全世界人民の反戦運動と連帯し、小泉参戦内閣打倒を

  全力でイラク侵略開戦阻止を


 アメリカ帝国主義のイラク侵略戦争が秒読み段階になってきた。イラク侵略戦争を阻止せよ! 日本の侵略戦争参加を許すな! この闘いが年末から来春にかけて決定的に重大な情勢となっている。
 十一月八日、イラク問題についての国連安全保障理事会決議が全会一致の形で採択され、同二八日には国連査察団による対イラク査察が再開された。この国連安保理決議1441は、査察は無条件・無制限なものであるとし、「義務違反が続けばイラクは重大な結果に直面するであろう」と武力行使の脅迫を行なっている。またイラクは決議採択から三十日以内に、大量殺傷兵器開発計画についての完全な申告を安保理などに行なうこと、また国連査察団は査察再開の六十日後に、安保理に報告を行なうこととされている。
 イラク政府は十三日、国連事務総長に事実上決議を受諾する書簡を送り、「決議は悪意を持つ国々による悪い内容だが、イラクは脅威から国民を守るために決議に対処する」として査察団受け入れを表明した。また決議から三十日たった十二月八日、核・化学・生物兵器など大量殺傷兵器は開発していなかったし、存在もしていないとする申告書を査察団に提出した。
 今後、この安保理決議が履行され、査察が進行・終了し、「疑惑」が解消されれば、米英によるイラク全面攻撃の危険は無くなっていくのか。そのように考える者は一人もいない。戦争屋ブッシュにとっては、査察自体が目的なのではなく、彼が「悪の枢軸」「ならず者国家」と決め付けるイラクの現体制を打倒すること自体が目標であることを、多くの人が知っているからだ。安保理決議1441も、米英とロ・中・仏との駆け引きによって米国にイラク攻撃の白紙委任を与えたものとはなっていないが、ブッシュにとってはイラク攻撃への一つの段取りであるにすぎないものである。
 この点について、共和党の有力者といわれるクエール元副大統領は、来日中の十一月二十日、「湾岸戦争とは違い、今回は体制の変革自体が目的だ」と明け透けに語っている。(また同様の政治路線として、十一月十一日にキャンベル元国務次官補は、「ブッシュ政権は、最終的には金正日体制の崩壊を目標にしている」と語っている)。
 イラクのフセイン政権は一九九〇年と違って今回、近隣国に侵攻したわけでもなく、勿論ニューヨークを爆撃したわけでもない。しかしプッシュは、それでもフセイン体制を打倒する戦争へ持ちこみたい。情勢は、ブッシュが今後、イラクの申告書に虚偽があるなどとして因縁をどのようにつけてくるか、どのように安保理諸決議を勝手に解釈して戦争を開始するか、という瀬戸際へ近づきつつある。
 安保理決議1441は、何ら侵略行為を現在的に行なっていない一つの国連加盟国に対して、他の国連加盟国が武力攻撃を仕掛けることを正当化し、またイラク以外に少なからぬ大量殺傷兵器開発の疑惑国や新規の核武装国が存在するにもかかわらず、特定の国連加盟国(米国)の世界戦略に引きづられ、イラクを差別的に扱って攻撃対象とするものであり、国連憲章を始めとする国際法に違反するものである。
 このようなブルジョア国際法にも違反する先制攻撃正当化の決議は、本来他の安保理常任理事国の拒否権発動によって葬り去れるべきものであった。しかし、それが全会一致で可決されたという事実は、アメリカ帝国主義を主柱とする国際反革命同盟体制に他の主要国も組みこまれ、あるいは協調しているという世界情勢の特徴を示すものである。このことは、米帝の軍事的優位に他の主要国が屈しているというだけのことではない。このアメリカ一極支配的現況には、各主要国がグロバール資本主義の支配秩序維持を共通利害としているという経済的基礎があるからである。
 この安保理決議は、九月の米国・国家安全保障戦略における対テロ・対「ならず者」国家への先制攻撃戦略に奉仕するものとして、厳しく批判する必要がある。ところが日本共産党は、「決議は全体として、戦争回避を願う国際世論を反映して、自動的な武力行使を排除するものとなった。」「国連の枠組みのなかで、問題を平和的に解決する可能性をひらくものとなった」(十一月十三日・志位委員長)などとして、決議を支持している。こうした見解は一部分を見て全体の基調を見ない謬論であるとともに、世界人民の反戦運動の発展に主要に依拠するのではなく、「国連の枠組み」に従属させる有害な見解である。
 イラク戦争を止めることができるのは、米本国人民を始めとする全世界人民のイラク戦争反対運動である。イラク攻撃に否定的な常任理事国や中小の国連加盟国の政府も、この世界的反戦運動の側に立つならば、イラク戦争を阻止する上でその役割を果たせることになるだろう。米国の反戦団体であるANSWER(戦争と人種差別を止めさせる共同行動)などは、イラク戦争反対の世論を反映しなくなった共和党・民主党の議会に対峙し、反戦国民投票の取り組みと、来年一月十八日・十九日に開戦阻止の大デモンストレーションを準備し、この日の世界同時行動を呼びかけている。一月という時期でのイラク戦争反対運動が決定的に重要であり、日本でもすべての活動家が具体的行動を用意する必要がある。 
 一方、小泉連立政権は十一月十九日、対テロ特別措置法での米軍支援基本計画の六ヵ月再延長を国会に掛けずに閣議決定し、さらに十二月四日、閣議決定ですらなく首相小泉と防衛庁長官石破の独断で、自衛隊イージス艦のインド洋派遣を強行に決定している。
 これらが米帝の対イラク開戦への強力な支援、参戦行為であることは明らかである。イージス艦の今月中旬出航を許してしまえば、年明けの開戦に間に合うこととなる。イージス艦は、ペルシャ湾への米軍の集結をインド洋で穴埋めするとともに、その高い情報収集能力がイラク攻撃の米軍と連結されると考えられている。これまでも自衛隊艦船は、ペルシャ湾のカタールを寄港地としている。公明党のようにこれまでの給油艦と通常護衛艦ならよいというわけではないが、イージス艦派遣は後方支援すら越えた実戦参戦、集団的自衛権の行使そのものではないか。与党・公明党はイージス艦派遣に断固抗議し、政権を離脱せよ。
 小泉政権がブッシュ政権のイラク攻撃に支持・不支持の明言を避けながら、政権内の異論を突破してイージス艦派遣決定を強行したことは、政権の強さではなくその弱さ、支離滅裂さを示している。有事法制三法案は、有事定義をめぐる混乱した修正案と戦争動員を強化する「国民保護法制」追加案の反動的姿をさらけ出し、今臨時国会でも継続審議扱いにならざるを得なくなっている。また小泉政権の経済運営は、竹中「総合対策」や道路公団民営化をめぐっても支配層内部の矛盾が噴出し、絶望的状態に陥っている。
 イラク攻撃反対、日本の戦争協力反対、有事法案廃案の大運動を今こそ盛り上げ、イラク侵略を阻止するとともに、小泉連立政権を打倒しよう。