イラク情勢
自衛隊派兵の阻止を、多国籍軍派兵策動許すな
   
困難深める米英占領支配

 米英のイラク占領支配はますます混乱を深めつつあり、また日本政府の自衛隊イラク派兵計画もますます混迷を深めている。
 ブッシュ政権と小泉政権に困難な情勢を強制している主要な力は、今のところイラク現地において米英の占領に反対して占領軍の撤退を求め、イラク国民の主権を奪還しようとする平和的・武力的闘争が発展していることにある。
 米国、日本、また全世界でイラク人民の反占領闘争に連帯し、今秋の反戦・反占領闘争を発展させよう。米国内ではイラク撤兵を求める軍人家族の運動も広がりつつあるが、来年の大統領選をにらんだ米国反戦運動の前進に期待しつつ、日本でも、すでに年内は絶望視されつつある自衛隊イラク派兵の実施計画を完全に破綻に追いこまねばならない。
 米英の占領がイラク人民との敵対矛盾を一層深めているなか、この情勢に逆行して国連安全保障理事会は八月十四日、安保理決議1500を採択した。この決議は、国連イラク支援派遣団の創設を決めると同時に、七月十四日に発足したイラク統治評議会を支持するものとなっている。前者は米英占領当局を補助するものと位置付けられており、占領軍に屈服した形での国連関与となっている。後者は、占領軍の諮問機関であるに過ぎず、
国際社会からイラク新政権の母体として疑問視されているものである。非常任理事国シリアが、この決議案に棄権で応えたことは極めて常識的な対応であった。
 国連は、この決議1500と五月の決議1483(米英占領当局を追認し、イラク経済制裁解除等を決定)とによって、米英の不法なイラク侵略・占領を容認し、その下請け役となってしまった。フランスやロシアは、米国との二国間関係では占領の承認を避けつつも国連を通じてそれを承認し、米国と取引をしている連中である。こうして現在のところ、米英と対抗する形での国連関与は困難となっている。心ある国連職員は、権力を独占し続ける米英と二つの安保理決議に抗議するために、イラクから撤収すべきである。
 イラク国内情勢では、八月に入って武力抵抗の様相に変化が生じ、情勢が流動化してきた。これまでの武力抵抗は、米英など占領軍をおもに直接の対象としてゲリラ攻撃を加えるものであったが、この戦いに加えて、占領軍以外を対象とした何者かによる大規模な爆弾テロの形態が始まっている。八月七日にヨルダン大使館爆破事件が発生し、十九日には国連イラク本部が爆破され、デメロ国連代表を始め多くの国連職員が殺傷された。二四日にはシーア派有力者サイード・ハーキム師爆破未遂事件が起き、続く二九日にはシーア派の聖地ナジャフでアリ廟が爆破され、イスラム革命最高評議会の指導者バキール・ハーキム師を始め多くのシーア派イラク人民が殺傷されるという衝撃的事件が連続した。
 これらの事件によって結局、国際法上占領地の治安に責任を負う米英軍は窮地に追い込まれ、治安を守れない米英占領軍は出て行け、イラク国民に権力を渡せ、という要求がイラク民衆の間で一層高まっている。一方プッシュ政権は、米軍の支配権を保持しつつ、治安確保を名目とした多国籍軍派兵の国連安保理決議を画策しつつある。
 占領軍以外のこれらの標的には、確かにそれぞれに攻撃される根拠はある。つまりヨルダン政府は、米軍の対イラク開戦で米軍の領土通過を認めた。国連は、すでに述べたように米英の占領の下請に甘んじている。またイスラム革命最高評議会は、当初米英指揮下の暫定政権作りを拒否していたが途中から方針転換し、イラク統治評議会に参加している、などである。
 しかし、これらの爆破事件の性格は、文民を殺傷するという法的道義的問題もさることながら、米英に利用される側面、あるいは占領軍を国内・国際的に孤立させ占領反対の広範な統一戦線を進める闘いを混乱させる側面をもっている。とくにハーキム師爆殺事件は、シーア派のイラク民衆を平然と多数巻き添えにする無差別テロリズムの様相となっており、内戦の危険すらかもし出している。
 このようにイラク情勢は、治安を守れない米軍に抗議してシーア派が統治評議会からの脱退を表明するなど流動化してきたが、いずれにせよ米英に占領軍撤退を余儀なくさせ、一刻も早く権力がイラク国民に返還されるのでなければ情勢の安定はありえないだろう。おのれ自身と石油利権を守っているだけの米軍が、イラクに居れば居るほど事態は混乱していく。
 こういうイラク情勢の時に、いぜん自衛隊イラク派兵を準備しつつある小泉は、もはや論外である。今秋臨時国会でイラク派兵法の廃止、派兵準備の中止を勝ち取ろう。
 東京では九月十三日に、「NO!WAR NO!WTO グローバル・ピースマーチ」が行なわれる。(午後一時半、芝公園23号地。主催は実行委員会)。この日開かれるメキシコでの世界貿易機関WTOの会議に抗議し、軍事および経済的な戦争に反対する行動が世界的に展開される。
 また九月二七日には、同じ芝公園23号地で、「もう戦争はいらない!世界の仲間と歩こう!ワールド・ピースパレード」が行なわれる(午後二時開始、主催はワールドピースナウ実行委員会)。この日、イギリスのストップ戦争連合やアメリカのANSWERなどの仲間と共に、イラク占領などに反対する世界一斉行動が展開される。
 関西では九月二五日に、この世界行動にも呼応しつつ、イラク派兵阻止と東アジアの平和確立を求めて日朝・日韓民衆連帯行動が行なわれる。(午後六時半、大阪市・中之島中央公会堂。主催は実行委員会)。
 派兵阻止は可能だ! 自衛隊イラク派兵阻止!米英占領軍撤退!の行動をもりあげよう。(A)