我々がめざす労働組合運動の基本方向               
                      

                                               第一期第三回中央委員会総会 


         ◎ 労働情勢


 国際競争の激化と労働者攻撃

バブル崩壊後、独占資本を中心とする資本家階級は、アメリカ主導の国際的な自由競争の激化に対応して、一方で、本格的な多国籍企業化を推し進めるとともに、他方で、労働者階級への全面的な攻撃によって日本資本主義の立て直しをはかってきた。
 企業の倒産は昨年、バブル崩壊いこう最高の水準で1900件余で、負債総額は前年比77%増の約24兆円にまで至っている。リストラの影響も含めた大量首きり攻撃は、失業水準を大幅におしあげ、いまや政府統計でさえ完全失業率は5%(300数十万人)近くにまでなっている。最低限の生活水準からも追われた野宿労働者は、いまや3〜5万人にまで増加している。
 雇用労働者の構成では、情報通信を中心とする技術革新・合理化やリストラなどで正規労働者の減少が著しく、その反面で「非正規雇用」労働者が急増し、それは90年の約15%からいまや27%前後にまで膨れ上がっている。
 独占資本の政治的代理人である政府・自民党などは、労働基準法、労働者派遣法、職業安定法を改悪し、労働者の権利を侵害・剥奪し、民事再生法や会社分割法(商法改正、労働契約承継法)によりリストラ・解雇を容易にし労働者の反撃を封じ込める体制づくりなど、資本の要請にこたえ労働者抑圧を推進している。
 日本資本主義は近年、戦後初のデフレ状態に入り、価格破壊、賃金破壊、雇用破壊が繰り返されている。それに加えて、依然として80年代後半のバブル経済の後始末と、新自由主義の下での国際競争に耐え得るような企業体質への転換をつきつけられている。支配階級は、不良債権問題の解決を先送りしてきたがいつまでも放置できず、内外の圧力のもとで不良債権の直接償却に踏み出さざるをえなくなっている。それは言うまでもなく、さらに倒産の大波を作り出し、さらに大規模な失業者・半失業者を生み出さないではおかない。
 

労働者階級の状態と既成労働組合
 失業増大、雇用不安、低賃金の「非正規雇用」の増大、さらには社会保障制度の危機などによって、労働者階級人民は消費を切りちちじめ生活防衛せざるをえなくなっている。勤労者世帯の実質消費支出は、バブル崩壊いこう低迷し、93年からの3年間連続マイナス(対前年比、暦年)につづき、98年からも3年間連続マイナスというありさまである。全世帯での実質消費支出にいたっては、93年より連続して8年間マイナスが続いている。
 近年のうちつづく収入の減少はこの傾向に拍車をかけている。それは、勤労者世帯の実収入が名目、実質とも98年いらい3年連続してマイナスという、かつてない劣悪な状況が示している。
 労働者階級の生活状態の悪化は、それだけではない。正規雇用の労働者でみると、企業規模別の賃金格差や男女間の賃金格差は、ほとんど改善されていないが、大企業での男女間の賃金格差はむしろ拡大している。そして何よりも特徴的なのは、年功序列制・終身雇用制の破壊が次第に進み、年俸制、成果主義的賃金制が拡大していることと、「非正規雇用」労働者(うち女性が約74%)が急増していることである。これは極度の低成長の常態化のもとでの、激烈な資本間競争が、労働者階級への全面的な犠牲の押し付けで進められていることを意味する。
 この結果、社会全体での貧富の格差が拡大しているだけでなく、労働者階級内部でも賃金格差が拡大している。そして、いまや階層的ランクの最下層からさえはじきだされた野宿労働者が全国の各都市に見いだされ、ますます拡大するという情勢である。
こうした状況に対して、「男子・正規労働者」を中心とする大企業などの企業別労組は、反撃できず、資本のなすがままであり、その特権的地位にしがみついているだけである。
連合は、企業別労組の連合体で、その主流は労資一体・労資協調派である。それは日本の帝国主義労働運動の中心的な推進部隊であり、今日の歴史的転換期にあって、組合員の雇用や生活を守ることができず、資本の攻撃に対して闘いを組織する意欲さえもない。
全労連は、雇用規制法や最賃法改正などをかかげて闘っている。だが、依然として悪しき意味での官公労的体質を脱皮しきれておらず、他潮流との共闘も官僚統制の枠内でしかない。
全労協は、総評左派や新左翼系の活動家などを中心に、この間先進的に闘ってきた。しかし、最大の問題は、敵への全面降伏を意味する「4党合意」を推進するという国労指導部に代表される企業主義的な労組運動を克服しきれていないことである。

