パート労働法改正

 資本家側の意向に沿う厚生労働省・労政審雇用均等分科会

   均等待遇の法制化実現を

 労働政策審議会雇用均等分科会は、昨年の九月から「通常の労働者とパートタイム労働者との間の『働きに応じた公正な処遇』」のための審議を行ってきた。同分科会ではこの間、労働者側が一九九三年制定のパートタイム労働法の抜本的改正による均等待遇を求めてきた。だが、使用者側は、強制力のあるどのような基準(均等待遇のための)の立法化にも反対し、パートの雇用は企業の裁量にまかすべきと主張して、対立が続いてきた。そして、同分科会は今年の一月三十一日になって、「今後のパートタイム労働対策の方向について」という報告案を出した。だがその内容は、「通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を指針に示すことによって、その考え方を社会的な浸透・定着を図っていくことが必要」というもので、最終的には使用者側の意向に沿うものでしかない。
 政府・厚生労働省サイドの問題は主要には二つある。一つは、「均等」ではなく、「均衡」としていることである。「均衡」というのは、資本家階級の主張であるが、それは彼らの考えるバランスでしかなく(つまり差別は当然あるべきだという意味でのバランス)、たとえばEUが九七年に定めた(「パートタイム労働に関する均等待遇指令」)のように、パート労働者の賃金を「フルタイム労働者と時間比例で均等にする」こととは全く掛け離れているのである。二つ目は、これも資本家階級の主張であるが、パート労働者の均等処遇を法制化しないという方針である。だが単なる「行政指導法」でしかない現行パートタイム労働法下の現状は、この一〇年、格差・差別は拡大しているのであり、企業の裁量にまかせている限り、パート労働者など非正規労働者の賃金・労働条件は、改善どころか悪化しているのが実情である。
 日本政府のこのような態度は、ILO一一一号条約(雇用と職業における差別撤廃条約)も、九四年採択のILO一七五号条約(パート労働者の労働条件を比較可能なフルタイム労働者のそれと同等とする「パートタイム労働に関する条約」)も、未だ批准していないという事実に、まさに符合するものである。
「行政指導法」でしかない現行のパートタイム労働法を根本的に改正し、企業に対して圧倒的に不利で不平等の立場にあるパートタイマーなど非正規労働者を保護し、権利を確立する「権利法」「契約法」に変えることが切実に求められている。それなくして資本家階級は、決して差別を進んで自ら無くすことは、ありえないであろう。実際に、各地の現場で非正規労働者の組織化と闘いをつよめるとともに、パートタイム労働法の抜本的改正が強く求められてる。(H)


  2・28パート・有期契約労働者の集い

 差別構造の全面的改編を

 二月二十八日、東京の日比谷公会堂で、連合主催の「パート・有期契約労働者の集い」が行われた。集会にはパート労働者など約一〇〇〇名が参加したが、その四分の三は、女性である。
 集会に先立って、オープニング・セレモニーとして、ユニオン座(コミュニティ・ユニオン関西ネットに参加するユニオンのメンバーなどで構成)による寸劇「あんばらんす」が、上演された。劇は、正規労働者の苛酷な労働の上に、女性正規労働者の失業や女性パート労働者などへの劣悪な労働条件を強いる資本の雇用のあり方を告発するもの。
 集会は、連合福岡ユニオンの永元美子さんの司会で進められた。集会ではまず笹森清連合会長、菅直人民主党代表、昨年十月結成された「パート・サポート市民会議」の山本博世話人代表から挨拶がなされた。
 ついで、林誠子・連合パート労働プロジェクト座長から、情勢報告として、この間の取り組みの経過、労働政策審議会雇用均等分科会の進捗状況、そして連合と民主党の討論の上でまとめられつつある「パート労働法」の改正を議員立法で推し進めることなどが語られた。連合では、この間パートなど非正規労働者の組織化が重視され、多様な雇用形態で働く人々の雇用安定・処遇改善に向けた「パート・有期契約労働法」の立法化のための作業が進められている。
 集会は次に、UIゼンセン同盟・マルエツ労働組合組合員の松尾千代枝さん、サービス・流通連合・全ピーコック労働組合中央執行委員の飯田峰子さん、自治労・臨時非常勤全国協議会準備会幹事の中谷紀子さんから、それぞれのこの間の取り組み状況と決意が報告された。
 集会は最後に、連合東京・中南地協パートユニオン副委員長の山下英子さんから、「つくろう!均等待遇、すすめよう!仲間づくり」と題した集会アピールが提起され、採択された。
その後、集会参加者たちは、スローガンいりの風船やボードをかかげて、銀座方面にむけたパレードをおこなった。
 連合のこの種の集会は、一昨年からはじめられ、今回が第三回目である。連合幹部がどのようなキッカケで、またどのような思惑でパート労働者など非正規労働者の組織化を重視するのかは別にして、このような活動は大いに歓迎されるべきことであろう。集会には全国の労働者が参加していたが、中でも自治労の組織動員など、自治労が熱心に取り組んでいる様子が印象的であった。ただ、残念なことは集会が全体的にお行儀がよく、これでは女性パート労働者のほんとうの不満や怒りが外部の人々に理解されるのか、心もとないことであった。
 これまでの日本型雇用・賃金政策では、特に大企業正規労働者への年功型賃金、家族丸ごと企業に依存させられる家族型賃金の上に、多くの女性労働者が「周辺労働力」として差別され、搾取されてきた。このことを理解し、全面的に改編しない限り、女性労働者への賃金・労働条件の差別は根本から解決されない。こうした構造を果たして、連合幹部、そして連合の中心組合である大企業労組の幹部と組合員はどの程度自覚しているのであろうか。(東京T通信員)