阻止しよう!有事法制と「憲法改正国民投票法案」
現在の通常国会で、日本支配層の長年の夢であった有事立法制定と平和憲法改悪という二つのことが大きく進められようとしている。
有事立法をどのような諸法案として出すか、詳細はまだ政府・与党で調整中のようであるが、まず「自衛隊の防衛出動命令が出される事態」に対応した法制を整備し、「防衛出動に到らない事態」に対応する法制は後日にするという方針になったようである。
これは与党公明党との一致の必要性や世論対策ということが考えられるが、どうであるにせよ有事法制が戦争における軍隊の行動の自由の確保と、官民の戦争協力義務ならびに戦時統制とを二本柱とするものであることに変わりはない。支配層の本音は日米新ガイドライン安保体制にもとづく自衛隊の海外での参戦を支える有事法制の確立であるが、当面、保守的世論の支持を得やすい日本有事という想定で有事法制制定の既成事実を作ってしまおうということだろう。(しかし、いわゆる日本有事は在日米軍基地が攻撃されること以外ありそうにないことであり、在日米軍基地を撤去すれば日本は「安全」を増すというのが事実である)。
憲法改悪のほうは、昨年十一月に憲法調査推進議員連盟(自民党・中山太郎会長、衆参約三百議員)が、「憲法改正国民投票法案」および「国会法改正案」を今国会に提出することを決め、その法案要綱を発表している。この法案は直接には憲法第九十六条・憲法改正での手続きを規定しようとするもので、現憲法のどこを変えろと主張するものではないが、憲法第九条などを実際に改悪するための第一段階、その突破口として位置付けられていることは明らかである。きわめて謀略的な策動である。
有事立法は、その政府提出の意思が確定的であり、二〇〇二年度予算案の成立に目途が着けば、国会後半には成立させられてしまう危険がある。最大野党の民主党もかねてから「緊急事態基本法」制定を主張しており、与党三党と民主党との間に根本的対立点はない。他の要素が絡まなければ、早期に与党と民主党が手を打つことは明らかである。
「憲法改正国民投票法案」のほうは政府・与党レベルでの扱いが確定されていないが、数的には議員立法で成立させることは楽勝にもみえる。しかし憲法に手をつける問題であるだけに、数だけで押し切れば軋みが生じるはずである。憲法改悪阻止の共同戦線で大きな反撃を盛り上げ、提出自体ができない政治情勢を実現することが必要だ。
いま現在からただちに、有事立法と「憲法改正国民投票法案」の国会提出を阻止するたたかいを大きく発展させることが問われている。当面の反戦平和・民主主義をめぐるたたかいで最大のものとして位置付け、憲法や反戦を課題としない他の分野の市民団体や普通の労働組合においても取り組みが広がるようにする必要がある。
展望はある。一つは、小泉連立政権が一月二九日の田中真紀子外相更迭問題で、「改革」政権としてのイメージを失落させ、崩壊の坂をころげ出したからである。ブルジョア官僚政権に「憲法」や「有事」をもてあそぶ資格なし、そんなことより冬空に震える失業者・野宿者の増大にまともな対策を作れ、こうした主張で広範な世論を味方につけ徹底的に政府・与党を包囲し、勝利することは可能である。
もう一つの手ががりは、日本の改憲・戦争勢力が頼みとしている米国ブッシュ政権の本性がいよいよ暴露され、「9・11」以降の「反テロ」世界連合の攻勢という情勢から、威張りちらしたアメリカ帝国主義が世界の鼻つまみ者になる国際情勢に転換しつつあるからだ。
ブッシュは一月二九日の一般教書演説で、アメリカの原理原則を世界に押しつける、しかも武力行使・武力威嚇でそうする姿勢を露骨にし、北朝鮮・イラン・イラクを名指しで「悪の枢軸」と呼んで公然と戦争を仕掛ける対象とした。ブッシュの米帝は、テロによる恐怖の統治を追求するという意味で正真正銘のテロリスト国家である。こんなブッシュ政権に本気で付いていく気があるのは、世界中でもイスラエル・シャロン政権と小泉首相ぐらいのものである。
日本支配層と小泉連立政権が、「論憲」から「改憲」への着手、戦争遂行体制の法整備へ突き進んでいるのは、米帝ブッシュが進めた昨年からの反動的な世界潮流の勢いをかっているからだろう。昨秋強行された日本のアフガニスタン侵略戦争への参戦、それに伴う戦後初めての自衛隊出動の国会承認決議(これが、自衛隊法での防衛・治安出動という有事体制突入の予行演習であることは明らかである)、公海上で武力行使をした十二月二二日の「不審船」撃沈の暴挙、これらの日本帝国主義の突出は米帝の反動攻勢に追従し、また利用して日本の戦争遂行国家化をすすめるものであった。
日本の外相は別の女性閣僚に交替させられたが、「日本外交は日米基軸」「世界で最も重要な二国間関係は日米関係」とする決まり文句は続けられている。誰が見ても戦争屋のごろつきにすぎないブッシュと組んで、小泉政権に未来があるはずはない。
アフガニスタンで少なくとも四千人の一般市民を虐殺し、さらに世界中で虐殺を欲しいままにしようとしている戦争犯罪人ブッシュの、二月十七日来日に反対・抗議しよう。
有事立法の粉砕、「憲法改正国民投票法案」の国会提出を阻止しよう。