米英占領軍と戦うイラク人民と連帯し
  自衛隊イラク派兵阻止しよう

 自衛隊イラク派兵法案(イラク復興支援特別措置法)が、七月二六日に成立させられてしまった。国会提出が六月十三日、衆院通過七月四日、参院外交防衛委員会で二五日の夜に乱闘的強行採決、翌二六日の未明深夜に参院本会議で強行採決という超スピードである。二八日の延長国会閉会までに何がなんでも成立させるという、なりふり構わぬ与党三党の暴力という他はない。
 イラク派兵法案は成立したが、自衛隊のイラク派兵は阻止することができる。派兵できない政治情勢を勝ち取ることは可能である。
 と言うのは第一に、国内政治的にも、イラク派兵法は、脆弱な政治基盤の上に乗っているにすぎないからだ。六月六日成立の有事三法案は、万一の日本有事への備えという建前によって、最大野党・民主党などを法案支持へ囲い込みことができた(その実、周辺事態などによって戦時体制を国内に発動できるのだが)。しかし、イラク派兵法案は、米ブッシュ政権に兎にも角にもくっ付いて行こうという連中以外、国会内外できわめて不人気であった。要するに、ブッシュの対イラク戦争と現在の占領に何の疑問も感じない連中以外、支持しようのない代物である。このままでよいのか、自民党・保守勢力にも動揺は存在する。
 首相小泉は国会答弁で、「殺されるかもしれないし、殺すかもしれない」と居直ってみせた。そのくせ政府・与党三党は、そういう事態になることを恐れている。小泉の答弁が示すようにイラク派兵は、自衛隊海外派兵の質的飛躍であり、「非戦」戦後日本の歴史的転換を誰の目にも分かりやすく刻印することになりかねない。そのような重大法案であるにも関わらず、有事法成立時の翼賛状況とは対照的に、乱闘国会で過半を制したに過ぎないのである。
 派兵の法的根拠はあるにはあるが、イラク派兵の正当性はガタガタである。何かあれば、小泉政権の命取りである。それで、秋に想定される総選挙の前には派兵できない政治判断となっている。そして事実上の軍隊を戦場へ送ると決めたにも関わらず、安全第一、非戦闘地域へ、と繰り返している。
 第二に、国際政治的には、イラク人民などによる米英占領軍撤退を求める反占領闘争が、武力的にも平和的にもイラク各地で発展している。また国際反戦運動では九月以降に、イラク開戦反対の時と同様、イラク占領反対の世界一斉行動が開始されてくる。イラクや各国での人民の闘いによって、各国政府も簡単にはブッシュに同調できない基調が続いている。厚顔無恥の日本の小泉政権も、自衛隊派兵部隊の本隊をイラクへ乗り込ませる決断が簡単にはできない情勢になりつつある。
 米英が対イラク戦争を正当化してきた論理は、ますます崩壊しつつある。大量破壊兵器が出てこないだけでない。「中東民主化」「独裁者からの解放」の論理も、イラク人民の占領者への怒りが日に日に増大していることによって破綻してしまった。とくに英ブレア政権が苦境に立っている。日本の反戦運動が現在の英国のように発展するならば、小泉政権も二の舞いとなることは避けられない。
 また、ブッシュの戦闘終結宣言以降、日を追うごとに米兵がせん滅(五十名以上)され、七月三十一日に司令官サンチェスは「イラク全土で、非戦闘地域の線引きは不可能」と言わざるを得なくなっている。日本のイラク派兵は、武力行使をしないですむ非戦闘地域が前提となっており、占領軍の要請との関係でも矛盾を深めている。
 これらのことから、派兵阻止の展望はある。自衛隊イラク派兵を阻止できるかどうかは、日本の労働者人民の闘いに主要にかかっているが、またイラク人民を始めとする世界の反戦・反占領闘争の前進にもかかっている。
 米英のイラク占領が国連安保理決議1483によっても、いぜん不当・不法なものである一方、イラク人民の占領軍撤退を求める武力的・平和的闘争は正当かつ国際法に適法的なものである。世界の反戦平和勢力は、米英を批判するだけでなく、イラク人民の反占領闘争を武力抵抗を含め明確に支持する必要がある。抵抗諸勢力がフセイン残党であるかどうかというようなことは、なんら本質的問題ではない。占領軍撤退はイラク人民多数の一致した要求であるからだ。
 九月二七日には、英国「ストップ戦争連合」がイラク占領の終結を要求する国際行動を呼びかけており、また九月二五〜二八日には、米国ANSWERによって「占領と帝国に対する国際抗議デー」が呼びかけられている。後者は、パレスチナからイラク、フィリピン、キューバその他すべての国の抵抗者と連帯する世界抗議行動とされている(9・27はパレスチナ人民の第二次インティファーダ開始三周年の日)。また十月二五日には、ホワイトハウスとペンタゴンへの国際行進が設定され、この行進に世界中から参加するよう呼びかけられている。
 当面9・27が欧米などでの一斉行動であり、日本でもこれに呼応しつつ、イラク派兵阻止の運動を拡大して行くべきである。小泉が派兵できない政治情勢を実現し、小泉戦争内閣を打倒しよう。