3月小泉訪韓で「日韓投資協定」署名強行

日韓の連帯で国会批准阻止を


 三月二十一日訪韓した首相小泉は、翌二十二日韓国金大中大統領と、首脳会談をおこなった。共同記者会見で、次のことが明らかとなった。小泉は、米大統領ブッシュの朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)敵視政策の「悪の枢軸」発言に沿って、日韓の対応を推し進めようとしたが、南北統一の推進を望む金大中大統領との意見調整は出来ず、いわゆる「拉致疑惑」なるものを持ち出し、北への食料支援に難色を示した。
 しかし今回の小泉訪韓の最大の目的は、前述の事と密接に関係しつつ、東アジアにおける日帝の覇権の拡大、グローバリズムの顕著な表現である「日韓投資協定」に署名することと、さらに日韓自由貿易協定に踏み出すための共同研究会の発足を確認したことである。その露払いとして、歴史教科書・靖国問題の決着、ワールドカップ共同開催での最終確認事項(天皇訪韓については今回日本側は諦めた)があった。
 この「日韓投資協定」は、今回の署名まで99年から交渉がはじまっていたが、交渉内容は一切公表されずにいたもので、日韓民衆労働者による共同の粘り強い対政府交渉によって全容の一部が明らかとなっていった。
 協定内容は、“多国籍企業の権利憲章”として批判を受け頓挫したOECD内の多国間投資協定(MAI)を踏襲した内容となっている。それは内国民待遇や最恵国待遇の保証、パフォーマンス要求の禁止、紛争処理のための合同委員会の設置、相手国企業の収用の禁止などが盛り込まれる徹頭徹尾、多国籍企業のためのものであることが、明らかにされてきた。
 今回、署名後に「日韓投資協定」の要旨が発表され、その内容が判明した。
 第二条において、各締約国は自国内での投資及び事業活動に関し、他方の投資家及び投資資産に内国民待遇及び最恵国待遇を与える。第三条では、各締約国は裁判所の裁判を受ける権利などに関し、他方の投資家に内国民待遇及び最恵国待遇を与える。第九条では、各締約国は投資及び事業活動の条件として輸出、現地調達、技術移転など特定措置の履行を要求してはならない。第一一条、一方の投資家が他方の領域内で敵対行為の発生その他緊急事態により投資及び事業活動に関して損失、損害を被ったものは、現状回復、損害賠償、補償などの最恵国待遇および内国民待遇を与える。そして第二〇条では、両締約国は協定の目的達成のため合同委員会を設置する(3月22日・日本経済新聞)と協定文にもられている。
 それだけではなく、「今でも火炎瓶が飛ぶ激しい労使紛争に加え『高額な退職金、不透明な各種手当など古くからの労働慣行が高コスト要因になっている』(在ソウルの日本企業)。韓国が労働部門の改革にどこまで取り組めるかが、カギを握っている」(同日・日経新聞)とあるように、韓国の戦闘的でまともな労働運動を、日本独占資本は恐れおののいている。その現れとして、協定作成過程で日本政府案として「労働問題の解決には真摯に対応する」というのを盛り込もうとした。しかし進出企業の絶え間無い不当労働行為を容認するのではないかという日韓民衆側からの批判を受け、真摯条項は条文に盛り込まず、前文に「精神規定」を入れたようである。
 このように日韓労働者民衆にとって労働・環境・生活の範囲に多大な影響をもたらす「日韓投資協定」に対して、三月十五日東京・豊島区民センターで「小泉首相の3月訪韓反対!日韓投資協定の問題点を検証する集い」が開催された。
 集会は、渡辺健樹日韓ネット共同代表から朝鮮半島を巡る情勢について、日韓投資協定NO!緊急キャンペーンの土松克典氏から投資協定の批判的分析について、日韓ネットの大畑龍次氏からは韓国の投資協定反対闘争について基調報告がなされた。また集会司会者から、小泉訪韓当日の二十一日に韓国一般紙へ意見広告を日韓共同で掲載することが報告され、それへの賛同要請がなされた。
 投資協定は署名がなされ、国会での批准によって発効されるが、日韓首脳会談においても確認された日韓自由貿易協定(FTA)の締結阻止もにらみながら、投資協定の国会批准阻止の日韓共同の闘いを労働者民衆の力で実現しよう! (S)