三重・海山町―住民投票

  札びら攻勢はねのけ

     反原発派が倍以上の圧勝


 十一月十八日におこなわれた三重県海山町の原発誘致をめぐる住民投票は、原発誘致反対票が賛成票を二倍以上うわ回る圧倒的多数を集めて決着した。反対票は五二一五票(投票総数の六七・二六%)。賛成票は二五一二票(同三二・四〇%)にしかすぎなかった。
 昨年二月、芦浜原発計画が三十数年にわたる反対運動の結果、三重県知事の「白紙撤回」表明を受けて「断念」された。この時から熊野灘方面での形を変えた原発建設の動きが浮上してくることが心配されていた。今回、原発誘致の候補としてあげられた海山町の大白池は三十八年前、芦浜と同じく中部電力の原発建設の候補地となった所である。
 海山町商工会は、芦浜原発計画「断念」を期に、誘致活動を活発に始めた。町長もこの動きに加担し、町議会も多数が推進勢力となった。中部電力はこの動きを表向きは「静観」しながらも、裏では推進派の人たちと酒席を囲むなどの接触をすすめ、原発誘致運動を扇動した。推進派は、この動きの中で商工会として誘致請願の署名運動を開始した。
 この署名は地縁血縁を通して、有権者の六四%にあたる五六〇六名が集められた。推進派はここで一気に住民投票を実施し、原発誘致を確定しようとして、九月定例町議会で町条例案を可決した。
 原発は札びらで横つらをはりたたくような形ですすめられる。一三五万キロワットの原発一基で、運転開始までの十年の交付金が約四〇〇億円、運転開始翌年度から十年の交付金と固定資産税で約五〇〇億円が自治体に入る。この他に電力会社からの補償金、協力金が漁協や地域に百億円単位で支払われる。ちなみに海山町の今年度の一般会計予算約四七億円からみると、その大きさがわかる。
 推進派はこの札びらと五六〇六名の誘致請願署名の記名をもとに、早期の住民投票実施を企画した。条例案制定から投票までの期間が約二ケ月と短いこと、町主催の住民投票にもかかわらず、町主催の説明会や勉強会など情報提供の機会がもたれないこと、など住民投票のやり方に多くの人たちから批判が出されていた。
 反原発のメンバーは出足が遅れた。「原発反対海山町民の会」などに結集し、署名を集める活動を地道にすすめる中で、漁業、林業にたずさわる青年たちや子育てをしている女性たちに活動が拡がっていった。投票四日前の総決起集会には、一四〇〇名の人たちが反原発に結集した。
 原発誘致は、住民の圧倒的多数の意志によって反対された。人類の安全に明らかな不安をもたらす巨大発電・原発は既に人々の生活感覚から受け入れられなくなった。海山町の人たちは全ての地域の人々の意志を伝えて、原発反対を表明した。
(東海S通信員)