協議に臨む態度は、いわゆる「テロ国家」を包囲する「有志連合」政策に日本、韓国に加え、中国、ロシアを巻き込もうとする態度である。
 日本政府の態度も、六者協議に「日本人拉致問題」を持ち込むことのみに汲々とするのみで、東アジアの平和構築に何ら積極的役割を果たせず、混乱を持ち込もうとしただけであった。拉致問題は、日朝の二国間の問題であり、自らの外交能力の拙劣さを棚に上げて他国に解決をお願いするような問題ではない。拉致問題は、日朝ピョンヤン宣言に基づいて解決が進んでいくはずのものであったが、ブッシュ政権からの横槍などによって頓挫している。日本政府が、特有の意味を持つ「テロ」規定を拉致問題に行ない、六者協議に持ち込むことは、ブッシュ政権の先制攻撃論の先導役を買うだけになる。
 六者協議において、中国の外交手腕が注目されたが、日本のマスコミ報道では目立たたぬ存在となったのが韓国代表団であったようだ。しかし、全国的な反米闘争を背景として大統領当選を果たしたノ・ムヒョンにとって、韓国民衆の声を無視して六者協議に臨めるものではない。韓国は米国の同盟国ではあっても、ブッシュの「有志連合」からはいくぶん離れつつあるのだ。
 七月に韓国の市民団体で構成される「朝鮮半島の核問題に対する国際民間法廷」が、核問題の原因と解決方法などの究明をめざして開催された。ここでの仲裁決定では、米国に対しては一切の核脅威と孤立圧殺政策の放棄、共和国に対してはジュネーブ合意の原則に従って核開発を凍結し、平和的な核利用の検証手続きを実施することを要求している。韓国代表団は、このような民衆側の意向をある程度実現していたために、日本のマスコミでは目立たぬ存在とさせられてしまった。
 いまだに軍事境界線で祖国を分断された民族にとって、祖国の統一こそが第一の悲願であり、平和実現なしに悲願達成もありえない。朝鮮半島の平和実現への韓国民衆の熱意は強力である。
 朝鮮半島と東アジアの平和実現にとって、日朝国交正常化もまた重要な課題である。六者協議での日朝の協議は、正常化交渉の再開へつなげられなければならない。それは、戦争と排外主義に反対する日本労働者民衆の闘いによって切り開かれるものである。