4・19大阪
 当事者は、心神喪失者医療観察法案に断固反対する
  「地域で生活」に逆行の差別・治安法

 このかん関西地方でも「医療観察法案」に反対する運動が活発に続けられている。四月十九日の午後には大阪市・アピオ大阪で、「心神喪失者医療観察法案、何がどう変わるの?対象者が受ける医療は?地域での暮らしや人間関係は?」と題された集会が、大阪精神障害者連絡会、いこいの場兵庫、京都ユーザーズネットワークの主催で持たれた。
 まず大阪弁護士会の位田浩さんが、心神喪失者・耗弱者の扱いが、現在の刑事手続きから法案の「裁判所による処遇決定」などによってどう変わるかの説明を行なった後、法案(修正案)の問題点を次のように批判した。@法案では、「病状改善」は「重大な他害行為の再発防止」の手段にすぎず、その目的は治安にある。A精神障害者の犯罪率は一般より低いにもかかわらず、法案は差別と偏見に基づいている。再犯しないかどうかの判断が已然要件となっている。B法案の処遇内容は隔離、監視である。C弁護士選任が限定されるなど、手続き上の権利保障が不充分。Dもし法案が成立したら、適用対象が軽微な事件にも、さらには「処遇困難者」へ拡大されていく危険がある。
 次にパネルディスカッションが、精神障害者の当事者中心に行なわれた。
 一般の人が拘束されないのに、障害者だけが拘束されるのはおかしい。五年前からノーマライゼイション七ヵ年プランで地域で生活するということが端緒についたばかりなのに、この法案は逆行している。施設を作ろうとすると地域住民の反対を受けるし、長期入院者は社会復帰ができない。ちゃんと医療があれば、この法案はいらない。厚生労働省交渉のとき坂口大臣は精神障害者の再犯率が低いことを認めながら、なお法案を通そうとしている。
 精神医療では、レセプトが八千点で他科よりずいぶん低い。現在の社会では、精神障害者は働けないようにされており、入院させて棄民政策をとっている。コンクリートに閉じ込めることは、精神障害者への差別・偏見を煽るものだ。法案が通ると、特別な精神病院ができ、現在の「処遇困難者」は特別病院へ送られ、民間精神病院は大歓迎するだろう。措置入院の実態では五十年を越える人がいて、病院は「治療、いやしの場」になっていない。私たちは退院し、地域で生活できるよう要求してきた。法案には断固反対である。
 集会では、大阪精神障害者家族会連合会理事会から、四月十五日に抗議声明を出したことが紹介された。その趣旨は、この法案は、医療の問題に司法が関わり、精神障害者と触法行為の結びつきをことさら印象付け、差別と偏見を助長する。刑法は触法行為のみを罰するものであるに関わらず、「再犯のおそれ」というあいまいな基準をもってまでして、刑法の枠を拡大するものだ。付則「精神医療の水準向上」は、法案の成立なくして精神医療水準の向上はない、と読み取れるが、精神科特例の撤廃など現行の低い水準の改革がなされるべきだ、としている。
 最後に参加者一同は、参議院で審議されようとしている「医療観察法案」の廃案を求め
てさらに活動する提案を確認して、集会を終えた。(関西H通信員)
 
≪追記≫医療観察法案は連休明けの五月六日には、参院法務委員会で審議入りが行なわれようとしている。これに対し、予防拘禁法を廃案へ!共同行動実行委員会の闘いとしては、十三日に国会行動、二七日・午後六時半には東京・青陵会館で「つぶせ!予防拘禁法5・27全国集会」を行なう。