ジェノバ・サミット ー国際民衆運動に動揺

        機能不全が始まった国際反革命同盟体制

 七月二〇・二十二日、イタリアのジェノバで、主要帝国主義八カ国の首脳会議(サミット)が開催された。サミットは、グローバルな搾取体系を日々発達させ肥え太る自国金融独占資本の利害を代表する首脳達が、世界支配秩序を確保する見地から共同意志を形成するための場である。しかし今回のサミットは、地球温暖化防止問題では「京都議定書に関しては現時点意見の不一致がある」と首脳宣言に記すこととなり、米帝のミサイル防衛計画問題に至っては議題に取り上げることさえ回避せざるを得ず、内部矛盾の拡大を印象付けた。また今回のサミットは、「あなたたちG8,わたしたち60億」を旗印に掲げた二十万人の抗議デモに包囲され、デモ参加者一人が警官に射殺されるという事態を招いた。
 今回のサミットの内部不一致は、国際反革命同盟体制に対する・主柱としての米帝の統合力が衰退していることの結果である。
 米帝は、世紀の変り目におけるクリントン政権からブッシュ政権への移行を契機に、自己の力量を超えた(損なう)世界支配秩序維持の仕方の修正作業に入っている。「米国の経済を損ねる条約は拒否する」として京都議定書から離脱。援助と引き換えに核・ミサイル開発の放棄を求める方法に替えて、ミサイル防衛計画で自国を要塞化しつつ一段と権力的に査察・規制できる体制を追求(包括的核実験禁止条約の批准拒否)、等々。だが米帝のこうした転換が、米帝に対する他の帝国主義諸国の不信を高め、国際反革命同盟体制を機能不全化させ始めているのである。
 そうした中で今回のサミットは、その首脳宣言の約半分を貧困国・途上国対策に割いた。それは、米帝を頭目とする帝国主義諸国が、資本のグローバル化のもたらす悲惨、労働者人民の反抗への対処に迫られて、搾取階級の諸国家の最貧国を含む国際的共同に目を向けざるを得なくなってきたことの表明に他ならない。
 今回のサミットに対する労働者人民の闘いは、多国籍企業の発達のもたらす災厄が一段と深刻化してきている事態に警鐘を鳴らすとともに、資本家達の社会にとって替わる新しい社会を目指す国際的な民衆運動の巨大な発展力を顕示した。この闘いの爆発は、G8首脳にも衝撃を与えた。フランスの大統領シラクは、「これだけ大きな抗議行動が示している人々の不安を考慮しない訳にはいかない」と動揺を隠せず、EUのプロディ欧州委員長も、サミットのあり方について「考え直すべきだ」と先行きの不安を吐露したのだった。新自由主義と多国籍企業がわが世の春を謳歌した一時代は、この闘いを契機に今、黄昏の中に沈もうとしているのである。
 国際反革命同盟体制が機能不全に陥り、多国籍企業の世界支配に対する全世界人民の反抗が広がっていく方向への世界史的な政治の変化は、東アジアが動くとき本物になるだろう。東アジアのG8構成国である日本の政治も動き始めている。歴史問題と新自由主義的「構造改革」に対する態度をめぐって、支配階級の間に深刻な亀裂が生じ、労働者人民の運動の路線的再編成が加速している。われわれは、激動に備えなければならない。(M)