保安処分新法の審議入り糾弾

 故意に精神病者と犯罪を結合

  民主党の対案、日共の容認姿勢を批判する

 

 精神病者運動にとってきわめて重要な保安処分新法である、「心神喪失者等医療観察法案」(以下、法案)が、五月十五日閣議了承、十八日国会上呈された。いよいよ保安処分に反対するたたかいは、国会をめぐるものとなり、国会周辺も反対派のすわり込み等でにぎわっている。
 そして最も新しい情報としては、五月二十七日、衆院本会議で趣旨説明があり、審議入りした。
 われわれは、幾多の問題点や矛盾点を含むこの法案の強引な審議入りを、まず糾弾しなければならない。
 国会をめぐる情勢として、まずひとつ注目すべきは、第一野党である民主党が、対案をまとめたことである。この対案は、「再犯のおそれ」が予測可能であり、それに対して拘禁する、という形こそとっていないが、精神保健福祉法の充実をうたいながら、精神科集中治療(PICU)など、「精神病者と犯罪」を結びつけ、そのような犯罪をなくしていくために、電気ショックの見直しなどふくめ強烈な医療に道をひらくことによって、初犯段階から対処しよう、というものである。読者は気づかれるだろうが、どちらにしても、精神病者と犯罪を故意に結びつけていることでは変わらない。以上から、民主党案は決して「ましな対案」ということはできない。また、彼らが医療の充実を言うなら、何よりもとりあげなければならない精神科特例(医師・看護師などが他科よりもずっと少なくてもよい等とするもの)の撤廃を盛り込んでいないのも、重大な欠陥である。
 与党の法案の趣旨説明のなかで、森山法相は、精神科医の多数が声明している「再犯のおそれは予測できない」という見地をくつがえし、海外の保安処分例を引用している。また、昨年六月の池田小事件がこの法案の成立を加速させたことをみとめ、「社会防衛」ということさえまくしたてている。病者個人のための医療ではなく、社会のための医療ということは、すなわち、社会からみて、あってはならない病気、という治安的な観点がまる出しである。
 さて、今後の国会審議の動向であるが、民主党は先述の対案で、与党と対決していこうという路線であり、社民党は反対を表明しているが、注目すべきは日「共」が態度をあいまいなままにしていたが、ごくは最近、「再犯のおそれは予測できる」として法案を容認する姿勢を明らかにしていることである。彼らはこのかん、「病者団体」全精連をすべてといわないまでもかかえ込んでいることを考えれば、この容認姿勢の悪影響は大きい。
 全精連は、拘禁やむなしとまでいわないにしても、健常者と同等の裁判を受けさせる、という程度の論拠しか示せていない。そして犯罪を犯した病者は、病者運動の対象ではないかのように主張し、分断策に乗せられている。また、家族団体・全家連の動向とも微妙に連動している。彼らは「正面切って反対とはいいにくい」というところが本音なのだ。
 今国会の動向全般から言って、はたして法案は採択にまでいきつくのだろうか? 小泉らは「構造改革」の柱としての郵政関係法案そして治安法案としての有事法制と、法案を異例のスピードで可決させようとしており、さらに会期延長がかなり取り沙汰されている。 以上のことから、人民にとって歴代の中でももっとも危険な内閣といっていい小泉内閣の強引さからして、けっして予断はゆるされない。審議未了となれば少なくとも反対陣営の立て直しにはプラスになる。われわれは今国会廃案をあくまでも追及し、審議への監視を怠らず、国会をかこむ活動を強めていかなければならない。(A)