函館、苫小牧、小樽へ米艦が二月連続寄港

 自治体は平和行政行使せよ


北海道が狙い撃ちされている。それも周辺事態法の実効性を確実なものにし、軍事的覇権による世界戦略で全てを我が物にしようとする米帝国主義によってである。
新年早々から矢つぎばやに室蘭、苫小牧、小樽という商業港を旨とする港町に、米海軍第七艦隊に所属する護衛艦などの乗組員の「休養、親善」を名目とした寄港要求が突き付けられた。当初、二月二日に室蘭港へ強襲揚陸艦「エセックス」と明らかにされたが、その後理由不明のまま中止となり、予定になかった函館港へフリゲート艦「ゲーリー」が二月三日に寄港するという。函館のあとは二月七日苫小牧港へ旗艦「ブルーリッジ」が。そして、仕上げが昨年空母キティ・ホークが寄港し物議をかもしだした小樽港へ二月十九日、ミサイル巡洋艦「ジョン・マッケイン」である。
まさしく、ここぞと言わんばかりの軍事戦略行動として見ておかねばならない。
なぜならば、昨年十月小樽港への空母キティ・ホーク寄港では、その三年前の空母インディペンデンスへの「熱烈歓迎」が語りぐさになるほど低調な「歓待」ぶりとなり、地元一部経済界が期待した「街活性化」は露ほどもなく、よって「期待はずれ」とのコメントを出さざるを得ない実態があったことが一つである。これは、恒常的に「歓迎」を求める米軍にとって無視できない事態であり、発言でもあったからだ。
また、小樽市当局の対応がいまいち消極的だったことも一つの要因である。たとえば、市民の艦船参観を要請した米軍に対して時間規制を進め、米軍の期待を裏切ったこと。また、山田市長が随伴艦ビンセンスの入港を認めなかったばかりでなく、入港当日に公務を理由に式典参加を辞退した事実などが大きく尾を引いていることは確かである。
つまり今回の連続した寄港は、先の入港で十分成果を上げることが出来なかったことを挽回し、同時に連続した寄港を通じて慢性的な軍港スタイルを確固とし、市民に慣れ親しみを作り出し、艦船へのアレルギーを消していくことが米軍の主要な狙いであり、まさしく日常の中で軍事戦略が遂行されていくことを今回の入港の目的としていることは明らかである。
小樽どころか、ひと月の間に三港に入港するなどということは、昨年十月の小樽、函館、八戸などへの同時入港を実践したことと連動する作戦行動でもあるだろう。つまり、行動の一環として反戦平和の市民運動や各自治体の対応を探っているのであり、それらと一対を成すものとして見ておく必要を感じる。

 苫小牧市は実質拒否

さて、この動きに敏感に対応したのが苫小牧市である。一月十日には鳥越市長みずから「港湾業務に支障がある」を理由として、実質的に「拒否」する立場を鮮明にしたことである。外務省へも「核搭載の有無」を照会する文書を郵送するなど、市民の利益を第一義とした責任ある自治体の行動を取っている。小樽市はいまだ対応を明確にしていないが、昨年の経過を踏まえれば、小樽港の軍港化を許さず断固とした拒否の姿勢を貫くべきである。今回は変更となったが室蘭市は、昨年のブルーリッチ寄港と同じく認める方針となって

いたようである。昨年、給油艦ラパハノック寄港を認めた函館市では、非核・平和函館市民条例を実現する会などが井上市長に入港「拒否」を厳しく要請しているところだ。ともかく苫小牧市に代表される動きは、日本政府のみならず米軍にとっては晴天の霹靂に等しいショッキングな対応ではないだろうか。
ここで言えることは、地方自治体の港湾管轄権限を規定する「港湾管理法」によって、米軍の動きを封じることが出来ることを証明している事実である。その意味では、平和行政を進める自治体の判断一つが戦争行動を阻止し、周辺事態法を空文化させるに等しいことである。まさしく地方からの平和の旗印を作り出し、その先頭に立てることを明確にしたものであり、全国的におおいに勇気と示唆を与えていることは明らかである。

 勢いある道民の反対運動

労働団体、市民団体もきわめて素早い反応と行動を起こしている。いち早く北海道連合は声明で「冷戦なきあとの緊張を増幅する行動は遺憾」として反対を明らかにすると共に、加盟各単産・単組に抗議の電話・FAXの集中を指示している。全労連系労働団体も同様の行動を起こしている。北海道平和フォーラムも反対の立場を明らかにすると同時に、米国、日本政府への抗議と当該自治体への要請行動を提起している。市民運動団体も、関係する各市の市民が連携した反対行動を起こしつつある。
米軍の強引な行動は逆に反対の行動に火を付け、その輪を大きく広げる要因ともなっている。第七艦隊の連続寄港と同時に、二月二十日から日米合同冬季実働演習が北海道大演習場、矢臼別演習場の二ヶ所で実施されるという。これらの演習は沖縄海兵隊の矢臼別での実弾砲撃演習とは別に、米軍が北海道を軍事拠点に見立てて行なわれるものであり、決して許されるものではない。
真冬の北海道、その熱意は厳寒の氷をも溶かす勢いとなって動きだしている。
(北海道M通信員・記一月二六日)