波崎事件
 刑務所の人権侵害は「死亡帳」でも明らか
 
冨山さんの獄殺許すな

 昨秋以降、名古屋・岡山・高松刑務所など各地の刑務所で獄中者への「革手錠」使用等による暴行・拷問・致死事件が明るみに出たが、さらに名古屋刑務所では獄中者に高圧放水を当てて肛門裂傷で殺害するという信じられないような事件が起きていたこと(〇一年十二月)が発覚し、ようやく今年二月になって特別国家公務員暴行陵逆致死容疑でトカゲの尻尾切り的な看守逮捕が行なわれた。
 日本の監獄の実態は、獄中者の人権侵害ではどんな独裁国家にも負けない状態のままである。このかんの一連の事件では、起訴前や未決の獄中者処遇(代用監獄問題など)だけでなく、受刑者の処遇と人権という問題がクローズアップされたのである。
 いま一人の、四十年無実を叫び続けている死刑囚が重態にあり、東京拘置所で十分な治療を受けられないまま獄死を強制させられようとしている。その人は波崎事件の冨山常喜さんである。
 三月十六日、「無実の冨山常喜さんの獄死を許すな!波崎事件緊急報告集会」が東京・文京シビックセンターで開かれ、救援運動関係者や社民党の保坂展人衆院議員など数十名が参加した。
 集会では、波崎事件対策連絡会議の篠原道夫さんをはじめ支援者が、「当局は獄死を狙っているのではないか」、「ただちに獄外で十分な治療を」と訴えた。そして監獄法第四三条(病院移送)の適用申請を行なったこと、また獄外治療をかちとるための方策として恩赦の申請をすでに行なったことなどが報告された。
 また、このかん二回、国会で冨山さんの問題を追及してきた保坂登人さんからは、名古屋刑務所事件の結果、法務省から「死亡帳」(過去十年に全国の刑務所で死亡した受刑者一六〇〇人のデータ)が国会に提出されたこと、その部分的な分析の範囲でも、不審死あるいは適切な治療を受けられずに死亡したとみられる例があることなどが報告された。
 さて波崎事件とは、一九六三年に茨城県波崎町で発生した毒殺とされる事件であるが、冨山さんは別件逮捕後一貫して今日まで無実を主張しており、えん罪殺人事件としては特徴的なこととして自白もなければ物証もないという事件である。にもかかわらず七六年最高裁上告棄却によって死刑が確定、以後一次・二次再審請求、異議申立てと四十年の闘いが続いてきた。しかし今、冨山さんは腎不全等の悪化によって獄死の危機にある。
 帝銀事件では、確定死刑囚にも監獄法第四三条が適用されたことがあるが結局、無実の平沢さんは獄死を強制された。
 日本の国家権力は死刑制度を廃止せず、かつ未だに死刑執行を続けているが、えん罪を訴える死刑囚に対しては、政治的に判断して獄死に追い込むということか。冨山さんの獄殺を許してはならない。(東京W通信員)
◆ 波崎事件に関心を持たれた方は、左記をご覧になってください。
http://www.asahi-net.or.jp/~VT7N-YND/