有事三法案
 参議院で廃案に!たたかいは続く
  戦争体制の整備・発動阻止へ

 有事関連三法案が五月十五日、与党と野党第一党・民主党との「修正」談合によって衆議院を通過し、六月十八日の会期内で成立されられる危険が高まっている。参議院で廃案にするため全力で闘うと同時に、仮に成立が強行されても、有事体制の整備・発動を許さず有事法制を無力化していく闘いを進めていく必要がある。
 野党第一党と与党がいわゆる安全保障問題の重大法案で一致賛成したことは、小泉が言うように確かに「歴史的」ではあった。このかんPKO等協力法、周辺事態法ではこの一致はなかった。このことは、かっての社会党・総評勢力にとって変わった民主党と連合主流の勢力が、日本の帝国主義的利益を安全保障する立場を自民党などと共有している姿を明瞭に示すものである。このかん民主党が周辺事態法に賛成せず、対テロ特措法などで修正要求をしていたのは、おもに手続き上の国会権限や政府の対米協力の無節操さを問題視していたにすぎない。
 民主党は当初、武力攻撃事態法案の中心である対処手続き部分の全体に渡って、いわゆる国民保護法制が整備されるまでの間は凍結とする等の修正を求めていた。にもかかわらず、政府の自治体首長に対する代執行権の凍結のみで手を打っている。無意味な修正要求であるが、それ自体格好だけであり、結局は総動員体制の一環にしかならない「国民保護」法制の早期制定を加速させる役割を果たしている。
 今春のイラク反戦の盛り上がりは、ブッシュ政権の先制攻撃戦略の危険性をばくろし、本来は有事法案阻止に有利につながるはずであった。しかし「北朝鮮核問題」が脅威キャンペーンとして宣伝されることを梃子に、「戦争とテロ」の時代という雰囲気をあおり、「万一の事態に備えるための法案、あとは発動しなくてすむ外交を」というペテン的情報操作によって、反対運動の広がりが影響を受けたことは否定できない。
 そうしたペテンにもかかわらず、有事法案が戦争促進法、緊張激化法であることは疑い得ない。有事法案は、PKO等協力法や周辺事態法と異なり、日本が武力行使を行なうということを前提とした法である。周辺事態法は、「対応措置は武力行使に当たるものであってはならない」と明記して米軍に対する後方支援を基調とし、自己防護に武器使用を限定したものであった。少なくとも字面はそうなのである。しかし有事法案は、「武力攻撃予測事態」を含めて「武力攻撃は必要とされる限度においてなされなければならない」と明記し、海外での自衛隊が交戦状態にはいったり、大使館や進出企業が攻撃されただけで、更にはそれが予測されただけで戦争遂行体制に突入できることになっている。
 この戦時体制確立の法案は、強制力の面で周辺事態法と大きく異なっている。周辺事態法では自治体に対して「協力を求めることができる」とし、国以外の者に対し「協力を依頼することができる」とするのみであったが、有事法案では、自治体やいわゆる指定公共機関に対して「協力する責務を有する」として代執行権も明記し、国民全体に対し土地・物資の戦争利用業務について罰則をもって強制している。それ以外の戦時徴用については、今回は罰則を設けていないが、企業の業務命令を労働者が拒否することによって解雇されても人権侵害には当たらないと政府は公言しているのである。
 有事法案が、画歴史的な悪法であることは明らかである。非常事態法一般の是非が問われているのではない。問われているのは、ブッシュ政権の戦争政策に組して国益まもろうとすることの是非である。そのような国益は、我々労働者に失業・賃下げを強制し、ぼろ儲けしているブルジョアジーの利益ではあっても、日本人民の利益ではない。日本の「戦争のできる国家」作りは、朝鮮半島とアジアの緊張激化要因であり、戦争・テロを招き寄せるものでしかない。
 仮に有事法案が成立してしまったとしても、それは民主党の犯罪的対応という国会裡のことであって、国民の多くがこれを容認している訳ではない。世論操作を打ち破りつつ、今後の対処法制をはじめ有事体制の実質を作らせない闘いが問われることとなる。労働組合にとっては、戦争協力業務を拒否する労働者の権利を確立する闘いなどが問われるだろう。そして日朝正常化交渉の即時再開など、有事法制の口実をなくしていく国際環境のための闘いを広範なものにしていく必要がある。