韓国人民とともに「アジア訴訟」弁論始まる

  小泉の靖国参拝を許すな


 去る二月二十二日、大阪地裁で昨年の小泉首相の靖国参拝に対し、国と首相、靖国神社に対し、参拝の違憲確認や今後の参拝差し止めを求めた訴訟の第一回口頭弁論が行われ、夜には報告集会が行われた。
 太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長の金景錫(キム・ギョンソク)さんは、「日本の遺族会と違い、韓国の遺族会は軍人・軍属でない人も含まれている。日本に徴用されたのは軍人・軍属だけではない。私は日本鋼管に強制徴用された。そのような被害者が寄り添ってできたのが遺族会だ。韓国各地で約千二百名の戦争犠牲者の生存者と遺族とで運営されている。生存者ははや八十歳に達し、遺族の多くも六十を越えている。私達は『日本政府イコール侵略者に協力した片割れ』との見方もされ、肩身の狭い思いを強いられてきた。その私達に対し、加害者である日本政府・企業からは一切の補償はない。生死確認すらなされず放置されてきた。その一方で、断りもなく勝手に靖国神社に合祀している。加害者と被害者が同じところに祀られている苦痛がわかりますか。そこに一国の首相が参拝した。被害者の傷口に塩を塗るようなものだ。」と述べた。
 更に真宗遺族会の菅原龍憲さんが、真宗の僧侶であり、遺児の立場より「権力はつねに国民を法で支配するだけでなく、神々を背景にして、自らの安定を得るとともに人々の内面収奪を謀つていく、これが国の権力構造だ。首相の靖国神社参拝は、国民一人ひとりの内面を支配し、国家にまつろわせる行為に他ならない。」と述べ、更に在日二世の洪仁成(ホン・インソン)さんが陳述した。
 公判終了後、エルおおさかにて報告集会が行われた。
 大阪の靖国違憲訴訟は、昨年十一月一日に提訴されたが、「アジア訴訟」と自ら呼ぶように、原告六百三十九名中、在韓の「日本軍」軍人・軍属遺族等百十九名が参加している。全国的には、大阪と同日に松山地裁に約六十名が提訴し、本年二月四十名が新たに提訴し、合計百五名が原告となっている。この訴訟には、真宗大谷派の寺院が法人として加わっており、去る三月一日に弁論が始まった。真大谷派は、各地で原告として取組みを行っている。
 また福岡地裁に対し、九州・山口訴訟団二百十一名が提訴、去る二月六日に全国にさきがけ第一回口頭弁論が開始されている。ここにも在日コリアンの原告参加がある。
 更に昨年十二月七日に東京で、二百四十四名が、更に十三日には千葉で、四十名が、同様の提訴を行っており、沖縄でも準備が行われており、六月二十三日には那覇地裁に提訴予定である。
 全国千名を越える靖国参拝違憲訴訟の提訴に対し、小泉首相は十一月一日、「話しにならんね。世の中おかしい人たちがいるものだ。もう話しにならんよ」と発言した。大阪、松山、福岡各地裁に提訴した原告のうち、在韓遺族六名を含む合計四十五名が、首相と国に対し、「人格に対する攻撃であり、裁判を受ける権利を侵害するもの」として、謝罪広告掲載と損害賠償を求める名誉棄損訴訟を昨年十二月二十五日におこしている。
 小泉首相は、一貫して戦没者に「感謝と敬意を」ささげることが当然であると公言してきた。「感謝と敬意」をささげて参拝する事が「あとに続くもの」を育成する─これが靖国神社の宗教的行為である。A級戦犯の合祀はその事の帰結であった。「感謝と敬意」ではなく、「謝罪」や「反省」や痛恨の思いを抱き戦没者に接する事は、個人の信仰・思想の自由として保障され、逆に「国の機関」としての宗教活動は、禁止されているのである。 小泉首相の、提訴に対する「おかしな人」発言を許すな。全国を貫き、在韓原告と共に小泉首相の靖国参拝に対し闘っていこう。   (関西・一原告)