次期防

 対外戦争に備える軍拡五ヵ年計画

 対日不信を増幅


十二月十五日に、二〇〇一年度から五年間の「中期防衛力整備計画」が閣議決定された。この二回目の軍備増強五ヵ年計画はその軍事費では、当初総額二五兆一六〇〇億円とされており、現五ヵ年計画での実績額二四兆二三〇〇億円を上回るものとなっている。
米ソ二大軍事ブロックが対峙し中曽根が「日本列島浮沈空母化」を叫んでいた時代がとっくに終わり、東アジア情勢が昨年六月の朝鮮半島南北共同宣言によって大きく緊張緩和へ向かっている時に、なぜ冷戦時代のままの軍拡計画を(伸び率こそは下がったが)続けるのか、自衛隊や安保条約を基本的に支持する人であっても、疑問を感じざるを得ないものである。また歴代政府が国民の郵便貯金などを軍事費を含めてくだらないことに使い込んで、空前の国家借金を抱えているにもかかわらず、なぜ毎年の予算を五兆円も先取りしてしまうことが防衛庁には許されるのか、体制側の人たちからも根本的に異議が出されても当然なのである。
本来、日本政府がやるべきことは、北朝鮮や中国などアジア諸国政府・人民に対し、それとわかる明白な自衛隊の軍縮計画を発表し、安保体制はあるにせよ、いかなる名目においても日本軍自身が対外戦争に乗り出すようなことは全く考えていませんということをアピールすることである。日本帝国主義を打倒し米帝を一掃しなければ、何もできないというわけではない。アジア諸国の日本への不信を小さくし、相互信頼・相互軍縮を促す外交的選択肢を取ることも可能なのである。
しかし、日本政府のやっていることは、あらゆる面で正反対である。周辺事態法などで自衛隊の対外進出を徐々にひろげ、自衛隊を日本軍として憲法に明記するための憲法改悪を行なって「戦争のできる国家」を完成させようとしている。
次期防ではとくに、これまでの軍艦の倍以上のトン数で、一万三五〇〇トンの軽空母的な軍艦(ヘリコプター搭載護衛艦の大型化とされているが、飛行甲板をもっている)を二隻建造すること、また公明党が賛成して、空中給油機がおそらく二〇〇二年度から調達されること等が決定された。
これらの新装備は、PKO派遣のためとする大型輸送機調達を別とすれば、日本の自衛のための装備と称され色々「説明」も行なわれているのだが、先の日共の党大会のように「急迫不正の主権侵害が起こったら…」と発想する頭の人には、そういう説明も通りやすいのだろうか。
今日、日本に関わって現実にありうる戦争は、日本領域がいきなり攻撃されるような事態ではなく、アメリカが戦略的に重視する地域において、アメリカとその同盟国が一定の秩序を押しつけるための介入戦争である。グローバル資本主義への統合が外交的・経済的に達成されない場合、戦争形態によって達成しようとする戦争である。次期防の新装備が、「周辺事態に際しての相互協力計画」すなわち、日本領域外での日米共同作戦に投入するためのものであることは明らかである。

アジア諸国に、日本軍による「急迫不正の主権侵害」の懸念を高めるだけの、次期防を撤回せよ。(W)