参院選―一時的勝利で矛盾深める小泉「改革」

   自立・連帯の対抗路線を


七月二九日の参議院選挙は、小泉人気頼りの自民党の勝利に終わった。しかしこれは、自公保連立政権が直面する危機的状況をなんら解決するものではない。選挙結果を簡単にふりかえり、我々の闘いの方向を検討していこう。
選挙結果それ自体の特徴を、比例区の相対得票率でみてみると、まず自民党は大敗北だった前回参院選からは大きく得票率を伸ばして38・6%(前回九八年、25・2%)を得、無党派・浮動票を一定獲得することに一時的に成功した。つまり、自民党支持ではないが、今回は小泉「改革」というものに試しに入れてみようという投票行動が多かった。しかし今回の投票率が約五六%と戦後三番目の低調であったことを考えると、小泉ブームといっても選挙に普段行かない人々までを引き付けることはできなかったことになる。引き付けられたのは、前には日共や民主に入れたことのある票であろう。
公明党は15・0%(前回13・8%)で、低投票率からみて現状維持というところ。保守党は敗北した。
選挙区を含め議席的には自民は三議席増にすぎず、与党三党合計であまり変わり映えせずに参院過半数を維持した程度にすぎない。
野党第一党の民主党は選挙区で若干議席を増やしたものの、比例区では16・4%(前回21・8%)へ後退している。自由党も7・7%(前回9・3%)と若干後退したが、選挙区を合わせて議席増。小泉「改革」の新自由主義路線と同じ枠内にある民主党、またその路線がもっとも強い自由党、この二党が野党の内では生き残った。
もっとも目立っているのは、小泉「改革」路線そのものに反対の態度を掲げていた野党、日共や社民党などの敗北である。日共は7・9%(前回は14・6%の躍進ぶりであったが)で手ひどく後退した。社民は6・6%(前回7・8%)と引き続き後退を続けている。新社会党も0・7%(前回1・7%)に後退してしまい、議席回復の展望を拓くことはできていない。
こうして議席的には、戦後革新勢力という意味での本来の議会野党勢力がひどく後退してしまい、参院与野党比にはあまり変化はないものの、「改革」翼賛的な国会状況が一層強まっている。我々労働者人民の闘いを取り巻く情勢は、厳しくなるばかりなのだろうか。
しかし、観ておくべき情勢の特徴の一つは、自民党の今回の中途半端な勝利は、自民党側の内部矛盾を激化させるということだ。
いわゆる「抵抗勢力」、これまでの予算配分構造や許認可権限を権益と政治力の基礎としてきた官僚出身などの候補者もまた、「小泉さんを支援し…」などと唱和してかなりが当選した。投票率が低い分、そういう族議員の組織選挙が生き残った。経団連会長の今井は、選挙に勝った小泉に「思い切って剛腕をふるえ」と言っているが、いわゆる構造改革の「断行」は(ブルジョア既得利益層に対しては)怪しくなってきた。「断行」を強行しようとすると自民・民主などをまたいだ政界再編成の混乱が予想され、「断行」を躊躇していれば経済・財政の立ち腐れが日に日に進行する。経済・財政の面においても、小泉自民党の破綻は近いだろう。

決定的破綻の小泉外交
情勢の特徴の第二は、おもな与野党もマスメディアも、今回の選挙では「経済・財政構造改革」の是非、日本経済をどうするのかを主な争点としており、軍事・外交問題は広い範囲では政党選択肢とならなかった。ところが軍事・外交の面でこそすでに小泉連立政権は破綻を深めているのである。
「つくる会」教科書問題に続く、小泉の靖国神社参拝問題で、日本はアジア諸国を始め世界から決定的孤立を深めてしまっている。米欧帝国主義国のメディアも含め、小泉ブームという日本的政治状況への嘲笑とともに、小泉ブームが過去を清算しない国家主義勢力と結びつくことへの危惧が高まっている。小泉が靖国参拝を強行したら、どういうことになるのか。さすがに支配層内部でも心配になって、閣内でも自民党でも不一致となっている。小泉「改革」の経済・財政構造改革の面は、帝国主義国間の国際公約であり資本主義的グローバリズムへの対応であるが、中曽根・森派に支えられ都知事石原が応援する小泉「改革」の極右的側面はそれと矛盾を来している。「戦争のできる国家」作りを継続する小泉政権のウィークポイントである。
また露骨な米帝追随の安保政策、環境政策も争点化されなかったが、小泉への「期待」はそれらへの支持を意味するものでは決してない。

改革「断行」来るなら来い
さて、改革を求める国民が小泉政権を生んだ!などのデマが払拭され小泉連立政権が国内的にも徹底的に孤立する日は近いのであるが、左翼的・民主的勢力に広く問われる課題としては、小泉「改革」路線に対抗するこちら側の変革の路線を立て、実践を広げることが結局は重要となる。
現況では一般に、「改革勢力」なのか「抵抗勢力」なのかという選択になっている。冷戦時代に形成された革新か保守かという区別は確かに古臭くなっている一面もある。しかし、この選択は労働者人民が取るべき選択ではない。日本資本主義の官僚主導・土建国家的体質の構造的な転換が客観的に不可避であるとすれば、それを急速に進めるか緩慢に進めるかは、独占ブルジョアジーと官僚の内部の方針の違いにすぎない。我々はこの転換の過程を、労働者人民の自立と連帯を強め、政治的・社会的な力量を付けて乗り切っていくための方針を持たねばならない。
小泉「改革」そのものに反対する日共や社民党は、若干の違いはあるものの、大きくは弱者切り捨て反対・福祉政策充実・大衆消費回復という旧来の福祉国家路線にある。労働組合の多くも企業内組合主義によって、特定業界団体の既成勢力でしかなくなっている。その民営化反対などの諸要求は今日、「抵抗勢力」の要求として乱暴に否定されつつある。しかし、我々に問われているのは、新自由主義の攻撃に対する労働者人民の具体的要求に基づく運動を発展させながら、運動をブルジョア行政の防衛や改善に収束させることなく、また改良的解決の能力をも鍛えつつ、新しい社会を準備する労働者人民の強大な統一戦線の形成へと進んでいくことである。
最近成功をおさめた我が労働者共産党の三中総はこうした課題意識をもって、日本労働運動の新しい方向と革命的左翼の団結・統合の方針などにおいて、重要な決定を行なった。すべての同志・友人・読者の皆さんのご検討・ご批判をお願いしたい。今こそ一党一派の枠を越えて、団結・奮闘しようではないか!