都労連

「ダブル削減」を事実上阻止

  ―問われる民間・未組織、都民との連帯方向


 全国的に自治体労働者の賃金切り下げ攻撃が激化している情勢下、注目されていた東京都の賃金改定交渉が十一月二十日未明、妥結した。
 都労連(都を雇用主とする六単組で構成)と都当局とのこの妥結は、確かに賃金の切り下げ水準としては「ダブル削減」を事実上阻止したものとなっている。が、内容的には都人事委員会のマイナス勧告とこのかんの都独自の賃下げとを合わせた削減であることに変わりはなく、また人事制度・昇給制度については業績主義的方向への見直しに踏み込まれたものとなっている。業界紙『都政新報』は「労使引き分け」と報じたが、二十日のストライキ突入を構えた都労連の闘いの成果を反映するとともに、厳しい結果となっていると見るべきである。
 闘いを構えることによって、マイナス勧告1・64%プラスこれまでの4%の計5・64%賃下げという事態は阻止され、1・64%プラス2%の計3・64%の賃下げに押し止められ、また勧告が求めていた今春からの遡及実施は阻止された。しかし、その2%の都の「内部努力」としての賃金カットの期間は、これまでの合意であった来年八月を越えて再来年三月まで延長される妥結となっている。なお今年三月、都労連は4%賃金カットの来年八月までの延長を呑まされたばかりであった。この責任を取る形で、矢澤賢氏(東水労)が都労連委員長を辞任し、増渕静雄氏(都庁職)が新委員長となる経緯があった。
 この妥結を受けて給与条例の提案となる十二月都議会では、賃下げが4%内になっているのはおかしいとか、もっと賃下げ期間を延長せよ、などの攻撃が予想されるが、都で働く労働者と民間労働者の連帯の道をおしひろげ、公務員と民間での賃下げ競争の現況を断固はねかえしていく必要がある。
 ひとつは、来春の統一地方選挙での都知事選をみすえ、石原都政打倒のための労働者・
都民の広範な共同戦線を作るべきである。都知事石原慎太郎は、日本人拉致事件を利用して北朝鮮との戦争をあおっているような極右反動分子である。戦争攻撃と賃下げ攻撃、労働者抑圧は一体である。都で働く労働者が、平和と人権の闘いの先頭に意識的に立って、石原を辞めさせたい多くの都民の共感と連帯を獲得するチャンスである。
 またひとつは、自治体労働運動の方向として、失業情勢をふまえつつ民間中小・未組織労働者との具体的連携を図っていく政策を持つべきである。自治体が民間と契約する仕事での適正な賃金を保証させる闘い、また、正規職員のサービス残業撲滅と残業規制をすすめるなかで非正規職員の待遇改善を求め、さらに短時間公務員制度とその雇用増大を求めていく闘い等を、広く社会的にアピールして進めていくべきである。
 前者の闘いは、リビング・ウェイジ(生活保障賃金)条例の制定を自治体に求める運動として、全港湾や最近結成された全国ユニオンなど民間中小の側から提起されているものであるが、自治体労働者の側から応えるべき課題となっている。当局との交渉議題としては当面難しい課題であっても、自治体労働組合の政策としては明確にすべき課題ではなかろうか。
 後者については、ありうる形でのワークシェアリングについて労働者側の方針を持つということである。公務員の賃金を下げて非常勤を拡大することが自治体ワークシェアだ、一般的には、労働者全体の賃金を下げて総パート的状態にすることがワークシェアリングだとする風潮があるが、総資本が総労働に対して総額賃金抑制を強め、雇用全体を不安定化させる攻撃と言うべきものである。こうした風潮に妥協しないとともに、一方では労働者の連帯をひろげる上で必要な改革案を持つ必要があるだろう。
 都労連の闘いも、官・民、組織・未組織の労働者を分断させる宣伝が財政危機・失業情勢下いっそう強められるなか、戦略的な論議が必要になっているのではないだろうか。(F)
 
  

11・15石原都政にNO!市民の集い

  来春 石原落選へへ広く連携を


 在日外国人差別・女性差別・障害者差別の露骨な発言をくり返し、排外主義をあおり立てる都知事石原に対しては、マスコミも及び腰である。こんな中、十一月十五日夜、東京の渋谷勤労福祉会館で、約一三〇名の労働者市民の参加で、「石原都政にNO! 市民の集い」が、同実行委員会の主催で開かれた。 
集会は、日本消費者連盟の富山洋子さんの司会ですすめられた。始めに海渡雄一氏(弁護士)をコーディネーターにして、五人のパネリストによるシンポジウムがおこなわれた。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏は、“石原はこの間の戦争国家への道を推進する一連の動きでのシンボルである。彼は、銀行税やジーゼル公害規制などのように、人間誰しもがもつ、嫌悪感に上手くツケ込み人気取りをしている。だがその実像は、障害者・在日外国人・女性などへの差別発言に見られるように、差別主義者だ。そして、石原の下で、強い者にはへり下り、弱い者には居丈高になる都幹部が作られている。”と批判した。
 都職員の丸子さんは、“石原都知事は、府中療育センターで、この子たちに人格はあるのと、露骨な差別発言をした。彼は優生思想と排外主義だ。彼は横山総務局長を引き抜いて副知事待遇で教育長にしたが、横山は新しい歴史教科書を養護学校で採択した。また〈心の東京革命〉などと言って、戦前の修身を現場に持ち込んでいる。”と報告した。
 都職員の坂東さんは、“石原都知事は、弱者切り捨てを平気でやる。特に福祉関係で。そのため今、中間管理職は良心の破壊でボロボロとなり、一年ももたなくなっている。抑止力が職員の中にもなくなっきており、このままだと若い人達がやっていけるか心配だ”と報告した。
 評論家の佐高信氏は、石原を臆病なタカ派(坊っちゃん)と規定し、それは安手の「自立主義」で、安手の「民族主義」だと、批判した。
 一橋大学教授の渡辺治さんは、“石原都政は、基本的に小泉の構造改革と同じだ。具体的には、 職員の賃金カット・リストラ、小児病院の廃止など都病院を八つに削減するなど福祉の切り捨て、 公的資金の投入で、グローバル企業のための都再生などである。石原の特徴は、強い国家と、わずか一割の上層に依拠した差別社会のための施策である。”と分析した。
 シンポに続いて、「石原都知事の『ババァ発言』に怒り、謝罪を求める会」の土井登美江さんから、石原の女性蔑視発言に対して、公開質問状、都民への宣伝活動、さらに損害賠償訴訟への闘いの報告がなされた。
 全国自然保護連合の清水孝彰さんからは、自動車大気汚染裁判で石原は控訴しないといかにも市民被害者の味方のようなポーズをとりながら、他方では環状道路の整備推進をやったり、二〇〇〇年に自然保護条例の改悪、今年七月の環境アセスメントの改悪をするなど、公害を撒き散らしていると批判の発言があった。
 最後に都労連交流会の柳田真さんからは、都職員の四%賃金カットや人事給与制度の改悪と断固闘い、市民と一緒に都職員が石原都政を降ろすために闘う、と決意を語った。
 シンポでも発言があったように、石原都政による犠牲者がタコツボでいるのでなく、大きく広く連携・団結し、都知事選で落選させることが緊要なものとなっている。また、今回の集会で多くの都や区の職員が賛同人になったように、都区職員が職場での闘いとともに、広く東京の市民と討論し、ともに闘う機会を増やすことが大事なことであろう。
(H)