民衆を殺し、圧殺する日米安保体制、その本性を露呈  

 沖縄・日本から米軍を撤去せよ

  米原潜の「えひめ丸」撃沈を糾弾する

 二月九日(現地時間)、ハワイ沖で、愛媛県宇和島水産高校の実習船えひめ丸(四九九d)が、海中から急浮上してきた米海軍・攻撃型原潜グリーンビル(六九二七d)に激突され、数分で沈没した。乗っていた三十五名の内、海上に投げ出された二十六名は救出されたが、宇和島水産高校の生徒四名を含む九名が現在に至るも行方不明。家族が米日両政府に対して、えひめ丸の引き上げを求めている。
 事件の真相は、今日まで明らかになってきているところでは、おおよそ次のようなものである。
 原潜は、世論工作の一環として民間人十六名を乗せてショー的航行を体験させており、最大の見せ場として問題の緊急浮上を演じた。原潜は、事件の一時間十分前からえひめ丸を、ソナーで探知・追跡していた。司令室に民間人を多数招き入れていた等のため、えひめ丸のソナー情報が艦長に正確に伝わらなかった。艦長は、えひめ丸の接近を知っていながら、その正確な所在を確認しないまま、民間人を喜ばすために緊急浮上行動を命じた。艦長は、緊急浮上時の際、民間人三名に浮力調整レバーなどを操作させていた。原潜は、えひめ丸を沈没させ、しかも自身はほとんど無傷だったにもかかわらず、救助活動を全く行わなかった。
 米原潜は、同乗民間人を喜ばすための緊急浮上によって、えひめ丸に衝突し大惨事を引き起こした。米原潜が海上に投げ出された人々の救助を行なわず「監視」するだけだったのは、「戦闘態勢」の保持を優先させたということであろう。ワドル艦長の謝罪はいまだない。われわれは、満腔の怒りを込めて、米原潜によるえひめ丸への激突事件を糾弾する。
  
    米軍駐留は限界に来ている
 
 「米国は…一生懸命対応してくれているような感じを受けた」(福田官房長官)。「米側は日が暮れても捜索活動を懸命にやっている。日米間に悪い影響が出ないようにという気持ちの表れと思う」(外務省幹部)。ここに撃沈事件を糾弾する姿勢は全くない。反対に、反米感情の高まりを心配して、その慰撫・押さえこみに心をくだいている。
 ブッシュ米大統領は、森首相に特使を介して二月二七日に手渡した親書の中で次のように述べた。「このような時にこそ、日米関係の強さが試される。私たちは日米両国が同盟国として、地域および世界の平和と安定を守るために果たす責任に留意する」と。
 日米安保体制の防衛、日本の民衆の間から湧き起こっている非難・怒りからの防衛、これが日米両国政府にとって中心的関心事なのだ。
 日米安保体制、それはアメリカ帝国主義を主柱とする国際反革命同盟体制―帝国主義諸国金融独占資本のグローバルな搾取・収奪体系を防護する体制―の重要な構成環である。日米支配階級が冷戦をテコに隠蔽し封じ込めてきていたこの体制の民衆に対する抑圧的性格が、いま暴露にされてきている。今回のえひめ丸への米原潜の衝突事件は、その一つに他ならない。
 わが国の米軍基地の七五%が集中する沖縄では今年に入って、一月九日の米兵の女子高生に対するわいせつ事件、その後の放火事件を契機に、「海兵隊削減決議」「撤退決議」が地方自治体諸議会で次々と採択されている。日米安保条約の地位協定によって保護されている米軍(米兵)の特権的地位の問題が、米兵に対する逮捕権が日本側にない問題などを介して、浮上している。北海道では、米第七艦隊がこの二月、「周辺事態」への備えとばかりに室蘭、苫小牧、小樽といった商業港への艦船寄港を策したが、小樽市、苫小牧市の実質拒否など歓迎しない雰囲気が強まっている。また、わが国の上空のかなりの部分が米軍(および自衛隊)専用空域に指定されているため、ますます増大する民間航空機が狭い航路帯にひしめき、先日東海地方上空でおきたような大惨事一歩手前のニアミス事件が頻発してきており、そうした方面でも米軍の駐留は限界に逢着してきているのである。今回の件に関連して、わが国の領海・近海においても、米原潜の特権的な自由航行が容認されており、同じような惨事が繰り返されても不思議でない実状であることが指摘されている。
 アメリカ帝国主義は、駐留米軍に対する批判の増大という冷戦後の政治変化を織り込んで、自己の覇権を確保する日米安保体制再編の方向を打ち出してきていた。それは、在沖米軍の一部をアジア・太平洋地域へ分散配備することと引き換えに、米軍の指揮下での自衛隊の本格的な同盟軍化(周辺事態法の上に立った「集団的自衛権の解禁」と「有事立法」)を日本帝国主義に受け入れさせるというものである。そして日帝の側もこの要求に応える意向を表明し始めていた(前号一面参照)。その線に沿って、この三月の日米首脳会談で日米同盟の強化がうたいあげられる手はずであった。
 だが、沖縄における米兵の連続的不祥事につづく今回の事件は、わが国の諸階級諸階層の広範な人々の米軍への不信を掻き立てた。日本政府による国内世論の慰撫・押さえこみの「努力」(大した事件ではないとして賭けゴルフを続けた森首相の態度もその一つだったろう)にもかかわらず、かえってそれが森政権崩壊への致命的一撃となり、日米安保体制の再編・強化の企てに支障をきたしてきている。日米安保体制に対する沖縄・日本の民衆の不信と怒りは蓄積されてきており、そう遠くない将来日米支配階級の思惑を超えて噴出するに違いない。
 
   朝鮮・アジア民衆と連帯し安保破棄へ
 

 日米安保体制の抑圧的性格は、多国籍企業のための世界支配秩序の確保という「周辺」方向を向いたその目的において鮮明である。2月16日の米英軍のイラク空爆は、「明日」の米日軍による朝鮮空爆でもあるのだ。
 そして日米安保体制の抑圧的性格は、わが国の労働者人民に対しても顕現するということである。えひめ丸撃沈事件と米国政府をかばう日本政府の態度がまさにそれであった。
 米原潜によるえひめ丸撃沈糾弾! 行方不明者の捜索・収容を貫徹せよ! 真相を糾明し、責任者を処罰せよ! 米艦船・原潜の民間港入港を一切拒否しよう! 日米安保体制の共同戦争体制への再編・強化を許すな! 有事立法・憲法改悪阻止! 日米安保条約を破棄し、沖縄・日本から米軍基地を撤去せよ!