9・25日朝国交正常化を求める緊急シンポジウム

  拉致事件口実の排外主義許さず


 九月二五日、「小泉首相の訪朝をどう見るか?日朝国交正常化を求める緊急シンポジウム」が東京・文京シビックセンターで開かれ、約一五〇名が参加した。主催は、日韓民衆連帯全国ネットワーク。
 集会は、日朝首脳会談で拉致事件が明らかにされて以降、まったく筋違いにも在日朝鮮・韓国人への脅迫などが続発していることに抗議し、急遽「在日朝鮮・韓国人への暴力・嫌がらせを許すな!」のサブ・タイトルを掲げて開催された。
 シンポジウムでは三人のパネラーから、九月十七日の日朝首脳会談と日朝「ピョンヤン宣言」また日本人拉致問題などについてどのように考えるか、大局的な情勢をふまえつつ発言が行なわれた。
 前田康博さん(大妻女子大、元毎日新聞ソウル特派員)は、日朝双方にブッシュ政権の戦争政策への危機感があったのではないか、アジアの平和と朝鮮半島平和統一への一歩を拓く可能性を持ったものとして訪朝の成果を高く評価したい、と述べた。
 日朝友好運動の立場からは北川広和さん(「日韓分析」編集)が、ピョンヤン宣言の内容について、かっての日韓国交交渉時には全く無視されていた「植民地支配の反省」が入っている点などは前進面であること、また安保問題では九四年米朝ジュネーブ合意などを意味する「国際的合意」の遵守や、六者協議の可能性を含む「関係諸国間の対話促進」が入っている点など、案外、北朝鮮側の立場が多く取り入れられており、米国を牽制する意味合いをもっているとして高く評価した。また金正日氏自身による拉致事件の公表と謝罪は、改革開放への転換の決意を意味するのではないか、と述べた。
 日韓連帯運動の立場からは、渡辺健樹さん(日韓ネット共同代表)が発言した。日韓ネットは二十日に声明を発表し、「国交正常化交渉の再開を歓迎する」、「日本政府に侵略・植民地支配への誠意ある謝罪と補償を求める」、「北朝鮮政府に拉致事件被害者への誠意ある対応を求める」、「朝米はジュネーブ合意の履行を、日本政府は有事法制の廃案を」との四項目の態度を明らかにした。その二項目目では、「六五年日韓経済協力方式の援用は真の過去清算とはいえない」、「今回、北朝鮮側が日本政府の固持し続けている立場に譲歩し、共同宣言の確認に至ったわけだが、問題は依然として残されたままである」としている。
 なお、当初はパネラーとして朝鮮総連からの参加が予定されていたが、中止となった。
 会場との討論では、拉致問題に関する発言が多く出された。北朝鮮への拉致事件責任追及の姿勢が弱いのではないか。今回の拉致事件被害者家族の悲しみと「従軍慰安婦」など強制連行被害者遺族の悲しみは同じであり、国家により人権が踏みにじられる、そういう時代を終わらせる転機にしなければならない。人命の多少を比較する問題ではないが、朝鮮人強制連行被害の規模の巨大さを認識する機会でもあるのでは、等の意見が出された。
 集会は、日韓ネットの緊急アピール「在日朝鮮・韓国人への暴力・嫌がらせを許すな!」等を確認して終了した。(東京W通信員)