「公務員制度改革大綱」を斬る!

  狙いは、資本のグローバル化に対応する官僚制度


 昨年の十二月二十五日、公務員制度改革大綱が閣議決定された。これによると二〇〇五年中に国家公務員法、地方公務員法を改め、二〇〇八年度を目途に新制度に移行するとしている。
 政府の改革の狙い、動機は何だろうか。一つは資本のグローバル化に対応する官僚の育成であり、一つは官僚の天下りや汚職、不正、公金流用などに対する人民の怒りへの対応である。正確にいうと、官僚に対する人民の怒りを手玉に取って、この際、資本のグローバル化に対応する官僚制度に改めようというものである。
 高度成長期において、官僚と政治家と資本家はお互いに癒着し、お互いの権益を増やしてきた。とりわけ官僚は政治家に転身したり、天下りで大手資本に迎えられたりで、数多くの許認可権を持ち、国家財政の実質的な配分権を握る官僚の力は絶大なものがあった。だからこそ国会議員は先を争って誰もが大臣のポストを欲しがった。大臣になれば、官僚たちがきちんと選挙基盤に対して予算を配分したり、許認可をしたりで、再選の下ごしらえをしてくれるのだ。政策・立案や国会答弁も官僚が準備してくれたものをしていれば、権益を損なうことはなかったのである。
 しかし、高度成長期が終焉し、国家財政が破綻し、資本の海外進出や外国資本の流入などグローバル化が進行する時代にあっては、自分が所属する省庁の権益を追求するだけの旧態依然とした官僚では対応できなくなっているのである。
 そこで出てきたのが、今回の公務員制度改革であるが、その狙いは官僚の人事権を政治家が握り、資本家との連携を強化し、資本のグローバル化に対応できる官僚制度にすることである。つまの各省庁の大臣を人事管理者と明確に位置づけ、官僚から人事権を取り上げあげるとともに、民間企業からの官僚への参入を促し、これまで第三者機関として位置づけられていた人事院の権限を大幅に縮小することにある。具体的には 人事院が行っている天下りや民間企業からの採用の承認を大臣に移す、 ポストごとの定員管理を人事院から大臣に移すなどである。
 その上で、 基本給を能力給に改め、成績不良者への降格制度の導入、 ボーナスを業務成績に応じた業績手当に改変、 大臣のひざ元で働く中間管理職への優遇としての本省勤務手当の新設、 上級幹部職員の年俸制などにより、大臣の意図に沿った仕事しかしない官僚と、その官僚の意図に沿った仕事しかしない一般の多くの公務員を作ろうとしているのである。
 さらに採用試験においては、 種採用予定数の四倍に合格者を大幅に増加させ、その中から人物本位で採用するとしている。これまでは例えばその人がプロレタリア階級の出身であろうと、反自民党であろうと、採用試験の成績が良ければ採用されていたが、大幅に増えた合格者の中から選別して採用する方法に代えることによって、人事管理者は成績が下位でも任意で採用できるのである。つまり人事管理者は自分に都合が良い者だけを採用できるのであり、ブルジョア階級からの自分たちの子弟を採用してくれとの要求に沿うものであり、利権者に有利なコネ採用に道をひらくものである。
 資本家への配慮はこれだけではない。民間からの公務員への採用は民間企業を退職しなければならなかったが、法を改めることによって、民間企業を退職しなくても公務員に採用できるとし、これまでは人事院の事前承認が必要であったが、これも人事管理者が主体的に採用できることに改めるとしている。
 またグローバル化への対応として、新たに総理大臣の指揮のもと国家戦略スタッフを創設するとしている。従来、政府は各省庁の連合体という様相を呈しており、採用・人事は各省庁がそれぞれ行うものであり、官僚は自らが所属する省庁の権益を増やすことに専念していた。ある〇〇省に上級試験で幹部候補生として採用された職員が、上司の官僚から抱負を述べよと言われて「国のために頑張ります」と言ったら、「君、それは間違いだよ。〇〇省のために頑張ると言うべきだよ」と諭されたという逸話があるくらいである。
 そこで、国家戦略スタッフの創設にあたっては、出身省庁にとらわれず、民間からの参入も含めて公募制にし、手厚い処遇をするとしている。各大臣の権限強化に合わせて総理大臣の権限強化を図り、グローバル化に対応しようというものである。
 このように第三者機関としての人事院の権限の縮小に伴う雇用者側の最高責任者としての大臣の権限強化に対しては、当然ながら公務労働者の制限された労働基本権が完全に復元されるべきである。しかし大綱では労働基本権の制約は維持するものとしており、政府側にとって一方的に都合が良いものになっている。
 公務労働者の団結を破壊し、政府に都合が良い公務員を作ろうとする能力主義の導入は、結局のところ勤労人民への圧政を強化するものであり、国、地方を問わず公務労働者は勤労人民と団結して労働基本権の復権を勝ち取り、支配者の専制政治化と闘わなければならない。       (M)