小泉新政権ー長年のツケは労働者人民に押しつけ  

はねかえせ失業・改憲攻撃

  
 
(1)「院政」破綻から抗争へ


  自民党総裁選は、党改革・派閥政治の打破と、「構造改革なくして景気回復なし」を強調する小泉候補が予想外の大差をつけて勝利した。
  当初、橋本派は森前首相の選出過程の負い目から、初めて地方予備選を導入して、世論の批判を回避する糊塗策で乗り切ろうとした。だが橋本派は、完全に人心の動向を見誤った。各地の党員の危機感すら理解できていなかった。頼みとする利益誘導団体も、思う通りに動かずすでに空洞化していた。ここに田中角栄いらいの長年の院政は破綻した。
  新保守の旗手として登場した小泉は、派閥政治の打破をかかげ新たな政治スタイルで、草の根の自民党員の期待に応えた。だがそれはあくまでも、七月参議院選挙を見据えたものでしかない。景気回復をただただ求める自民党員たちは、構造改革がいかなる諸結果をもたらすか、今日の資本主義が要求する弱肉強食、優勝劣敗の苛酷さがいかなるものか、これらを十分承知したうえで、小泉を支持したとはとうてい思えない。
  それに橋本派を筆頭とする伝統的な派閥政治の巻き返しは必至であり、すでに彼らの不満はあちこちで出始めている。恐らく七月参議院選挙を契機として、激烈な権力闘争が展開されるであろう。それは場合によっては、野党とくに民主党を巻き込んだドラスティックな政界再編に発展することも、十分に想定されうる。
  バブル崩壊いこう、新保守の改革は細川政権、橋本政権についで三度目である。本格的な経済の構造改革は、自民党の利益誘導政治からの脱皮と密接な関係にあるがゆえに、激烈な党内抗争は不可避である。     

  (2)戦争・首切りの新政権


  新保守としての小泉政権の本質は、すでに明らかである。小泉自身による、解釈改憲による集団的自衛権の正当化、憲法九条の改正、靖国神社への公式参拝、森政権を引き継いでの有事立法・教育改革などの発言で示されている。これらは経済構造改革、派閥政治の打破と結び付けるなら、グローバル資本主義の下での国際競争に対応する政治・経済体制への改革と、戦争ができる体制づくりを目指していることは明白である。
  小泉総理・総裁が自民党員の圧倒的支持により成立したこと、派閥政治の伝統勢力の巻き返しに対する先制として、首相公選挙制に限っての憲法改正の発言をしたことなどに惑わされてはならない。彼の主権在民原則に対する考えは、あまりにもアイマイであり、自民党的な意味で伝統的である。それは、首相公選制は天皇制と矛盾しないとか、首相就任後初の記者会見での孟子の天命思想(王・皇帝を肯定する思想)の引用で明確である。それは前首相の森と比べても五〇歩一〇〇歩なのである。
  だがいずれにしても、小泉政権が当面する最大の問題は、経済の構造改革であり、なかでも不良債権の処理の問題である。これは自民党総裁選の四候補の誰が総理・総裁になろうとも直面する問題である。ただ一徹な保守的改革派である小泉が首相になることにより、その規模とスピードが増したとは言えるであろう。
  金融庁の発表によると、二〇〇〇年三月末現在、全金融機関がかかえる「要注意先」以下の不良債権の総額は、一五一兆円である。金融庁はすでに、銀行が認定している“返済が確実でない問題債権”が八一兆円あると公表している。だから今回の発表により、担保などはあるが元利払いを延期しているなどの貸出先がさらに六九兆円もあることとなる。だが専門家にいわせれば、不良債権の実態は誰もわからない、当の銀行さえつかめていない、そうである。                         
  これまでの政権は、大手銀行に九兆円以上注入し、金融機関の破綻に巨額の税金を投入し、特別保証制度として中小企業向けに二九兆円の融資(このうち焦げ付きは六〇〇〇億円超だが、政府は最大二兆九〇〇〇億円になることも想定)をし、五年以上も超低金利政策をつづけ、景気対策といって大盤振舞いをして地方・国あわせ残高約六六六兆円の財政赤字をかかえこむ事態に至っている。これこそ自民党などの利益誘導型政治の結末である。
  こうしたジリ貧政治に決別するという限り、今日の事態を根本的に「解決」するには、社会主義革命か、それとも不良債権の直接償却・競争力のない企業の淘汰促進などにより日本型資本主義の抜本的刷新か、これら以外にはありえない。労働者人民の意識と団結の現在的水準からみて、後者の道にならざるをえないだろう。このことは一体なにを意味するか。
  九七〜九八年の金融危機時をも上回る倒産の続出、膨大な失業者・半失業者の出現である。労働者階級人民へのほぼ全面的な犠牲の押し付けである。このことは、これまで責任をとるべき資本家・官僚・政治家が、全くといってよいほど責任をとってきていない以上明白である。

  (3)どこから反撃するのか


  労働者階級への全面攻撃に対し、大企業労組を中心とする連合は無力である。「男子・正規社員」を中心とする大企業労組は、まともな反撃も組織せず、多くの下層労働者から信頼もされず、また期待もされていない。連合は、四・二八中央メーデーで「改革断行内閣」=首切り内閣の首謀者・小泉を招待して、はしゃいでいる始末である。
  この間、製造業などではリストラ・首切りを推し進め失業者を増大させたうえで、賃金総額の圧縮により企業収益を確保・拡大するために、派遣・契約・パートなどの「非正規雇用」の労働者を増大させてきた。その割合は、九〇年の約一五%から昨年時点での約二七%という急増ぶりである。この傾向は、構造改革にともなう倒産ラッシュ・膨大な失業の出現により、さらに促進されるであろう。
  この事態に、「男子・正規社員」を中心とする御用労組が、「裸の王様」になることは目に見えている。激烈な攻撃に反撃もせずリストラ・首切りに追随する限り、残った正規の従業員で構成する組合は、職場での少数派でしかないからである。
  われわれは、特権的な大企業労組・御用組合を中心とする連合の資本追随路線・帝国主義労働運動と対決し、地域・職場に下層労働者などの生活と権利を防衛・強化する労働組合を拡大し、あるいは新たに建設し、政府・資本の攻撃に反撃する。増大する失業者や野宿労働者を地域で組織し、仕事の確保・人間らしい生活の獲得を実現するために闘う。
  われわれは下層労働者に依拠して労働組合運動を再建・発展させつつ、同時に地域の市民・住民団体との連携・共闘をなお一層つよめ、地域的統一戦線の強化・拡大を推進する。新保守主義の憲法改悪、戦争のできる体制づくり、労働者人民の生活と権利の破壊に対決し、全人民的統一戦線の形成のために奮闘する。  労働者人民のみなさん!ともに闘おう。