憲法論争

現憲法は有効に活用できる

     三中総・憲法闘争決議案を

     基本的に支持する見地から

                               千田光也

 

 日本国憲法の評価

日本国憲法は第二次世界大戦後、世界人民ならびに日本人民の真の民族独立、社会主義を求める闘いに対し、帝国主義が譲歩して、案を作ったものである。人民を社会主義の側に追いやらないための日米両帝国主義の妥協が、この憲法の背景にある。

アメリカには、ライバルである日本帝国主義の牙を抜き、自分の意図通りに日本を改造しようとする思惑があり、また日本支配層には、共産主義革命を防止して、日本国体であるとする天皇制を護持しようとする意図があった。両者の合意・妥協のもとに、この憲法は成立した。

しかし、この憲法によって明治憲法に比べ、ブルジョア民主主義の多くの権利が保障され、日本人民の利益を守るうえでプラスになったことは否定できない。

また種々の欠陥はあったものの、戦後の護憲運動が、支配階級の反動化の意図をくい止めてきたという点は、見落としてはならない。「護憲」を旗印にした人民の抵抗の闘いに対して、支配階級は、権力は、各個撃破戦術を取り、自己の反動化の意図の貫徹のため、憲法改悪を実施する機会を狙って、その準備をすすめてきた。

周辺事態法などの日米新ガイドライン関連法、国旗・国歌法、盗聴合法化などを可能とする組織犯罪対策法、介護保険法、労働者派遣法などの悪法を成立させた日本帝国主義は、自己の国内における支配を不動のものにし、帝国主義の世界支配の競争に参画せんとするための、明文改憲の策動を押し進めようとしている。

日本の共産主義者はこれまで、護憲あるいは改憲阻止闘争を日本革命の闘いの中で、明確に位置付けることができなかった。その弱さを率直に反省し、改憲阻止闘争に臨まなければならない。

我々は、左翼・人民運動の分裂、後退、弱体の現状を率直に認め、現憲法がブルジョア憲法であり社会主義憲法ではなく、それ故に限界を持つが、人民の利益を守るために有効に活用できる憲法の改悪を阻止する闘い、違憲の悪法に反対する闘い、憲法の平和的・民主的条項を完全に実施する闘いを着実に推し進め、人民大衆の利益を防衛しなければならない。

それと並行させて、プロレタリアートを支配階級へ高めるための努力をし、共産主義者の統合の推進、ソビエトの実力で権力を奪取するという革命路線の確立をすすめ、日本帝国主義に反対する統一戦線の形成を押し進めなければならない。明確な革命路線の策定を基礎に、広範な人民大衆を結集した真に、実体があり、人民大衆の主体性に支えられた改憲阻止闘争の形成に力を注がなければならない。

本工第一、性差別をはらんだ官公労・大企業中心の合法マルクス主義の指導下での経済闘争(反公害闘争に敵対するケースもふくむ)と議会主義による政治闘争という55年体制と決別し、原則的労働運動の構築、臨時工・パート労働者を中心とする労組づくり、労組間共闘、各課題ごとの要求組合を作っての対資本、対行政、対政府の要求闘争の組織化(憲法の平和的・民主的条項の完全実施を基調にすえ)を、違憲の悪法破棄の闘いと並行させることが必要である。

帝国主義に反対し、合法的に統一戦線政府を樹立し、一連の反独占の民主主義的改革を経て、社会主義革命を実現しようとする政党・政治潮流に対しては、我々は、議会一辺倒は危険であり、権力を奪取するのはソビエトの実力にのみ依拠すべきという共産主義者の原則的観点からの批判は行ないつつも、日本帝国主義に反対する統一戦線を形成するために協定を結ぶことができる。

 「憲法第九条」の継承・発展について

日本人民の歴史的な体験、アジア人民の感情、国際共産主義運動の教訓(ソ連修正主義・社会帝国主義の生成・発展・崩壊の教訓)をふまえつつ、日本は、帝国主義戦争には絶対に加わらず、帝国主義に到り着く資本主義とは絶縁し、独立・自主・プロレタリア独裁の社会主義日本を建設する。

人民大衆の利益を防衛するための武装の権利(正規軍の組織化の権利も含む)は有するが、社会帝国主義の道はとらず、国際共産主義運動、平和と社会進歩を目指す全世界人民の国際連帯の力で、世界の恒久平和を闘いとるという立場に立つ。

他国の革命支援・援助の形態については、相手国の立場を考え、その国の人民の自力解放を阻害しないように配慮して行なう。

人民武装力は、プロレタリア独裁の基礎の上、一切の排外主義・大国主義と無縁の公平無私のプロレタリアートの原則にのっとって統制され、人民に献身的に奉仕することが義務付けられる。(了)