           ◎労働組合運動をどの方向で再建するか


戦後日本の労働組合運動の多くは、国内の下層労働者、第三世界の労働者人民だけでなく、内外の自然の犠牲によって成り立つ大量生産─大量消費─大量廃棄の生産様式・生活様式を再生産する経済成長至上主義を前提としてきた。そして、企業別労組は、この高度成長を背景とした「企業社会」の骨幹である大企業─中企業─小・零細企業の重層的支配構造に組み込まれ、これを変革するどころか、その多くがこれを下から支えてきた。これにともない、労働者階級の団結を阻害する階層的分断、企業別分断を放置してきた。また、「男子・正規労働者」を中心とする団結のため、必然的に性別役割分業を変革できず、性差別を放置し、男女の対等性を基礎とする階級的団結を促進できなかった。
 戦後の労働組合運動は、70年代半ばごろから社会的影響力を失いはじめ連合結成前後からその社会的存在意義を決定的に弱めている。とくに大企業労組は、会社と一体となって自己の特権的利益にしがみつき、重層的支配構造を支え、下層労働者の地位の改善問題や公害問題などにみられるように広範な労働者人民の利益に露骨に対立する局面さえ露呈させてきた。
資本からの思想的・組織的自立をなしえない企業別組合は、いかに戦闘的であったとしてもそれは一時的なものでしかなく、次第に企業統制下にはいるか、そうでなければ玉砕型の運動で消滅するしかない。その多くが前者の道をとった企業別組合は、資本の動向に振り回され、結局は仲間の労働者の首きりに対してさえ闘うことのできない現状を露呈させているのである。
戦後の労働組合運動の教訓をふまえて、日本の労働組合の再生、労働運動の階級的発展のためには、われわれは、企業の枠にとらわれない全国的な個人加入のゼネラルユニオンや地域ユニオンを発展させ、労働運動の主流におしあげ、企業別労働組合の変革・改組をもふくめ、自立した労働者の団結を促進することが、極めて重要な方向であると考える。そして、この方向を実現するうえで大事なことは、地域を基本単位に闘う体制を作り上げ、企業の枠にとらわれずに組合活動を展開し、下層労働者の階級的団結を前進させることである。
二一世紀は、環境問題によって経済成長が限界づけられる局面はさらに増大する。自然をも犠牲とした経済成長によって労働者を体制内につなぎとめる方式はすでに限界にきている。また、内外の圧力もあって「日本的経営」が放棄され、大企業の正社員や公務員が減少し、パートや派遣などの「非正規雇用」労働者が急増している。今こそ、客観的には個人加入のゼネラルユニオンや地域ユニオンが発展しうる好機である。
労働組合の闘いは、一般的には賃金・労働条件の向上や権利の維持・拡大などのために行われている。われわれはこれらの闘いを支持し共に闘うとともに、資本主義の諸矛盾を揚棄するために、政治権力の奪取と社会革命をめざして階級的団結を固めるように奮闘する。
 われわれは、企業の枠にとらわれない、個人加入のゼネラルユニオンや地域ユニオンを日本の労働組合運動の主流におしあげ、広範な労働者の階級的団結を固めることこそ、労働者階級の解放を前進させる道であり、歴史の歯車をおしすすめる道であると、確信する。

           ◎当面の闘いの指針


(1)全国的な個人加入のゼネラルユニオンの形成を
われわれは下層労働者を推進翼とする階級的結合を追求してきた。事実、大企業の生産現場を担っているのは、下請け労働者であり、日雇い労働者をふくむ下層労働者である。生産拠点が海外に移転し、大企業は管理部門化し、第三次産業の比重が高まっているが、その労働もパート、派遣労働など「非正規雇用」労働者の増大となっている。
 われわれは、日本の労働者の階級的団結を阻害してきた企業別労働組合を変革・改組し、自立した労働者の団結を拡大していかなければならない。そのためには地域ユニオンを発展させるとともに、もう一つは、中小企業労働者・「非正規雇用」労働者などを組織する全国な個人加入のゼネラルユニオンを形成することが是非とも必要である。
連合に加入しないで闘いつづけている労働組合の大同団結を促進し、地域で闘っている労働組合が結集し、いまこそ、「規制緩和」の名をかりた資本の攻撃に苦しんでいる労働者の立場にたって、働く権利を保障し、差別のない労働の確立を戦略的に築く、政策と力を持たなければならない。そして、産業別・業種別交渉権の確立と労働基準の設定を実現し、企業横断的な闘いを展開し、「企業社会」の重層的支配構造を根本的に打ち破り、労働者階級解放を大きく前進させる必要がある。
なお、企業内組合で活動する同志は、正規・非正規を問わず労働者の階級的利益を追求し、また、地域の他の労組や市民・住民団体との交流・団結を推進し、企業内組合の変革に奮闘する。


