2002春闘

瓦解する春闘・リストラ容認に抗し

   権利確立の再生を


二〇〇二年春闘は、「春闘瓦解の年」として歴史に残るかもしれない。すでに連合は、賃金のベースアップ要求を断念し、統一要求基準を「賃金カーブの維持分プラスアルファ」という表現にした。日経連はこの間「ベアゼロ」を打ち出し、「総人件費の抑制」「成果にもとづく賃金」を主張してきた。
 今年は労働組合が「ベアゼロ」と言い始めたので、もう日経連は言うことがないのかと思っていたら、「ベア見送りにとどまらず、定昇の凍結・見直しや、さらには緊急避難的なワークシェアリングも含め、これまでにない施策にも思い切って踏み込むことが求められる」(一月十一日・日経連労働問題研究委員会報告)と追い討ちをかけてきた。賃金引下げの方向を打ち出したのである。
 この間の労働分野の規制緩和は、労働者を使用者に従属した者として社会的に保護する対象から、保護をやめて一般の商品と同じように扱おうとしている。競争原理の導入は、いくら稼ぐかという成果主義であり、エンプロイヤビリティ(従業員の職業能力)という言葉に見られるように、労働者を労働力商品としてその使用価値をいかに高めるかを労働者に課しているのである。労働者のはたらき方の多様性というのは、労働力商品の多様性であり、労働者の自立性とは、労働力商品を売る自由でしかない。そこには、生活をしている人間としての労働者の姿はどこにもない。いま、我々は、労働者を人間として扱えという労働者の最低限の権利獲得から反撃していかなければならない。
 今春闘の大きな課題は、雇用を守ることである。ワークシェアリング(労働の分かち合い)が焦点になっているが、日経連の主張を単純に表現すれば「賃金を半分にすれば、雇用が2倍になる」というもので、リストラをすすめ低賃金の不安定雇用労働者に置き換えようとするものである。連合の主張は、時間当たりの賃金を下げずに労働時間を減らして雇用を拡大しようというものである。いずれにしても大企業のリストラ計画を承認した上での議論では、雇用を守ることにはつながらない。まず解雇を一時禁止した上で、いかなる雇用形態でも労働者の権利と労働条件を統一する前提で、税制や社会保障制度の改革を含めて検討する必要がある。
 日経連と連合は、昨年十月「雇用に関する社会合意」推進宣言をだし、政労使雇用対策会議をおこなっているが、雇用保険財政をアウトソーシング促進に活用していく可能性がある。例えば、NTTが一〇万人の労働者を解雇し、子会社で再雇用すれば、雇用創出奨励金として単純計算で六〇〇億円が雇用保険財政から支出される。雇用保険の積立金は、一九九七年度は三兆九千億円であったが、二〇〇二年度には一四四〇億円になる見通しである。雇用保険財政は雇用調整給付金のように余剰人員を企業内に抱える政策に支出していたが、今後はワークシェアリングという名目でリストラ促進策に雇用保険財政を活用しようと大企業労使がたくらんでいるのである。
 大企業の再編や事業所閉鎖の影響で倒産や事業縮小をせざるをえない中小企業はたまったものではない。中小企業労働者は、非正規雇用労働者と共同して雇用を守り、労働者の権利を確立するたたかいを組織していく必要がある。職場の労使安定が崩壊していく中で、大企業の労使がリストラをおこないながら生き残ろうという政策に、反撃を組織できるかがこの春闘の課題である。   (K)