病者本人と行き違う全家連

   露呈した

  全国精神障害者家族会連合会と

  厚生労働省とのゆ着構造


 全家連(全国精神障害者家族会連合会)という団体を、読者はご存知だろうか。今、精神障害者にたいする予防拘禁・不定期拘禁=保安処分をすすめようという医療観察法案が国会で審議されているなか、一部マスコミで、この団体の巨額のカネの不透明が指摘された。
 「補助金から二億三千万円を人件費に流用」、「補助金で一千四百万円の裏金を作り、厚生省職員へ渡す」などの報道である。(朝日新聞十一月七日、十一日)
 そもそも全家連は会員十万人を超え、年間予算二十億円、全国の精神障害者の多くが通所する共同作業所の運営などの、精神障害者福祉にあたる各地の家族会の元締めである。この一点をとっても、精神障害者の福祉や運動や生活にもきわめて大きな影響力をもっている。少なくとも就労していない精神障害者で、全家連の名前を知らない人はいないといってもいいだろう。そして年一回の全家連大会は、東京でやるなら武道館、というほどビッグな団体なのである。
 全家連は、精神障害者にとっては、実は困った団体でもある。手帳制度、移送制度等々、「当事者は病者ではなく家族」というこまった理念から、いわば病者本人ではなく、家族の利害を集約し、世論化する団体であり、病者本人の利害とはしばしば行き違いさえするのである。
 こうした団体が厚生労働省とねんごろになり、自ら経営するリゾート施設に厚生官僚を天下りさせているとなると、事態は相当深刻である。
 長年つちかった官民ゆ着の構造は当然にもカネの問題がつきまとう。マスコミが報じたのはその氷山の一角であり、内部告発し、罷免された荒井元事務局長は、全家連の実態をバクロするバンフレットさえ作っているのである。
 精神障害者が家族から自立し、立ちあがる時、全家連はいったいどこへ行くのだろう。(A)