(2)地域ユニオン運動をおしすすめよう
資本は労働者を犠牲にして過酷な競争に生き残り、利益をあげようと躍起になっている。全国の各地域には解雇を通告されたり、退職を強要されたり、賃金が遅配になったりして呻吟している労働者が次々に生み出されている。
地域ユニオンの運動は、このような労働者の「駆け込み寺」として労働者の救済に大きな役割を果たしている。地域ユニオンは自分の意志で加入した組合員が、地域の労働者のために主体的に活動している。職場の上下関係などなく、平等・対等な人間関係の中でのびのびと活動している。パート・派遣と次々に生み出される「非正規雇用」労働者の組織化に熱心に取り組んでいる。地域ユニオン運動では、女性組合員が重要な任務・役割を果たしている。女性の賃金差別問題に熱心に取り組み、労働界をリードしている。
地域ユニオンは、個別闘争だけでは解決できない社会的制度問題を取り組むことも要求されている。地域の介護や福祉、雇用の創出、人々のための教育・医療など、新たな地域社会の形成・発展に見合った労働運動が求められている。社会的有用な労働の追求や、雇用労働だけではなく契約労働・協同労働などの新しい働き方をその権利の確立とともに作り上げていくことなども求められている。
一方、多くの地域ユニオンは、組織的脆弱性をかかえてきた。これを補いながらこれまでの運動の質を労働運動に展開していくためには、今後、多くの組織運営上の工夫と、ゼネラルユニオンの地域組織、社会的諸勢力との連携・協同の構築がますます必要になっている。


(3)課題別共闘の積極的推進を
低成長時代の労働組合の役割、労働のあり方などを引き続き研究しつつ、創意工夫しながら春闘をたやさず、中小労組、パート・派遣・契約労働者の共闘を積極的におしすすめる。従来の工場中心の発想を克服し、圧倒的多数の下層労働者を組織しないかぎり、特権的な大企業労組を改革・改組できないし、より下層に矛盾をおしつける重層的支配構造をも変革できない。
支配層は、規制緩和の名の下にさらに労働関係調整法、労働組合法の改悪も策動している。これに反対し、他の労働法の改正のためにも、ナショナル・センターの枠を超えて一致できる労組とは積極的に共闘し闘う。
憲法改悪の策動、戦争のできる体制作りに対決し、反対する労働組合の共闘の発展とともに、広範な市民・住民団体との団結を拡大する。
日本の企業もますます多国籍企業化しているが、日本の労働者の国際連帯もじょじょに進められている。在日外国人労働者の闘いを支援するとともに、東南アジアとりわけ韓国の労働者などとの国際連帯をさらに強める。


 (4)地域を基礎に労組と市民・住民団体の団結を
 「企業社会」に組み込まれた企業別労組は、未組織労働者、農民、零細自営業者などを大きく団結させるために献身的に活動するどころか、むしろそれを放置したり、あるいは敵対的ですらあった。企業別労組は、活動を主要に賃金・労働条件に狭め、自然破壊、教育、青少年問題などの社会運動や、安保反対・憲法改悪反対などの政治運動を地域の人民とともに闘うことから逃避してきた。
労働組合を再生させるためには、女性労働者・中小零細企業労働者・失業者などの下層労働者の要求を実現するだけでなく、地域の市民・住民団体との交流・共闘を積極的におしすすめ、現状を変革する諸勢力の団結とその影響力を拡大することが重要である。その意味では、互いの活動状況を共有し団結を強めるために、労働組合と市民・住民団体の活動家が相互乗り入れし、相互の長所を学び欠点を批判しあい、ともに闘うことも必要である。地域での諸勢力の団結の拡大は、地域的統一戦線を発展させ、自治体に対する最低生活保障を要求する闘い、地域での実のある最低賃金を獲得する闘いを発展させる基盤ともなる。
 労働組合は、生産過程での矛盾のみならず、社会的諸矛盾の総体に対する闘いが再生への大きな一歩となるであろう。
(5)自立した労働者諸個人の階級的団結を
従来の組合活動では、大衆路線とは正反対の幹部請け負い主義、代行主義が指摘されながらもなかなか克服しきれていない。それに労組そのものの閉鎖的傾向、大企業労組などの会社労務部化、組合運営の非民主性などもあって、労組の組織率は戦後一貫して低下してきており、いまや22%の水準にまで陥っている。労組ばなれは、とりわけ若い世代に顕著である。
組合民主主義の原則を堅持しながらも、それを単に紋切り型にふりまわすのでなく、若い世代も、女性も、それぞれの個性と能力が発揮しうる組合運営と組織環境をととのえることが重要である。それなくしては、労組の組織率はさらに悪化するであろう。
親方・子方関係、親分・子分関係という団結でなく、女性も男性も、若者も年配者も、対等で自立した形での階級的団結をおしすすめる。生きること、働くこと、暮らすことにおいて、人間の尊厳を守り、また人と人・人と自然の共生共存を目指す労働組合の団結は、当然にも自立した諸個人の団結である。
自立した諸個人の階級的団結を発展させよう。
                                                                 (以上)