「靖国参拝を許さない全国ネット」が立ち上げ

    小泉は参拝を断念せよ


 七月十日、「小泉首相の靖国参拝を許さない全国ネットワーク」が、小川武満さん(平和遺族会全国連絡会代表)、安西賢誠さん(愛媛玉串料訴訟原告団)、神坂玲子さん(箕面忠魂碑違憲訴訟元原告団)の三名を共同代表としてスタートした。
 既に小泉首相の靖国参拝中止を求める緊急署名活動は始まっており、八月七日よりの特別国会の日程に合わせ、八月八日署名提出・院内活動を準備している。
 小泉首相は、「戦争を二度と起こしてはいけないという気持ちと、戦争に行かざるを得なかった人への敬意と感謝を捧げるため」とし、「戦没者への追悼する気持ち」という超一般的な感情論に依拠して、参拝方針を正当化し、中国、韓国からの批判など内外の批判に、「理解できない」と同様の感情論で一顧だにしないでいる。八五年の中曽根公式参拝の際も同様の根拠であった。
 さらに小泉首相は、六月二十三日沖縄の「慰霊の日」に平和祈念公園での「沖縄戦没者追悼式」において、「六月二十三日は、八月十五日と並んで、先の大戦で犠牲となられた人々の思いに心を致す日」と発言し、「慰霊の日」を「8・15」と同一化し、日本国家の沖縄への責任を消しさろうとしている。このような動きに対し、沖縄からは、金沢市に建立された「大東亜聖戦大碑」に「ひめゆり」や「鉄血勤皇隊」が無断刻銘されたことがその生存者から抗議された様に、沖縄民衆は日本国家の沖縄への責任を決して忘れてはいないのである。
 小泉首相の一連の動きは、小泉ブームを背景に、一気に、「戦争のできる国づくり」「国のために死ねる人づくり」として企てられようとしている。
 国家神道の中心施設であった靖国神社は、小泉首相の言う「敬意と感謝」をささげることによって、若者に「戦没者を見習ってあとに続け」と鼓吹してきた宗教施設であることは、明白である。だからこそ、六月二十九日、韓国人元軍人・軍属の遺族二五二名が、戦死した親族の靖国への合祀の取り止めと遺骨の返還を求め、日本国を被告として東京地裁に提訴したのである。
 憲法上での政教分離条項は、「国家神道」の中心だった靖国神社への参拝を、「戦没者への追悼する気持ち」や「宗教と関係ない」という論理で正当化することを明確に許さないものとしてあり、愛媛玉串料訴訟や中曽根公式参拝に対する訴訟判決でも明らかにされている。
 「小泉首相の靖国参拝を許さない全国ネットワーク」は、事務局を関西において立ち上げられた。(連絡先:大阪市西成区津守一−一三−二八 FAX06−6562−6906)
 八月十五日の小泉首相の靖国参拝反対へ向け、全国の種々の運動と結びつき、大きなうねりとして作り出していこう。 (関西Sa)

 

     声 明

          小泉首相の靖国参拝を許さない全国ネットワーク


 小泉純一郎首相は内外の反対にもかかわらず、国家神道の中心施設である靖国神社へ、首相としての参拝の強行を表明しつづけている。その理由として、「戦争を二度と起こしてはいけないという気持ちと、戦争に行かざるをえなかった人へ敬意と感謝を捧げるため」をあげている。
 戦争への反省にたつならば、侵略戦争に動員された人とその遺族らに対して、「謝罪と補償」の態度で臨むのが当然であり、「敬意と感謝」ではありえない。靖国神社は、広島長崎の原爆をはじめ、各地の空爆、沖縄地上戦などで亡くなった民間人は祀られていない差別の神社であり、戦前の教科書では、「ここに祀ってある人にならって君のため国のため尽くさなければなりません」とあるように、「敬意と感謝」をささげることによって、若者に「戦没者を見習ってあとに続け」と鼓吹してきた宗教施設である。ましてや肉親を戦争で失った遺族は、再びわが子や子孫を戦没者と同じ目にあわせることになる、小泉首相の靖国参拝をけっして許せない。
 「国家神道」とは、神道とも仏教とも異なる「特定の宗教」であったのであり、その中心施設である靖国神社へ総理として参拝することは「宗教とは関係ない」などあり得ないことである。日本国憲法の政教分離条項は、まさにこのような詭弁をゆるさないためにある。それは、愛媛玉串料訴訟における最高裁判決、岩手靖国訴訟における仙台高裁判決、中曽根首相の靖国公式参拝に対する大阪、九州、播磨の各訴訟に対する高裁判決などで明確に示されている。
 小泉首相の行為は、日本国憲法に反するだけでなく、平和を望む日本とアジア近隣諸国の民衆を不安に陥れる行為であり、断じて許すことはできない。
 私たちは、小泉首相に対し参拝を断念するよう警告を発する。あえてこれを行なうというのであれば、法的措置を含むあらゆる手段をもって抗議することを宣言するものである。
              
  二〇〇一年七月
  
共同代表 小川武満(平和遺族会全国連絡会代表)
安西賢誠(愛媛玉串料訴訟記念集会代表・元原告団)
神坂玲子(箕面忠魂碑違憲訴訟・元原告団)
 以下、三十二団体・個人