「骨太方針・第3弾」
  財源移譲を値切る「三位一体改革」
   地方住民へ犠牲転化狙う

経済財政諮問会議は、六月二十七日、「骨太の方針・第3弾」を決定し、これは翌日閣議決定された。この中で、国と地方の関係を改革するいわゆる三位一体のおおよその方向性が示された。三位一体とは、「小泉改革」の一つで、国から地方への税源移譲、地方への国庫補助金の削減、地方交付税の見直しを一体で行うというものである。
 「骨太の方針・第3弾」で決まった枠組みは、税源については、来年度から06年度までに補助金を四兆円削減し、この内、人件費など義務的経費は全額、それ以外は八割を地方に移譲するというものである。地方交付税については、財源保障機能を全般的に見直し、縮小するが、地方自治体間の財政力格差の調整機能は確保するとしている。
 戦前は、中央政府の地方支配は内務省が一手におこなっていた。それが、敗戦で内務省が解体され、戦後の地方支配は、大蔵省の財政支配と各省官僚の地方への人材派遣などで行ってきた。しかし、新自由主義の流れが強まり、何らかの「地方分権」をせざるを得なくなった。だが、官僚や自民党などの強い抵抗もあり、また小泉政権自身、地方支配の新たな方法とメドもたたないままに、国と地方の関係の改革、とくに財政問題は、これまでのびのびとなってきた。だが「構造改革」を看板として首相になった小泉政権が、形だけでも何らかの改革姿勢を示さざるをえない。
 国と地方の関係の改革は、九九年七月に成立した地方分権一括法によって、法律的には、従来の上下関係から対等な関係に変えられた。しかし、従来の「三割自治」といわれた財政自主権の欠如は、依然として変わらぬままで中央支配がつづき、地方自治体や住民自治を拡大しようとする勢力からは、この点について厳しい批判がつづけられてきた。
中央政府による地方政府の支配は、基本的に法的規制の下で、財政を通じておこなわれてきたが、その際、国庫補助金や地方交付税の財源保障機能(地方交付税の主な機能は、自治体間の税収格差を調整する「財政調整」の機能と、標準的な行政サービスを全国で確保するための「財源保障」の機能)などは、歴代政権の景気政策にも大いに利用されてきた。したがって、そのような仕組みからはさまざまな矛盾が蓄積されてきた。たとえば、地方の実情も知らない中央官僚が作成した画一的な財政配分(それは使途が上から規制されている)は、地方住民の切実なニーズとは、しばしば齟齬をきたし、無駄な事業がおこなわれ、自然を破壊するものであったりした。また、巨額な財政資金の地方への分配を巡って、中央・地方の官僚・政治家、そして圧力団体の癒着により、贈収賄の温床ともなった。そして、このようなメカニズム自身が、政治を利益誘導型政治に歪曲し、地方自治の発展を抑圧してきた。
 今回の「骨太の方針・第3弾」は、はたしてこれらの諸矛盾を解決するものであろうか。それは補助金削減や税源移譲の具体的な対象が一切明らかにされていないことに示されるように、解決の「先送り」をまたもや行ったにしか過ぎない。肝心の公共事業の削減には全くふれず、来年度予算編成での自民党などとの折衝時に「先送り」された。
 国会政治で、小泉政権は、利益誘導型政治を担ってきた自民党を頼りにせざるを得ないため、その改革なるものは空洞化せざるを得ない。したがって、その改革なるものは勢い「弱いもの」にしわ寄せとなる。今や国家財政再建の展望が失われる(公債の歳出入を除いた基礎的財政収支〔プライマリーバランス〕は、小泉政権になってその赤字が拡大している)中で、小泉政権は三位一体の改革等と言いながら、その尻拭いを地方政府に押し付けようとしているのである(それは結局、地方の住民にしわ寄せされる)。だからこそ、義務的経費いがいは8割しか税源移譲しないのである。
 それだけではない。首切り・リストラで大企業は肥え太っている反面、法人税収はますます低下し、また不良債権問題のもたつき、軍事費の増大などで、歳出は拡大している。そのつけを消費税など大衆課税の大幅アップにまわすことを策動してその準備を推し進めるなど、庶民の犠牲で財政再建全般をねらっているのである。
 三位一体改革なるものは、依然として掛け声だけである。むしろ地方への犠牲の転化を主にねらったものでしかない。(T)