自衛隊海外派兵を飛躍させるイラク派兵法案
侵略追認・戦場派兵の阻止を

 小泉連立政権は六月六日、有事三法案を最大野党・民主党の裏切りに助けられて成立させた後、矢継ぎ早に六月十三日には、自衛隊をイラクに派兵する「イラク復興支援特別措置法案」と「テロ特措法」二年延長案とを国会に提出した。そして、この両法案を今国会で「必ず成立させる」として七月二八日までの会期延長を強行した。
 まさに、有事法成立によって「戦争のできる国」になってしまった日本が、さっそくイラクへ戦争をやりに行こうというのが「イラク特措法案」の本質であり、日本の労働者人民は今全力をあげてこの派兵法案を叩き潰す闘いに総決起しなければならない。直面するこの課題に勝利し、さらに有事体制の整備・発動を阻止し有事法を無力化する長期闘争につないでいくべきである。

 派兵できない政治情勢をかちとろう

 七月一日、民主党はイラク派兵法案に実質的には反対することを決定した。いわゆる改革派の日本帝国主義者として非常事態法の必要をかねてから主張していた民主党は、朝鮮半島への侵略戦争に身構える有事法案の具体的意味を知ってか知らずか、反戦平和運動に対して大裏切りをやってのけた。しかし、イラク派兵法案に対してはついに、米英のイラク侵略・占領の不当性・不法性に抗議する日本内外の反戦平和の運動と世論を無視することはできなかったわけである。
 これによって自民党など連立三党は、与党のみによる強行突破の動きを強めている。なんとしても、国際反革命同盟体制の主柱であるアメリカ帝国主義に忠勤ぶりを示さなければならない、そして日本帝国主義として各国の中東への軍事的進出に遅れを取ってはならないとして、自衛隊海外派兵の質的・量的な飛躍を実現しようとしているのである。
 イラク派兵法案阻止は今、民主党なども含めた大きな反対運動の陣型が客観的には可能となっている。小泉政権の強行突破策は、仮に衆議院段階を突破し得たとしても、反対運動の広がりによっては政権危機につながっていく可能性がある。
 小泉内閣は、改革による日本経済再建を主眼としてきたが、このかん実際やってきたことはアフガン侵略への自衛艦派兵、米英のイラク攻撃への突出した支持、日朝首脳会談の成果を自ら反故にする反「北朝鮮」キャンペーン、そして画時代的な有事法の制定という戦争政策ばかりである。他方、内政では大失業・デフレ不況はひどくなるばかりで、ブルジョア一般からも呆れられているのである。そのくせ、イラク派兵だけ一生懸命ですか? 小泉政権の命脈は尽きつつある。残された時間は少ないが、小泉政権もろともイラク派兵法案を粉砕できる情勢は存在するのである。
 仮に法案が成立させられる事態となったとしても、イラク派兵阻止の闘いは続く。イラク人民の闘いと連帯し、秋の派兵部隊本隊の派兵が不可能となるような政治情勢をかちとることだ。

 相手国同意もなく戦闘に身構えて

 さて、イラク派兵法案は、一九九二年のPKO等協力法制定以降行なわれてきた自衛隊海外派兵を大きく発展させる内容となっている。派兵の軍事的内容としては陸海空の三軍が合同した派兵部隊となっており、連携した戦争遂行の態勢となっている。予定の装備には、実質的にはヘリ空母として使える大型輸送艦「おおすみ」や、戦車タイプである無反動自走砲も入っている。
 この派兵の政治的特徴としては、派兵先の相手国の「同意」が実質的には不要となっていること、また武力紛争が終結していない対象地域への派兵であることだ。PKO派兵では「相手国同意」「停戦状態」等が当然の前提となっていた。しかし、米国のアフガン侵略を支援するためのテロ特措法によるアラビア海への派兵では、後方支援なら戦地でも派兵できるとされ、今度はその上に「同意」要件が崩されている。
 法案は、「当該外国の同意がある場合に限る。ただし、イラクにあっては、安保理決議1483に従ってイラクにおいて施政を行なう機関の同意によることができる」としている。対象地域が紛争状態であっても、そこを占領している勢力が来てもよいというなら派兵できる、イラク国民およびそれを代表する政府の同意など不要としているのである。動乱地域へ出兵せよ、権益を確保せよ、という典型的な帝国主義的派兵の開始ではないか。
 また今回も、「武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない」としつつ、自衛隊員その他と「自己の管理下に入った者」の防衛のためなら武器を使用できるとしている。イラクでは、米英占領軍の撤退を求めるイラク人民による武力的・平和的闘争が高まり、毎日のように侵略者がせん滅されている。自衛隊イラク派兵は、初めて自衛隊員に戦死者が出る、自衛隊が相手国軍民を殺害するという事態が予想されているのである。
 このとんでもない事態を引き起こす、この法案の前提は、五月二十二日の国連安保理による「イラク制裁解除決議」である。この決議1483は、米英の国際法違反のイラク攻撃そのものを明示的に追認したとまでは言えないが、占領の既成事実を承認し、占領当局の権限や国連との関係を規定したものであり、結局米英の侵略・占領を正当化するものとなっている。イラク攻撃に反対してきた全世界人民が、こうした安保理決議を認めず糾弾することは当然であるが、各国連加盟国政府としても最低この決議の脱法性、「勝てば官軍」的性格に疑問を呈するぐらいは当然だろう。
 しかし日本の政府は、この決議に「勝ち組」の当然の権利として飛びつき、自国の軍隊を大々的に世界に進出させようとしている。法案では、派兵期間は四年間を想定しており、延長もできることになっている。日本帝国主義はアメリカ帝国主義とともに、「中東民主化」の長期泥沼戦争に突入しようとしているのである。
 イラク派兵法案を必ず阻止し、小泉戦争内閣を打倒しよう!